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「ふん、馬鹿馬鹿しくて聞いていられないわ」
 リリーは灰皿の中で煙草を押し潰した。消え残った火種の欠片から細い紫煙が立つ。
「なんでだよ。十分有り得る話だろ」
「じゃあ仮にそうだとして。あんた、もしもあんたがガンマンならわざわざヴァルハラを選ぶの? 商売相手としてならまだしも、うちに単身爆弾を押し付けに来るなんてリスクが高すぎるし、第一どんなメリットがあるって言うのよ?」
「それが分かれば苦労しねえよ。でも、まだ誰もあいつを信用しちゃいねえんだぜ」
「今はまだパンドラの方が危険よ。だけど、パンドラが本気で裏切るつもりなら、最下層のネットワークはとっくに使い物にならなくなってる筈。……ともかく、二人を探しましょう。早くしないと、パンドラが消えたことが他にバレてはまずいわ」
「そうだな。ガンマンは市囲内に幾つも塒を構えてるらしい。もしかしたら五区にもあるかも知れねえ」
「表の一画をしらみ潰しに探すとでも言うの?」
「お前だって五区に目星つけてんだろ。どうやって探すつもりだったんだよ」
「それは……」
 リリーは悔しそうに口ごもった。ドルガフはドアまで歩き、ノブに手を掛けて振り向く。
「ガンマンを捕まえる時にパンドラがヤマを張った区画と経路に的を絞る。ベンゼンに見せりゃあ、もっと範囲を限定できるだろ」
「あら、たまには頭が回るじゃない。それじゃあ任せてもいいかしら? 私は一旦戦況を整理するわ。急いで戻ってきたから、何もかもぐちゃぐちゃなのよ」
「ああ、こっちも直ぐにとはいかねえぜ。まあ、どうせあの足じゃパンドラがいても動き回れねえだろ。順調にいけば明日にはボスが帰ってくる予定だしな」
「ええ、パンドラもあいつに無理はさせないでしょう。寧ろ、その為にちゃっかり私宅なんて用意してたりして」
「……おい、笑えねえ冗談はやめてくれよ」
「……そうね」
 二人は同時に身震いして首を振った。
 パンドラのことだ、何を考え何を仕出かしても不思議ではない。あの危険な男を野放しにしてはいけない。一刻も早く最下層に連れ戻さなければ、表という此処よりずっと‘玩具’の多い舞台でどのような事態を引き起こすか分からないのだ。
 しかし、ただでさえ雀の涙ほども集められなかったガンマンの資料しか手掛かりがないというのに、もしもガンマンでなくパンドラの方が先導していたとしたら、もうどうやっても短期間で捜し出すのは不可能ではないだろうか。
「偶然発見できることもあるだろうから、常に誰かを表で走らせておけよ」
 ドルガフは気を取り直して言うと、疲れた様相で部屋を出た。

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