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物語【暗黒武術会編】
熱情 〜Hiei's gaze〜

あいつは今日、四度泣いた―……



熱情 〜Hiei's gaze〜



何かが切れた様に流した涙。
放心した様に俺を見て流した涙。
縋り付いて流した涙。


そして―…
眠りに就いたまま流した涙―…


勿論、お前は気付いていないだろう。

涙を流しながら「飛影」と俺の名を口にした事も―…
苦しそうに、哀しげな声で俺を呼んだ。


俺の加減しない妖気を受けて、蔵馬は殆ど気絶する様に眠った。
傷の手当もろくにせず惚けている蔵馬を見て、腹が立った…と同時に傷を消してやりたいと思った。
少し眠らせてやりたい、とも―…

だが、涙を流しながら俺を呼ぶ蔵馬を、起こして抱き締めてやりたい衝動に駆られた。

そして、蔵馬の俺に向ける想いも、何かを抱えてもがいている事も、俺の中で確信に変わった。
あいつを見る度に、俺が抱いた感情も―…



何をそこまで恐れる?
何を抱えている?
大体想像はつくが…
長く生きて頭でっかちにでもなったか。

強いお前が、やはり儚く見える。
冷徹な妖狐というより、臆病な小さい狐だな…。
お前に言ったら、お前は怒るんだろうが。



さらさらと風に揺れて音を立てる木々を見上げて思う。

こいつ等は全て蔵馬に繋がっているのだと。
黒龍を召喚し切る為に傷付けた木々を思い出して、少し悔やむ。
そしてそんな自分に小さな笑いが込み上げた。




おそらく…良からぬ事を考えて、逃げ出そうとするだろうな、あいつは―…
その時はどう引き戻してやろうか。
まぁ、力づくでもやってやるさ。
とことん付き合ってやる―…


只、あまりお前が哀しい涙を流さなければいいと思う。
その時は涙を拭ってやれる距離に俺が居られたらと思う。
それは簡単な話じゃないが―…



花達に囲まれ、涙を流しながら哀しげに眠る蔵馬を、それでもやはり綺麗だったと思い出していた―…




★あとがき★

はい読んで下さって有難うございました
熱情 前編後編どちらも蔵馬目線だったので、飛影に大いに(?)語って頂きました
ちなみにgazeには視線という意味があります。

蔵馬はぐらんぐらんしてましたね(笑)
おそらくこんなに泣き顔を見せたのも、蔵馬を導けたのも、飛影が初めてではないでしょうか。

少しでも、皆様に蔵馬と飛影の想いが伝われば、管理人、幸せでございます

今後の二人、色々ありそうですが、見守ってやって下さい

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