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物語【暗黒武術会編】
からかい
黒龍波を撃った―。
是流の実力は本物だった。
黒龍波で無ければ勝てなかった訳では無い。
只、試したかった。
黒龍をどこまで召喚し操れるのかを―…


「飛影、大丈夫ですか」

蔵馬の声がした。

「…気配を消して近付くな、悪趣味な奴め。」

振り向くと、左頬に十字の傷を付けた蔵馬が立っていた。
カマイタチに付けられた傷だ。
もう傷は塞がりつつあるがー。


蔵馬が近付いて来る。
俺に手を伸ばしながら言った台詞に、元々荒ぶっていた感情が露になった。

「飛影…腕、見せて下さ…」

「…触るな!余計な事を―…!」

「…っ」

蔵馬が少し目を見開き、傷付いた様な表情を見せた。
それは一瞬にして、いつもの冷静な表情に戻ったが。


「あまり無理をしないで下さいね。試合はまだまだあるんですから。左腕だけで勝ち続けられる程…」

「チッ…いちいちうるさい奴だ。いい加減部屋にでも戻るんだな。その目障りな十字傷でも治してろ。」

「…貴方もね…」


長い髪をなびかせながら、蔵馬が俺に背を向ける。


何故あんな顔をした?
先程の一瞬見せた、蔵馬の哀し気な顔が気になった。


「あぁ、飛影…」

蔵馬が振り返り、俺の身体に腕をまわした―…
急な事で、俺は蔵馬の柔らかい髪ごしに、目の前の木々を見ていた―…。
蔵馬の腕に、力が入る。
いつもよりも蔵馬の薔薇の香りが強い気がする。
むせ返りそうな程…でも決して不快では無い…


「飛影でも、他人に大人しく身を預ける事があるんですね。それとも突然で驚きました?」

蔵馬が俺から身体を離して言う。
見下す様な笑顔を浮かべて―

「…貴様、何の為に…っ!」

「からかいですよ♪オレの趣味ですから♪」

「…貴…様…」

「おぉっと、怒らない、怒らない。右腕に響きますよ。オレは貴方に言われた通り、部屋に戻りますね。」


今度こそ、蔵馬は身を翻し、ホテルの方向へ歩き出した。


何を考えてやがる、あの化け狐は。
急に哀し気な顔を見せたと思えば、俺を抱き締める等と―…

ふと、己の傷付いた右腕を見る。
少しだけ、痛みが和らいでいる気がする。
それでも激痛には変わりは無いが…気のせいか?

まぁいい。
とにかく余計な事を考えている暇は無い。
今は黒龍を召喚し切る事―
右腕を生き返らせる事だ―…


森の奥に向かって歩き出す。
俺の動きに合わせて、少し風が動く。


―ドクン

俺に…付いてくるのは…薔薇の…

いつもより強い、むせ返る程の…薔薇の…香り…?
アイツか?
蔵馬があの時―…?

馬鹿な…野郎だ―…


飛影は薔薇の香りを握り締めるかの様に、激痛の伴う右腕に力を込めた―…






★あとがき★
あぁ…中途半端に終わらせる事しか出来なかった…
さて、言い訳開始!
蔵馬はね、飛影の右腕を少しでも何とかしたかったのでしょう。
自分の妖力が減ってもね。
でも飛影も苛立ってたし、そんな蔵馬の気持ちをこの頃の飛影は分からなかったから(黒龍の事で頭がイッパイだったし)、心配される事でさえ、上から見られている様でますます苛立って(妖怪としてプライド高いし)、蔵馬を拒否したんですよね。
蔵馬としては、何処かでそうなる事は分かっていたけれど、哀しかった訳です。
で、頭のいい彼は、からかいに見せかける事で、少しだけ自分の癒しの力を飛影に与えたんです。
あぁ、それをうまく表現出来ないあたしって一体…(凹)

駄文ですが、最後まで読んで下さって有難うございました!!



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あきゅろす。
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