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2G
目的

「まだお前の目的を聞いてない」
「目的?」ガンマンはきょとんとして首を傾げながら、すぐにパンドラの質問が至極当然のものであることに気がついて笑った。
「いや、そんなに真面目な目的なんて無いんだけど」
 薬缶が鳴いた。パンドラはコンロのスイッチを切って二つのカップに湯を注ぎ、スプーンを突っ込んでカップをテーブルに運ぶ。
 ガンマンがコーヒーの香りに誘われて手を伸ばしたところ、「まだ隠すのか」と、溜息混じりの声がその手を止めた。
 綺麗に揃った睫毛が上を向き、鏡のように無感情の瞳がパンドラを映した。初めて出会ったときに見た真っ黒な瞳が、同じように上からガンマンを映している。
 恐ろしい魅力を持った視線に捕らえられたガンマンは、素直に観念する他なかった。
「政府の飼い犬リストから、俺の名前を消したいんだ」
 言った後、驚きもいぶかしみもしないパンドラの様子を見て、白状してもよかったのかと逡巡した。
しかし、パンドラは誰の味方でもない。その内容に興味を持てば、喜んで協力するだろう。ガンマンにもその確信があって、洗いざらい告白することを決意したのだった。
「俺は政府に雇われて、五年間武器を作ってた。護身用のナイフから弾道ミサイルまで、ありとあらゆる武器の開発製造を請け負った」
「ミサイル……」
 パンドラは煙草に火をつけ、吐いた紫煙の中で呟いた。どうやら興味を持ったようだ。ガンマンは頷いてテーブルに頬杖をつく。
「市囲は、主に“防衛”の為の小型弾道ミサイルを三本保有してる。世界で決められた上限一杯だ。ただし、世界政府にはミサイルやその他の保有上限も種類の規定もない」
パンドラが黙って聞いているので、ガンマンは話を続ける。
「それらの市囲内での処分は禁止されてる。そういうのは世界政府の管轄で、一旦市囲から世界政府の軍事施設に持ち込まれるんだ。市囲は保有数に空きを作り、新しいミサイルを補充する。他も同じだ。戦車や、戦闘輸送ヘリや、その他の兵器も全て世界政府が基準を設けて管理してる。世界政府は安全な兵器処分を建前としてタダ同然でこれらを仕入れられるし、バラして最新鋭のものに作り替えたりもしつつ武力保持するわけ。それに引き替え、例えば市囲のミサイル保有上限は三本だけど、そりゃ皆三本持ちたがるに決まってる。これでもし戦争を起こしたとして、同じ兵器を使えば相討ちになる。ってことで、武器開発には常に税金で巨額の資金が投入される。つまり、今の市囲の発展を妨げているのは世界政府に他ならない」


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あきゅろす。
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