◇Novel
◆とりこ様より相互記念/バクラ夢

バクラかく語りき。


ああ?何で不良に絡まれてる女を助けたのか?そんなことはこっちが聞きたいくらいだっての。

つーかオレ様は悪役なんだから普通は見捨てる寧ろ加わるくらいの勢いがねーと成り立たねえ。

正義のヒーローだなんて今頃流行るかよガキじゃあるめえし、ああ気持ち悪ぃ。

けど今回は不可抗力にせよ気が向いたにせよこのバクラ様としたことがそんなヒーローに成り下がったって訳だ、ったく、思い出すだけで虫唾が走るぜ。


「や、やめてください」

ある晴れたドナドナの仔牛が売られていきそうな昼下がり、たまたま宿主サマの体を借りて近所の公園辺りをぶらぶらしてたとこに、震える女の声が聞こえた。

状況は一目で理解した。
のどかな情景に似つかわしくない馬鹿げた不良共が寄ってたかって女を無理矢理ナンパでもしようとしてたってわけだ。

まあ良くある光景だ、と納得しながらオレ様はその場を去ろうとした。

あくまで去ろうとしたっつーことで実際には去らなかったし去れなかった。

理由?だからそれはこっちが知りたいっての。

ただ、絡まれてる女と目が合って馬鹿馬鹿しい話、気がついたら声が出てたんだよ。


「…おい、やめろよみっともねー」


勿論言いたくて言った訳じゃねえから瞬時に後悔をした、が、所謂ザコ共にはそれを理解する能力が無く敵意をよりにもよってこのオレ様に向けやがった。

…そいつらがどうなったか?言うまでもなく分かんだろ?






愚か者共が消えた後、まだ居たらしい女はおずおずと近づいてきた。

「あ、あの」

「ああ?」

「助けて下さって、ありがとうございました」

「…別に好きで助けたんじゃねえ」

ぺこりと頭を下げられるが嬉しくも何ともなく言ってみれば不機嫌なオレ様は勘違いすんなと突き放した。

「でも、嬉しかったです」

「……、」

なのに女は落ち込むことなくふわりとした笑顔で返してきやがった。

(何だ、コイツ…)

その表情を見て不意にきゅん、って言うか胸がぎゅっと締め付けられたような感覚に襲われてしまって言葉が出なかった。

まさかそんな非科学的なことがあってたまるかよ、一瞬にして惹かれてしまったことを否定し、口からついて出たのは何とも突発的で気の利かない言葉だった気がする。


「…名前、」

「…は、はい?」

「テメェの名前は?」

「あっ…きなこ、です」

何でもう二度と会わないかもしれない女に名前なんて聞いたんだろうか…多少なりとも興味がわいた、それだけだ。

「…ええと、お名前…」

「…バクラだ」

バクラさん、とそいつが繰り返して言いやがるからなんだかこそばゆくなって何だと問い返してみれば、呼んだだけです、とまたあのふわふわした笑顔だ。

それを見て悪い気がしてないんだから、まあつまり、人助けも偶にはありだってことじゃねーの?

で、確かに気になったが、別にもう会うこともないだろうと思ってた訳だ。

「…じゃあな」

未練がましくなる前にそう言って、もうこんなとこに来るなと付け足したが、きなこは困った表情をして首を横に振った。

理由を尋ねてみると何だったか?どうやら公園に住み着いてる捨て猫を世話しているらしく、この女はとことん慈愛に満ちていてそしてとことんオレ様と正反対だった。

無い物ほど欲しくなる、だから尚更…ああ何でもねえっ!


「私、バクラさんに助けてもらったお礼がしたいので、良かったらまたここに来てくれませんか?」

あの日最後に言われた言葉がそれだ、一度きりだと思って次の日に行ってみれば、また存在が気になり始めて…そういう循環の元、結局オレ様は足繁くあの公園に通うことになったって言う。


これは内側での会話を一部抜粋したものだ。

「なー宿主サマ頼むから体貸してくれよ!」

「えー…またあ?あ、もしかしてあの助けた子に恋したの?」

「べ、別にそんなんじゃねー!」

「じゃあいいじゃない。そのまま中に居なよ、もしくはボクが会いに行ってあげる」

「ぐ、すみません少し気になってますちくしょー!」

オレ様は何とか体を借りようと正座をし地べたに向かって頭を深々と下げた。宿主サマとの主従関係が見え隠れするけどよ、体乗っ取ってるって言う設定はどうしたんだろうな、マジで。





このオレ様が土下座だなんてプライドもズタズタでそれなのにそうまでしても会いたくなって、訳分かんねえ。


ようやく借りた体でまた公園まで行く。きなこに会えるって言うはやる気持ちのせいで若干早足なのは、オレ様とあとは宿主サマしか知らない話。


着いた時、既にアイツはダンボールの中にいる捨て猫と戯れていた。しばらくその光景を眺めた後に声をかければ顔をぱっと明るくした。

「よう、きなこ」

「あ、バクラさん!今日も来てくれたんですね!」

「気が向いたからな」

テメェに会いに来たんだよこの鈍感と思いながらもその言葉を飲み込む。こっちから言ってやるかよ。

「そうなんですか!私はバクラさんに会えるのなら何でも嬉しいですよ」

「……な、」

ああ、畜生。
だからって核爆弾落としてくるか普通?

鬱屈とした感情だってなんだってコイツの笑顔を見れば吹き飛ぶんだから不思議なもんだよな、


「きなこがそう言うなら仕方ねえからまた会いに来てやんよ」


分け与えられた時間、


(それは幸せの欠片)

.





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わー>∀)つ★
感激ですよ感激!!
本当に上手すぎですって^^

バクラくんにメロメロですー(^O^)/宿主サマも素敵ですね!

すみませんが機能上1ページに纏めさせていただきました。

これからも宜しくお願いします。
ありがとうございました!

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