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お遊び部屋
be jealous【後編】


「……みっともない…」


これは蔵馬の台詞だった。

“ごめん…”
呟く様な小さな声で蔵馬は続けた。

蔵馬を追って、けれど姿を見せずに木の上に立つ飛影に、その声は届けられた。
飛影は黙って蔵馬の後ろ姿を見下ろす。


「…紛れも無い、嫉妬だね。」


明るい声を出して振り返った蔵馬は、木の上の飛影を見上げた。


「馬鹿だな。」


予想通りの飛影の返答に、蔵馬は小さく笑う。


「…馬鹿だね。…けれど…」


蔵馬は木の上の飛影から、目線を外す。
言いにくい事を続ける蔵馬の癖を、飛影は見抜いている。


「…オレは男だから。」


魔界では、性別等意味を持たない。
けれど、蔵馬が身を置く人間界は違う。


「それに。」


目線を外しても尚上向いていた蔵馬の顔が俯き掛ける。


「オレは…貴方に守って貰わなければ生きていけない程繊弱では無いし…」


飛影は黙ったまま蔵馬の言葉を聞いていた。
蔵馬は言葉を続ける為に、けれど覚悟が要る様に、息を吐く。


「貴方が憧れる様な強さを…躯の様に持ってはいないから…」


俯いていた顔を上げて、笑顔を貼付けた蔵馬がハッキリと飛影に向って言った。


「中途半端なんですよ、オレは…何もかもが。」


中途半端。
蔵馬は自分自身の存在そのものが、そうだと言ってのけた。

妖怪から人間へ。
今は妖力も増え、度々妖狐の姿に戻る。

こんな、中途半端な形は無いと、蔵馬は思う。


「オレの理想が、躯に似ていたのかも知れない。」


其処まで言って、蔵馬は木の下に在るベンチに腰を下ろした。
足を組んで、深く腰を背凭れに預けて。
真っ直ぐ、前を見詰めていた。

飛影はそんな蔵馬の横顔を見詰めながら、木の上から飛び降りた。
その事に、蔵馬は反応を示さない。

何かを受け入れる様な面持ちで、前だけを瞬きもせずに見詰める。


「下らん。」


これも、蔵馬の予想通りの言葉。
それはそうだ。
蔵馬自身もその様に思っているのだから。

けれど。
そうは思っていても拭えるものでは無い。


「お前は、俺に守られなければ生きてはいけない。だが、したたかで強い。」


飛影は、蔵馬の前にしゃがみ込む。
蔵馬よりも目線を低くして、蔵馬を見上げた。


「そう言う意味では、お前は中途半端だ。」


そう言って。
笑う飛影は、蔵馬の額を指で弾いた。

驚いた蔵馬は、目を丸くする。
飛影はしたり顔で口の端を上げている。


「…オレが…?貴方に守られなければ生きていけない…?」


心外だと、蔵馬は固まったまま。


「何度俺にフォローされて来たと思ってるんだ。」


相変わらず、飛影は薄く笑っている。


「それは…そうだけど…」


納得いかない蔵馬は、飛影との今までの事を思い出し、“貴方だって”と続けようとして、“それに”と言う飛影の声に遮られた。


「不本意だが、俺もお前に助けられた事が無い訳じゃない。お前は強いだろうが。やり合ったら今はどちらが勝つか分からん。」


今は。
そこにアクセントを置いて、飛影は心底面白そうに言ってのける。
その様子が、明から様に慰める態度では無くて、その事が返って蔵馬を引き上げた。
その事を感じ取って、飛影は畳み込む様に続けた。


「お前の理想だと言う躯にお前が似ていたら、手を組もうとは思えなかっただろうよ。…だから、下らない事を考えるのは止めておけ。」


躯を羨む必要は無い、と。
真っ直ぐに飛影の想いが蔵馬に届けられた。


「…敵いませんね、貴方には。」


今思い出したかの様に、飛影の指によって弾かれた額を擦りながら蔵馬が笑った。

蔵馬は思う。
醜い只の嫉妬を、ここまで言葉一つで抑えてくれる飛影には、本当に敵わないと…


「敵おうと思うお前が馬鹿なだけだ。」


目を細めて睨み付ける蔵馬の瞳には、シニカルに笑う飛影が映る。

蔵馬の心を救うのはいつも飛影で。
素なのか計算なのか…それは不明。
けれど、明から様な慰めをしない飛影の態度は、大きく蔵馬を楽にする。

あぁ、この人の様に成りたいと。
理想は躯では無く、目の前の飛影だったのだと…
気付いた事実は蔵馬に苦笑いを零させた。

蔵馬よりも目線を低くして屈む飛影に、蔵馬は身体ごと顔を近付けていった。

頭の片隅で。
己から仕掛けても、きっと敵わないと気付きながら―…



(END)



●オマケ

管理人(以下:管)
「…な〜るほどぅ。飛影、流石やね…」
(↑PCの前で感心してる只のオバハンです)

飛影(以下:飛)
「…フン。本当に下らん。」

蔵馬(以下:蔵)
「…でも、飛影?いつにも増して優しかったですね。」

飛 「…台本にそう書いてあった…」
(↑まさかのDJタイムな言い方!!!)

管 「台本に書いてない×A!!」

蔵 「それでも…嬉しいです。」
(↑飛影の照れ隠しだと気付いてる模様)

飛 「…フン。」

管 「あらあら♪ラブラブ〜///(死語)」
(キャラ崩れまでして演じた二人、ご苦労であった!!(`_´)ゞ)



★あとがき★
日頃嫉妬を露に出来ない二人に、此処で発散して頂きました。
殆ど躯さんが矛先でしたね。
黄泉さんはそりゃ酷い扱いでした^^;
とにかく下らない内容で申し訳ない…(平謝)
躯にヒトモドキをあげたのは只の餞別、と飛影に言わせたかったのと…
DJタイムの“台本にそう書いてある”の言い方をして欲しかった!
(結局管理人の嗜好;汗)
お付き合い下さった皆様、有難うございました^^

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