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 武器庫には沢山の武器が眠っていた。ガンマンは、雑に積み重ねてある大きな木箱を次々と開けながら、目に付いた銃器の略名を挙げていく。
「AK……。M16……は、ナルカ社製? ……こっちは十一式か。随分レトロなモンが多いな。あんたの弾もカスールだろ」
「分かんのか」
「通路で一発撃ったろ。あの音は独特だからな。そんな物騒な弾、もう殆ど使う奴いねえってのに」
「扱い易い」
「ふうん。ま、それが一番なんだろうけどさ」
 ガンマンは言ったが、実のところ、爪先に当たるホルスターが気になって仕方なかった。古すぎる銃器は苦手なのだ。拳銃にしろライフルにしろ、すぐにジャムるし二個一のような粗悪品も多い。弾一つとっても信用に欠ける。僅かな火薬量の違いで腕か、運が悪ければ上半身ごと吹っ飛ばされる。ガンマン自身がそういったものに対する知識が若干浅いというのもある。ちゃんとロック掛けてんだろうな、と不安になりながら足を縮めた。
 武器庫には、拳銃からライフル、アサルトライフルやショットガンと、数ある中でも比較的扱い易いものが揃っていた。年式も様々で、旧式と現行が一緒くたにして箱詰めされている。今居るのは地下の方だが、地上にもあるというもう一つの武器庫には、おそらく危険性の高いナパームやグレネード系のものが保管してあるのだろうと、鋭い視線で検証しながらガンマンは考える。
 これらは、一度全部分解して安全を確認する必要があった。旧式のものはまだしも、コンピューターの組み込まれたものは手間が掛かる。これ程の量なら、メンテナンスだけで間違いなく一週間は潰れる。
(助手が欲しいな……)
 考えただけでうんざりする。
 ヴァルハラのように、大規模な反政府組織がまともな経路で武器を入手するのは不可能だ。ヴァルハラに特定のスミシー――ガンマンのように武器の製造や改良、修理や加工を全て請け負う武器職人のこと――は居ないと噂で聞いていたが、ここにあるモノの統一性の無さや、決して良いとは言えないクオリティを見ても、やはりその通りだったのだと判る。
 もう良いか、とパンドラが言った。ガンマンは頷く。
「オーケー、大体把握した」
「そうか」
 パンドラの感情の読めない声には、しかし、怒気や疲れの色は無い。広い背中に乗っている内に、段々とガンマンのパンドラへ対する恐れは薄まっていた。
 パンドラが重たい鉄の引き戸を開けると、ピピ、と軽い電子音が鳴った。ガンマンは、パンドラの動作と周辺を細かく観察している。入る時は、外に付いているカードリーダーにICチップの埋め込まれたカードを通すか、カードリーダーに付いたタッチパネルに直接パスワードを打ち込めば自動で開く仕様の戸は、出る時には中から手動で開けなければならないらしい。
 通路はどこも狭い。ヴァルハラの本拠地である此処は、ひっそりとしたアジトというよりは、堂々と地下に掘り進めて作った施設という印象だが、大隊で攻め込まれても応戦出来るような工夫が見て取れる。男二人並ぶのがやっとの狭い通路もその一つなのだろう。ガンマンは、感心しつつ頭の中に見取り図を描く。

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