YGO短編
興味の対象 2
子ども達は彼を見つけると一目散に走っていく。
これは助かったと思ってもいいのだろうか。
「「クローーッウ!」」
名前を呼ばれると、彼は少し驚いたように声を上げる。
「お、お前ら!まさか勝手に家から出てきたのか!?」
彼の言葉に皆、心外だと言わんばかりの顔をする。
どうやら少し離れた私の存在にはまだ気づいていないようだった。
「違うよー!ちゃんとマーサに許可もらったし、私達だけじゃないんだから!」
そう言って女の子の一人がほら、と言って私を指した。
クロウと目が合う。
彼に会う前にしていた話のせいで、いつもよりぎこちない反応になってしまった。
「き、奇遇だね、クロウ。」
「ん?ああ、丁度この辺りに目的地があったもんでな。」
いつも通りを装おうと試みるも、横からの子ども達の好奇心が含まれた視線によって、それは崩れた。
「つか、なんか今日のリリー変じゃねーか?調子でも悪いのか?」
そう言って彼(にとって)の何気ない行動に、周りは一瞬にしてわあっと湧き上がった。
私は頭に血が上って、硬直してしまう。
「ちょ…っ、ちょっとクロウッ!顔っ…ちかっ…。」
「あん?なんだよ、お前すげー顔熱いぞ。やっぱ体調悪いんじゃ…。」
「「きゃーっ!」」
女の子の悲鳴で周りの様子にきづいたのか、子ども達の異様なまでの反応に疑問符を浮かべるクロウ。
「なんだよ?お前ら。」
男の子が顔を赤くさせながら、クロウに物申す。
「それはこっちのセリフだっつーの!お、お前ら人前でい、いちゃいちゃし過ぎだろっ!」
別段いかがわしいことをしていたわけではないが、彼が私の体温を自身の額で比べた為に二人の距離は一気に近くなった。
子ども達からすればそれも“いかがわしいこと”に見えても仕方がない。
それらを悟ったのか、ニヤリと笑みを浮かべた。
「この位普通…つか、お前らにも調子悪い時、よくやってるだろ。これで騒ぐとは、お前らまだまだお子…様……。」
言葉が途切れ途切れになっていくクロウの視線は子ども達から、私へと変わっていく。
「……。」
彼らの反応がお子様なら、自分も十分お子様の範疇に入るのだろう。さっきから自分の顔が熱いのは触れなくてもわかるし、自分の足元しか見れていない。
「ぶは…っ。」
沈黙を破ったクロウは、ククク…と笑いを押し殺して言った。
「いやー、やっぱ俺の彼女可愛すぎだろ。」
「「っ!!」」
トドメだ。
間違いなくトドメだ。
「も…っ…勘弁して…っ。」
両手で顔を隠すも、なんの解決にもならない。
クロウがわりぃわりぃ、と私の頭を撫でる。
「あの二人早く結婚すりゃいーのにな。」
「リリー、すごい可愛かった!」
「なんかこっちも嬉しくなっちゃうね。」
子どもたちは二人を残して、ひと足先に家に戻っていった。
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