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戴きもの
缶ビール *柊きよら様より*


朝顔の覆いを解かせて中に入ると、ラグの上で蔵馬が伸びていた。 

部屋の中では扇風機が回り、床に散らばった髪がさらさらと踊っている。 
タンクトップにハーフパンツ姿ですらりとした手足を投げ出し、ラグの上に仰向けにくたりと横たわったまま、いつもならば嬉しげに向けられる迎えの言葉も瞳も寄越して来ない。 

妖気の状態は全く正常で、眠っているワケでも弱っているワケでもないのだから、やはり「伸びて」いるのだろう。
いつもは比較的きちんとしているこいつにしては珍しい。 


「何をしている?」 
「……見て分かりません? 寝転んでるんです、暑いから…。」 

言葉を返すのも面倒だとでも言いたげに、不機嫌そうな翡翠の瞳が向けられる。 
その気怠げな様にもそそられるが、今はもう少しこの珍しい様を楽しみたい好奇心が先に立つ。 

「確かに、外は相当暑かったがな。この部屋に居て暑がるとは贅沢なことだ。」 
「…だって、暑いものは暑いんだもの。」 
「クーラーでも入れたらどうだ?」 
「…嫌いだって、知ってるでしょう?」 
「だったら我慢するんだな。」 
「…う〜〜///」 

嫌そうに眉を顰める可愛い狐を見詰めながら、喉の奥で笑いつつ、その隣へと座り込む。 
それでも身動ぎひとつしない蔵馬をそろそろ起こそうと、更に声を掛けた。 

「おい、何か冷たいモノでも無いのか?」 

…美麗な翡翠が拗ねたように向けられる…。 


「…冷蔵庫、そこにあるでしょう?」 


……この馬鹿狐。 


思わず丸くなった目をすっと細めると、無言で立ち上がり、部屋の隅に置かれた小型の冷蔵庫へと向う。 
中から冷えた缶ビールを取り出し、部屋の中央に向かうと、蔵馬の横を素通りして、少し離れた気に入りのソファにどかりと腰を下ろす。 
そうしてプルタブを軽快に開けると、冷たいビールをごくごくと喉に流し込んだ。 

半分ほど一息に飲んで息を付き、口元の泡を軽く拭う。 
そこで初めて気が付いたという顔をして、可愛い視線に目を合わせてやる。 

蔵馬は相変わらず床に寝転んだまま、大きな瞳を丸くして、驚いたように俺を見ていた。 
それをじっと見据えたまま、こくりとまた一口飲む。 


「…ねぇ、何してるの?」 
「見て分からないか? ビールを飲んでるんだが。」 

…美麗な翡翠の、困ったように揺れる様が可愛らしい。 

「……こっちに…来ないの…?」 
「暑そうだからな、おまえは。」 
「………っ///」 

笑いを堪えて目を逸らし、何事も無いかの様に再び缶ビールに口を付けると、もぞもぞと起き上がった蔵馬が俺の傍へと這って来た。 
そして俺の足元にぺたんと座ると、いつもよりも少し熱い頬と手を、膝の上にそっと乗せてくる。 

「暑いんじゃなかったのか? 俺はおまえよりも体温が高いぞ。」 
「…暑いから…もっと熱い思いをすれば、…少しは涼しく感じるかも…でしょう?」 
「…ほう?」 


恥ずかしそうに逃げていた可愛い瞳を捕らえるべく、朱の増す頬に手を添える。 
そうして…。 
そっと向けられた潤んで揺れる愛らしくも美しい翡翠に、捕らえた筈が囚われる…。 



厳重な結界と植物どもに守られ、快適で安全な部屋の中…。 

愛しい狐を腕の中へと引き上げて、全てを差し出したのは、俺の方かも知れなかった。 




(おわり) 
2010/07/26 


【管理人より】
柊きよら様〜、素敵なバースデープレゼント有難うございました^^
そう、実は今日が管理人の誕生日...(汗)
歳は取りたくないのだけれど、こんな素敵なプレゼントを頂けるなんて、あたしは幸せ者です。。。泣
ウチの二人が好きなビール、そして管理人自身大好きなビール(きよら様のお宅のお二人も好きな様です♪)、絡ませて下さって嬉しいです!!
少し酔っ払いながらも(おいおい)、どうしても頂いたこの日にUPしたくて( ´ ▽ ` )ノ
素敵なお作品ですので、皆様にも早く読んで頂きたくて...☆
少し意地を張って見せる可愛い蔵馬さんと、そんな蔵馬さんの珍しい態度を楽しみつつも、包み込んでしまう優しくて格好良い飛影さんです(*^□^*)
惚れます...
きよら様、本当に本当に有難うございました^^

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