[携帯モード] [URL送信]

YGO短編
激しく巡る(1)


いつからだろう、こんな風にかわってしまったのは。
いつからだろう、こんなに自分が嫌になったのは。


荒い息づかいを気にする余裕なんか無かった。
外の景色を目に止めることなく門をくぐって玄関で雑に靴を脱ぎ、急いで洗面所に向かう。


「はぁっ…はっ…、…また…やっちゃった…。」


鏡に映った自分を見て愕然とした。リンゴのように赤くなった顔はどこからどうみても異常で、原因の一部でもある心臓は何キロも走ってきたかのような早さだ。
私はもう何を呪えばいいのかわからなかった。
こんな風にすぐに顔に出る体質?それとも好きな人と面と向かって話せない性格?
どちらもかもしれない。兎に角私は好きな人と会うと、ろくなことにならなかった。
さっきだって彼が来るとわかっていれば…皆より一足先に抜けていれば、本人が話しかけてくれたのにそれを遮るように違う人に話しかけてしまうという失態はしなかったはずだ。
こんなことが、かれこれ数回は続いてしまっている。毎度帰った後は後悔の連続だ。
“好き”というものはつくづく厄介だと思う。
それまで普通に楽しく話せていても、恋愛感情に切り替わるだけで人間的にこんなにもややこしくなってしまうなんて。
切り替わるキッカケなんて1ヶ月前に起こった些細なものだった。ただ私には今までの幼なじみというものから、異性というスイッチが入るほどには衝撃的だったのだ。
もう昔みたいに彼と話すことは出来ないのだろうか。
目頭が熱い。
自業自得だとわかっていても、深いため息がでた。





************




「リリーと何かあったのか?」

数分前の妙な光景を目にした遊星たちは、公園の出口を見ながら俺に聞く。
アキはどこか不安そうな視線を俺に向けていた。


「俺が聞きてぇよ。」


そういってクロウは項垂れる。
ここ数週間の間リリーは俺と関わることを拒むように避けている。
ついさっきだって公園に遊星やジャック、アキと一緒にリリーがいたからいい機会だと思って話しかけてみれば、彼女は振りきるようにて遊星に話しかけた。顔を赤くしながら話すリリー。遊星に夢中だなんて、初めて知った。
そもそも彼女がなんで俺を避けるようになったのか、全く心当たりがない。
1ヶ月前までは彼女もいつも通りだったはずなのに、それ以降原因すら分からずに一方的に避けられているのは、納得がいかない。


「ちょっと行ってくる。」


うやむやにしとくのは性に合わねぇ、とクロウはDホイールに乗った。
遊星やジャックは当人の問題だからと深くは追求しなかった。
ずっと不安そうな顔をしていたアキが口を開く。


「クロウ…、あまりリリーを責めないであげて。」


事情を知ってか知らずか言葉を発する彼女は約束して、と圧してくる。
俺はああ、とだけ返してDホイールを走らせた。






[*前へ][次へ#]

12/22ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!