ちびろい4 (…軽、い?) あったはずの重みと温もりが無くなり、クラトスは目を覚ました。 起きたのか?と視線をさまよわすが息子の姿はどこにもない。 クラトスは血の気が引くのを自覚した。 失いたくない温もり。 二度と味わいたくない喪失感。 クラトスは飛び起きると息子の名前を大声で叫んだ。 「ロイド?ロイドっ!」 「うわっ!」 「っ?!」 声のした方を向くと、クラトスの声に驚いたロイドがひっくり返っていた。 クラトスは慌てて駆け寄り、思い切りロイドを抱きしめる。 「クラ、トス…?」 「ロイド…ロイド…!」 よかったと、クラトスは抱きしめる腕に力を込めた。 そこでようやくロイドは行き過ぎたイタズラだったと気付いた。 何て軽率だったのだろう。一度失っている恐怖。決して浅くない傷なのに。それをえぐってしまった。 「っ…ごめ、なさ…ごめんなさぃぃっ…」 思い切り抱きしめ返して、ロイドは涙を流しながら何度も謝る。 もうしないから、傷つけてごめんなさい、側を離れたりしないから。 気持ちが落ち着いたクラトスはそっとロイドの涙を舐めとり、目元にキスをした。 「もう泣きやみなさい」 少し驚いただけだからと、ロイドを優しくあやす。それでもロイドの罪悪感は大きく、しょぼんとうなだれたままだ。 クラトスは苦笑しながら、仕方ない、とロイドを肩車して森の中を散策し始めた。後ろからノイシュも尻尾を振ってついて行く。 キラキラと木と木の間から差し込む光が綺麗だ。さぁっと流れる風に乗ってどこからともなく花弁が舞い散る。 あっ!と言うロイドの声にクラトスは足を止めた。 「取った!」 少し背伸びをして小さな手が捕まえたのは小さな花。萼ごと風に落とされたらしいソレは花びらが1枚も欠ける事なく、ロイドの手のひらにちょこんと乗っていた。 「あぁ、綺麗だな」 帰ったら押し花にしようか。 ふわりと微笑むクラトスに、ロイドは「うんっ!」と頷いた。 ようやく浮上してきたらしいロイドに、クラトスは安堵する。 そこでおもむろにロイドは天を仰いだ。 「ロイド?」 と声を掛けると、満面の笑みでロイドはクラトスの顔を覗き込む。 「あのさ、オレ…星見たい!」 そういえば昔一緒に星を見た事を覚えていて、星の事は勉強したのだと言っていたのをクラトスは思い出した。 「星か…いいな…」 クラトスがそう答えるとロイドは嬉しそうに頭に擦り付いた。 夕飯を済ませ、 温かいミルクもコーヒーも用意し、もこもこの毛布も準備万端! クラトスはロイドを抱きかかえて軽々と屋根の上へと降り立った。 一つの毛布に二人は仲良く一緒にくるまった。 「あったかあい…すっげー!」 ロイドはあまりの数の星に少々興奮したようだった。キラキラと瞳をかがやかせて色々な星座の話しをし始める。 この星座はとーさんと、あっちはかあさんが見つけた。まさか覚えていないと思った事に、クラトスは思考が停止した。 「何となくだけど、おぼえてんだぜ」 すげーだろ?とロイドはクラトスに小首を傾げて見上げる。 小さくなったおかげでその仕草は殺人級の威力だ。 クラトスは邪な思考をなけなしの理性でなんとか中断させ、そうだなと、ロイドの頭を撫でた。 その時―――― 「あっ!」 流れ星!とロイドは指を差した。 「何か願えたか?」 「あ…忘れてた…」 くっそー!とロイドはムキになって空を睨む。眼力で星を落とそうというくらいの気迫だ。 クラトスは苦笑しながらも優しくロイドを抱きしめる。 願わくば、許される限り二人の時間を…この幸せをいつまでも… END ← 戻る |