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2G
第四区
 ブレイズはヴァルハラを襲撃しようとしたが、出来なかった。ホープスに先を越されたからだ。チョッパーは撤退の命令を下し、一件から手を引いた。
「ブレイズとホープスの結託は崩れた。これを要屋が想定しなかった筈はない。でも、だとすればどうしてわざわざ確執を生ませるような真似を……。奴ら、初めからホープスだけを取り込むつもりだったのか?」
「仲間意識の強いブレイズは手駒には向いていない。逆に暴れたいだけのホープスは孤立すればする程付け込みやすくなる。それに、要屋からすれば四区の最下層を自由に使えるメリットは大きいんじゃないかな」
「要屋が直接最下層に?」
 ミダは怪訝そうに顔をしかめた。
 あの要屋が最下層に──? いや、まるでらしくない。これまで潔癖ともいえる態度で最下層を見下してきた要屋が、よりにもよって最も荒廃している第四区を足掛かりとするなどと。そもそも、要屋の目的とは何だろうか。今更このような回りくどいやり方で地下に干渉する必要があったのか。
「元々、最下層の一新は政府が長らく提案していたことだ。これまで頓挫し続けていた案件を要屋に委託したとすれば分からない話でもない」
「いいや、要屋は最下層の危険性と有用性を理解してる。依頼を遂行するなら、もっとマシな手を選ぶだろう。ところが、やつらの今やってることといえば、まるで巨大な火薬庫に導火線を張り巡らせてるのと同じだ。もし政府がこの現状を正しく認識してるなら、望んでいるのは最下層の一新なんてもんじゃなく市囲の崩壊だってことになるぜ」
「ううむ……。だけど、そうなると益々要屋の目的が分からなくなるね。政府とは無関係、或いは政府さえも利用している可能性があるとして、真っ先にヴァルハラを狙ってきた理由に見当がつかない」
「表で権力を持ってる要屋にとって、パンドラは天敵だ。パンドラがクラッカーとして機能したら、要屋どころか確実にプレジエンターテイメントの方まで引っかき回されるんだからな」
「だからこそ不思議なんだ。あの要屋がわざわざ危険と知っている藪を正面から突っつくだろうか? 本気でパンドラを潰すつもりにしては、あまりに準備不足じゃないか」
「もしかしたら、奴らの目的は‘最下層’そのもの
ではないのかも知れん。何かを炙り出すための布石だとすれば」
「実際に表に出ているのはヴァルハラのメンバーだけじゃない? ボスやアーシーを始めとした数名と、パンドラ、そしてガンマンだ。ただ、ブレイズだってこのまま黙ってはいないだろう。一区と手を組んでホープスを潰しに掛かるかも」
「いいや、奴らは動けない。というのは、一区の奴らが絶対に動かんからだ」
「そういえば彼らは慎重派だったね。動くならいつも通りボスに集会のお誘いが来る筈だ」
「ああ。だがボスは不在だ。要屋の目的が不明な上に集会も開けないとなると、一区はドルフィンを使って情報収集に明け暮れるしかない。ところが、それでも恐らく要屋の目的など見当もつけられんだろうな。あっちは最先端を行くプロだ。パンドラですら奴らを暴くのは難しいかも知れん」

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あきゅろす。
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