Dear.→ クラトスは宿泊の為、宿の台帳に名前を記入していた。 それを見ていた女将が、おや、と声を漏らす。 「お客さんがクラトス・アウリオンさんかい?」 「そうだが」 クラトスが怪訝に思っていると、女将は棚から1通の手紙を取り出しクラトスに渡した。 「ちょうどよかったね、昨日届いたんだよ」 クラトスは受け取った手紙の差出人を見て、あぁ、と息を漏らした。その目は優しく温かい。 礼を言って部屋の鍵を受け取り、早足であてがわれた部屋へと向かう。 早く手紙の内容が読みたかった。 部屋に入ると荷物を置き、窓を開ける。 そしてベッドに腰掛けると、クラトスは丁寧に手紙の封を切った。 Dear.クラトス オレ今アスカードでこれ書いてるんだ。 作日はハンバーグの入ったグラタン食べたんだぜ。うまかったー! でもやっぱりクラトスが作ったハンバーグのがうまいよ。 また作ってくれよな! 先生がまたイセキに走って行っちまったからしばらく動けねーかも… 次はルインに立ち寄る予定。 じゃあまたな! From.ロイド クラトスはたった1枚の手紙を何度も何度も、時間をかけて読み返す。少し乱れた字も、間違いすらも、全てが愛おしいと言うように。 そして、荷物袋から小さな木箱を取り出す。中には今までロイドから送られてきた手紙が詰まっていた。 今日受け取った手紙も丁寧にその箱へと仕舞う。 それからクラトスは返事を出すべく、自前の便箋と封筒を出し、ペンを滑らせた。 ←From. |