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BirthDay 3
「はぁ〜…食った食った♪」

ケーキを半分程平らげて、ロイドはソファで満足げに伸びをした。こっそりケーキのホール食いに憧れていたのはクラトスには内緒だ。差し出されたコーヒーに口を着けながら、そういえばと、クラトスに今日の予定を聞いてみる。
返ってきたのは特には、と別段用があるようなことはないという内容。

「じゃあさ、母さんの墓参りに行こうぜ!」

クラトスの返事も待たずにロイドはいそいそと準備に取り掛かる。少し遠回りして花を摘んでいこうとかそろそろ掃除もしたほうがいいかなとか…
上機嫌のロイドはクラトスの表情が少し曇ったのに気が付かなかった。






二人はノイシュに乗って花を摘み、アンナの墓の前へやってきた。ダイクは数日前から遠方の仕事に出ているので辺りは静かだ。

「母さん、オレ18になったんだって」

あ、でも母さんは知ってるよな、と言いながらロイドは花を置いた。

「何か変な感じだけど…でも、誕生日が2つになってお得だよなっ」

本日2回目のめまいを感じたクラトスだった。

「それに、オレにはどっちも大事な日だしな」

なっ!と笑顔でロイドはクラトスを振り返る。
クラトスか微笑んで頷くとロイドはさらに顔を綻ばせて最近の事を母親に報告し始めた。もちろん今朝のケーキの事も忘れない。
そんなロイドの姿をどこかぼんやりとした様子でクラトスは見つめていた。



――私がこの星を離れると言ったら…この子は泣くのだろうな…――



その思いすらどこか遠く、他人事のようにクラトスは感じた。
突然ロイドは「あっ」と声を出した。見ると花が少ししおれている。

「水、汲んでくるな」

そう言うと家の前を流れる川へと駆け出して行った。
その姿を見送り、クラトスはゆっくりと妻の墓前に立つ。
この幸せな時間に身を委ねていたいと思えば思う程、自分が犯した罪とその責任が黒い影となってのしかかる。

(こうして、あの子と過ごせただけでも私には充分過ぎる幸せだ…)

だから……

「ここに来るのはこれで最後やもしれん…許してくれ…アンナ…」

慈しむように、クラトスは妻の墓に口付けを落とした。よほど深い思考に捕らわれていたのか、ロイドが呼び掛けるまで彼が戻って来ていた事に気が付かなかった。



 


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