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 ガンマンの言った通り、水路に沿う通路には白髪混じりの無精髭をそのままにした陰気な顔で煙草を吹かす小柄な男ーーチョッパーの姿があった。
 チョッパーは激しい水音の中から足音を聞き分けて振り向くと、ぎらついた三白眼でガンマンを見て露骨に眉間の皺を深めた。
「一体何しに来やがった」
「おいおい、おっさん。久し振りの再会だってのに、その挨拶は無えだろ」
「うるせえ、テメエみてえなクズにくれてやる挨拶なんざ持ち合わせてねえ。用がないならとっとと失せろ」
「勿論用があって来たのさ。一昨日の一件、俺は“たまたま”現場に居合わせた。そこで売った覚えのない俺の武器を見掛けたんだが、ありゃあ一体どういうことか聞かせてくれない?」
「知らねえな」
「とぼけんなよ。俺が自分の作品を見間違える筈がねえことくらい分かってんだろ」
「知らねえって言ってんだろ。それとも何か? 俺がテメエの武器を使わせたっていうのか?」
「ブレイズの連中は、あんたが認めた武器しか信用しない」
「なら尚更有り得ねえな。俺はテメエを信用してねえ。テメエの武器なんぞ使わせるか」
「じゃあ、どうして……」
 ガンマンは言い掛けてはっとした。思わずパンドラを見やる。パンドラはガンマンの予感を察し、意地悪な笑みを浮かべた。チョッパーもまた同じだった。
 そして、チョッパーは冷ややかにあざ笑う。
「本当にうちの連中だったのか?」

 

 ガンマンは盛大に舌を打つと、パンドラの背によじ登った。
 チョッパーが嫌味を込めて鼻息を鳴らす。
「今度はそいつか。ほんと、人に取り入るのだけは上手えよなあ」
「あんたこそ、嫌味言の才能だけはあるよ」
「相変わらずクソ生意気なガキだ。おい、兄ちゃん。気をつけな、そいつに食われたら命ごと持ってかれるぜ」
 チョッパーの毒にガンマンは眉をつり上げたが、パンドラは意に介した様子もなく無言で踏み出すと、チョッパーの前を悠々とした足取りで通り過ぎた。
「ちっ、イカレ野郎が」
 水音に混じって吐き捨てられた呟きに弾けたガンマンの笑い声がコンクリートのトンネルに反響した。


 ガンマンは上機嫌だったが、状況は決して良くなってはいなかった。二人は、耳には聞こえない大勢の足音が背後から迫ってくる気配を感じていた。


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あきゅろす。
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