[携帯モード] [URL送信]

2G

 一気に喋り立てるガンマンを、ボスと男はまさに鳩が豆鉄砲を食ったような顔で見ていた。ガンマン自身そうなるように喋ったつもりではあったが、その顔が思いの外面白くて、ガンマンは笑いを誤魔化す為にまたホットドッグを食べた。
 パンドラは、ただ背もたれに寄りかかって座り、煙草を吸いながら相変わらず愉しげに口角を上げている。
 さてどうする、とガンマンはボスに視線を投げかける。ボスは頬を掻き、天井を見上げ、それから呆れたように苦笑した。
「参った。噂のガンマンは余程計算高いようだ」
 ただ、とボスは続ける。
「俺達に得が無きゃ話にならない。知ってるかもしれないが、パンドラは俺の命令なんかには殆ど従ってくれない奴でな、きっと君との窓口にもならないだろう。そして、俺は君の腕を買っているが、俺の監視下に入らない以上、君を信用することは出来ない。そこで、先ず君の意見を聞きたいんだが」
 丁度ボスが言葉を切ったところでドアがノックされた。ボスもパンドラも何も言わない中、ボスの隣に座る男が「入れ」とドアに向かって言う。
 ドアが開き、ミルク瓶を数本抱えたつなぎ姿の男が入って来た。男は素早く瓶をテーブルの隅――パンドラ側の方へ置いて立ち去る。
 パンドラが渡したミルク瓶の蓋を開け、ガンマンは緩く瞬きしながら背凭れにもたれた。
「価格は相場の七割。量産なら六割。オリジナルは交渉で決める。改良については、技術料と工賃は定額……そうだな、併せて二万で良い。それに材料費を足して請求する。新作は、メニューに載せる前に検閲させる。外からの依頼はパンドラとヴァルハラに任せる。客の情報はいらねえ。いくらでも上乗せして儲けにすりゃあ良い」
「随分と気前が良いな」
「気前どころか、こっちは大損害を黙って飲んでやるって言ってんの。実際、ここに居て見込める収益は今までより格段に少なくなる。とんだ災難だよ」
「それでもパンドラに付くんだろう?」
「まあ、いくら少ないっていったって、利益は確実に出るからね。とりあえず、作業場と射撃場と、あと武器庫はある?」
「射撃場と武器庫は地下にも地上にもある。作業場も……狭いのが一部屋あったよな」
 ボスは隣を見た。男は「地下の離れにある」と答える。ボスは頷いて腕を組む。そして、パンドラに向き合う。
「どうする、パンドラ?」
 パンドラは短くなった煙草を灰皿に押し付け、長い脚をテーブルの上に投げ出して微かに唇をたゆませた。
「いいぜ、俺が飼う」
「雇うの間違いだろ」
 ガンマンはすかさず訂正を入れたが、対してパンドラは小さく笑うだけだった。
 飼われるなんてまっぴらだ。ガンマンは思うが、パンドラにしてみれば飼うも雇うも表現が違うだけでそう大差ないのだろう。
 ボスは機嫌良さそうに頷いた。
「交渉成立のようだな」
「ああ、俺の部屋もある? パンドラに頼んだ方が良い?」
「いや、丁度パンドラの部屋の隣が空いてるからそこで構わないだろう。他には?」
「後は設備に関してだけど、こればっかりは使い慣れたモンが良い。ってことで、一度ホームに戻りたい」
 それは、とボスの隣で剣呑な声があった。ボスも腕を組み、見定めるような目をガンマンに向ける。
「別に、代わりに取ってきてくれてもいいよ。どうせ作業場には必要なものしか置いてねえ。完成品も幾つかあった筈だから、それも全部持って来てくれりゃあ良い」
「なら、そうさせてもらう。また他にも必要なものがあれば言ってくれ」
 

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!