◆◇風雷絵巻◇◆
決意の選択
――…振り返りもせず、ただがむしゃらに逃げていたライがふと空を見上げてみると、もうフウの姿はどこにもなかった。
よく見ると、見上げたその空も、先程より小さくのぞいている。
気付かぬうちに、深い森の奥へと入ってしまっていたようだ。
だんだんスピードを落として、少し落ち着いたライが、今度は視線を下に落とすと、そこには小さい体をさらに小さくして震えているムジナがいた。
「…!ムジナッ…!」
逃げることばかり考えていたライは、ムジナを怖がらせてしまっていたことに気付く。
自分達の喧嘩に、何も知らないムジナを巻き添えにしてしまった…。
《…ごめんな、ムジナ》
途端に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、優しく抱きしめ、頭を撫でた。
《…このままじゃ、ムジナが可哀想だ……。悔しいが、ここはひとつ…》
何かを強く決意したライは、くるりと元来た方角を向くと、足早に走り出す。
しばらく走った所には、たまたま少し開けた場所があった。
「よ、よし…、ここなら…」
肩で息をしているライが呟くと、今度はありったけの大きな声で叫んだ。
「フウゥ!!!
俺ならここにいっぞおおぉぉっ!!!!!!」
■前■□次□
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!