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物語【魔界の扉編】
affirmation work [


「…有難う…家まで運んでくれて。」


飛影に身体ごと頭も仕舞い込まれた状態で、未だ言えてなかった感謝の気持ちを伝える。
飛影の腕の中で、声が少し反響した気がした。

応える様に、飛影の頭がオレの頭を小突く様に動いた。


「…それから……生きていてくれて、有難う―…」


貴方の温もりが、本当に嬉しいから。


「…それは幽助に礼を言え。」


折角素直になったオレに反して、飛影は捻くれた事を言う。


「確かにオレ達が生き残れたのは幽助が魔族だったからだけど…そうじゃなくて…」

飛影の腰に絡めた腕に力を入れた。

「貴方が確かに生きていて、こうして共に居られる事が本当に嬉しいんです…」

「…フン。直ぐに超えてやる。」


オレの言葉には相応しくない台詞が返って来たけれど。
飛影の優しい声のトーンは、オレの言葉がきちんと伝わった事を教えてくれた。

貴方は直ぐに幽助に並ぶよ。
そしてきっといつか、幽助をも超えてゆく…

新しい目的を見付け、理想を掲げ、どんどん強く大きい存在に成ってゆくだろう…


オレは…いつまで―…


善からぬ方向に思考が傾きかけて、自制した。
今は、飛影に身を預けて居たい。


「おやすみなさい、飛影…」

「あぁ。」


飛影の身体に、腕に、香りに纏われて、目を閉じた。


けれど。
気付いてしまった。

こうやって、飛影に“おやすみなさい”と言う事も、眠りを目的に二人寄り添う事も初めてだという事に。
オレが意識を飛ばしてしまうか、その後の微睡みの中か…という状況しか無かったから。

そう思うと、嬉しさと気恥ずかしさが込み上げて来る。


「…おい。心拍数が上がったが、何を考えている?」

突然の飛影の問い掛けに驚いた。

「ちょっ…人の心拍数なんて聞かないで下さいよ!」

「悪いか、俺は耳が良いんでな。」

「…飛影こそ、犬みたい…」


揚げ足を取る様にからかった所為か、飛影の身体がピクッと反応した。


「…犬と言うなら、欲のままにお前を喰…」

「お…おやすみなさい!!」


飛影の言う事が解ってしまって、翻弄される前に遮った。
飛影の身体の力の入り方で、笑いを堪えているのが手に取る様に解る。

けれど、同時にオレの髪を撫でてくれている感触があって…

心地良さに身を任せて、身体の力を抜いた。
疲れているもの手伝って、それ程待たずとも眠気が襲う。


目が覚めた時に、彼は隣に居るだろうか…
居てくれたら、この上無く、幸福だろう―…


ねぇ、飛影―…?
オレはね、どうしても、切に願ってしまう。


永久に、貴方と共に在れたらと―…


妖狐が存在も認められぬ儚い存在の神に、心からの祈りを捧げた―…
知られたらきっと、隣の愛しい存在に滑稽だと笑われる事も知りながら―…



(END)




★あとがき★
affirmation work、ENDです☆
如何でしたでしょうか…?
こんな二人の時間が増えれば、きっと蔵馬は心から落ち着けるんでしょうね。
特にオチも無いお話でしたが、お読み下さって有難うございました^^

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あきゅろす。
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