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物語【魔界の扉編】
affirmation work Y


飛影の暖かい腕に纏われて、木々の間を移動する。
合間から差し込む、顔を出したばかりの太陽の光に、愛しい人が美しく照らされる。

その愛しい人に抱えられ、腕の中に守られて居る事は、この上無い幸福だと―…


守る―…?


「…飛影…?」

「何だ…?」

「守ると…そう言ってくれましたか…?」


ふと思い出したのだ。
意識を手放す前に微かに聞こえた声を。
まるで今、ハッキリと云われたかの様に。


「何だ、聞こえていたのか。」

別に照れる訳でもなく、さらりと飛影は言った。


「…オレ、守られてばかり居る程、弱くないですよ…」

「分かり切った答えを吐くな。」


可笑しそうに、でも少し困った様に、飛影は笑いながら顎を使ってオレの頭を小突いた。

その表情があまり見られなかったモノだから、嬉しさと愛しさで飛影を見詰めた。
光に照らされた綺麗な横顔を―…


―あぁ…生きていて…良かった―…


常に、死の覚悟は持ち合わせている。
暗黒武術会で多くの妖怪の前で妖狐の姿を曝した時点で、その覚悟は以前より大きいものとなった。
オレを恨んでいる者が少ない訳じゃ無い。
オレを殺る事で、名を上げられると思う者も多い筈だ。
あの大会で、妖狐程の妖力が無い事を明らかにした様なものだから、オレの首を狩るには、好機―…

だから、死の覚悟は何時だって手放さない。

仙水等との闘いでも然り…
飛影に伝えた、“もう死んでもいい”という思いも真実。

けれど。

生きていて…良かった―…

貴方の熱を再び感じる事が出来たのだから―…


「…また泣くか。」

「…はは…」


我慢する気に、ならなかった。
素直に、笑った…


「…死んでもいいと…二度と言うなよ。」

真剣な飛影の瞳がオレを射抜く。


「生きるよ…必ず。」

貴方と共に、生きてゆきたいから―…


オレをじっと見て、飛影がまた少し微笑んだ気がした―…

今日は本当に、色んな表情を見せてくれる…

嬉しくて、愛しくて、飛影に掴まる腕に力を込めた。
それに応えてくれる様に、流れていた涙を塞き止める様に、目元に微かな口付けをくれた。


「…危ないですよ。前を見てきちんと運転して下さい。木にぶつかりますよ…」

照れを隠すべく、つい素直ではない台詞が口を付く。


「誰がそんなヘマをするか…。全く素直になったと思えば、直ぐに捻くれ狐に戻る…。」

「はは…。いじけ狐に捻くれ狐…ホント酷い言われ様だな、オレ。」

「感謝しろ。他に誰が言う…」


本当…唯一無二です、貴方は―…

オレを唯一翻弄する人…
こんなオレを“守る”と何の躊躇いも無く言う…

愛しい…唯一無二の貴方―…

本当に失いたくない。
永久に共に居られたらと、切に願ってしまう―…


「スピード上げるからな、しっかり掴まっておけ…」

「はい。」


貴方の台詞に託つけて、貴方への想いが溢れ出しそうになるのを貴方にしがみついて誤魔化した。


心地良い貴方のスピードを全身で感じる。
枝と枝を渡っているのに、殆ど身体に振動が伝わらない。

只風だけが、オレの髪を掠う。


もう直ぐ師範の山を抜け、街へ出る。


まだ…まだ…離れたくない―…

この想いを読み取って欲しい気持ちに駆られて、貴方の横顔を見詰め続けた―…





(Zへ続く…)


*挿絵について*
飛蔵素敵イラストサイト『FOXy』の乃亜様より戴きました^^
超〜〜〜〜素敵過ぎて鼻血モノのお作品です☆
駄作過ぎるあたしの物語がグッと、それはグッと輝きました!!
乃亜様、本当に本当に有難うございました!!!

★あとがき★
お疲れ様です^^
移動中の一コマです。
姫抱きされている蔵馬ですが、蔵馬だからこそ、可愛い感じというよりは、綺麗というか格好いいというか…なイメージでおります。
ホント、何気ない場面ですが、色々噛み締めてます、蔵馬さん。
飛影さんは生き残った事も蔵馬を想い守る事も、何処か当たり前と自分自身受け止めているので、蔵馬程、揺れてはいないかもしれないですね。
まだ続きます(汗)
お読み下さって有難うございました^^

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あきゅろす。
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