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物語【三竦み編】
君ノ心ヲ占メルノハ。


殆ど一瞬で終わった時雨との対峙。
命尽き掛けの男が思う。

相打ちを、悪くないと。


そして頭を過るのは、月明かりが酷く胸を刺した、あの夜の事…


―泣かなかったな…
泣くと、思ったのに―…

あぁ、でも今回は泣くのだろう。
俺が逝ったと知れば。

儚く臆病で意固地な…俺の狐。
何処か逞しい奴だから、霊界にまで来て嫌味の一つでも言うかも知れない。

…翠の瞳から涙を零しながら…


薄く笑って、飛影は身体の力を抜いた。

胸元から微かな薔薇の香りが舞った―…



闘いを見守った女が一人、カプセルの中の飛影を見詰める。
愛おしそうに、闇が在る飛影の過去に心地良さを感じて寄り添いながら。

飛影の過去を読み取っていく…

紆余曲折を経て人間界へ…思わぬ出逢い
妙な人間との闘い
また少しお前は変わる
闘う事だけがお前に残り、とうとうお前は如何に死ぬかを考え…

―いや…違う…?

女は気付いた。
飛影の心を占めているもの…その存在―…


「…妖狐…蔵馬…か―…」


同じ闇を持ち、分かり合えると…寄り添い合えると…
そう初めて思えた存在が、既に大切なモノを心に飼っていた事に―…


「…飛影…何だ、お前のその肩の歯形は。」


笑いながら、女は言った。
少し淋しそうではあったけれど。


飛影の氷泪石の紐に不自然に結ばれている布切れが、カプセルの中でゆらゆら揺れる。

見る者から見たら。
存在を主張している様にさえ見える動きだった。



(END)



★あとがき★
初登場、躯姉さん!そして蔵馬は出て来ず。。。
飛蔵人間ならば切ないこの原作シーン。
ウチではこうなりました…
言い訳は日記にて(汗)
お読み下さって有難うございました^^

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