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地下の
「市囲政府が提示した来年度予算案で、最下層の設備の衛生管理費が大幅に増額されてる。理由は至って単純で、浄水施設、空調施設、発電施設の一部が、放置された塵等の不衛生に晒されている現状の改善とかなんとかいうものだけど──。この不衛生ってのがどういう意味かは今さら考えるまでもねえ。あんたら全員が、奴らにとって邪魔な塵ってことさ」
 ぴしゃりと吐き捨てた後、ガンマンは五秒ほど間を空けたが、反論は一声も上がらなかった。
「これまで政府が最下層を放置していたのは、偽善的な罪悪感と最下層に集中するインフラ設備のお陰だ。それがなくなったのは、最下層に流れる金の額が増えすぎたことと、一昨年市囲長に就任したゴトー・アルウォークの市囲構想に他の周辺市囲が一斉に賛同したからだ」
「でも、ここが戦場になるなんてことが有り得るのか? 発電所や浄水施設がある限り、政府も無茶な武力行使はできんだろう」
「周辺市囲の協力があれば可能だ。例えば、周辺四つの市囲で一ヶ月二十五億リットルの水と消費電力の不足分を負担すれば、地上にはそれほど影響を出さず最下層を封鎖出来る」
「で、電力も……?」
「発電所は最下層だけにある訳じゃない。最下層の発電所が生み出す電力は、市囲全体の必要電力の約四割。あとの電力は既に地上で賄われるようになってる。それで、仮に最下層の設備の殆どを停止するとしたら、最下層の消費電力は市囲全体の約二割に収まる。これは十分に支援を受けられる現実的な数字だ」
「仮に水と電気に困らなくても、空調はそうはいかないんじゃないか? 空気浄化施設は地下にしかない訳だし、余所の市囲と空気を循環させるなんてことも簡単には出来ない」
「あんた、宇宙船が全部無人だとでも思ってるのか? 空気なんて簡単に作れるんだよ。しかも、天蓋には幾つかのちいさな排気口が設置されていて、汚染された空気の市囲外排出は緊急対応として認められてる。相応の理由があれば、市囲は地下の空調を使わずに市民を生存させられるのさ」


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