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お狐さま!!
ありがたいお誘い

それからの事はあっという間で、現場を見ていた通行人の報告により数分後には自治体の男たちが駆けつけ、ぐるぐる巻きにされた男たちをしょっぴいていった。
どうやらしょっぴかれた男たちは、ここ最近村で様々な犯罪を犯してきたグループだったらしく、その凶暴さと逃げ足の速さから自治体の人でも手がつけられなかったらしい。
通常そういった犯罪の取り締まりは、地方騎士団の役目らしいのだが、今は魔物が急増しているためその討伐に駆り出され治安維持まで手が回らないという状況だった。
その代わりと言ってはなんだが、自治体では手が回らないことを通りがかりの冒険者に依頼することが多く、銀華もその類だと思われたのかハゲ頭のおじさんに『もし、こちらに長く滞在するようであれば、また何かあったときよろしくお願いします』と満面の笑みで何度も頭を下げられ謝礼金まで貰ったのである。



『…さて、この後どうしよっかな―』

嵐が去った後のごとく静まりかえった中で、銀華はうーんと唸る。
そこへ、先ほど助けたナターシャという名の女性がおずおずとした声で話かけてきた。

『…あ、あの、もし今晩泊まるお宿が決まっていないのであれば、私の家に泊まっていかれませんか?――その、助けて頂いたお礼もしたいですし……』

『え、いいの?』


思いがけない言葉に銀華は琥珀色の瞳を丸くする。
ナターシャは可愛らしく微笑むと、頬を僅かに染めた。

『ええ!ぜひ来てください。私の家は宿屋をしてますのでギンカさんが泊まる部屋も用意致しますわ!』




その後、ナターシャの言葉に素直に甘えることにした銀華は、彼女の家にたどり着く。
ナターシャの家は表通りをまっすぐ歩き左の道を入っていったところにあり、いっけん見つけづらいが、隠れ家てきな落ち着いた雰囲気のある宿屋だった。

――カランカラン


『ただいま、母さん』

『ナターシャ!一体どうしたんだい?買い出しにこんな時間までかかって…』

店のカウンターの奥からナターシャの母親だと思われる恰幅の良い女性が現れた。
彼女と同じ蜂蜜色の髪に白髪が混じった女主人は自分の娘が食事の買い出しに行ったきり中々帰って来ないことに心配したのか焦った様子で問いかける。

『…ごめんなさい。ちょっと近道したら帰る途中変な人たちに囲まれちゃって……』

『馬鹿だねぇアンタは!!あれほど裏通りは使うなって言ったじゃないか!最近はここらも治安が悪くなって、若い女が何人かいなくなってるって言うのに!』

目をつり上げて叱る母親にナターシャはびくびくとした様子で首を縮こませた。
すると、母親は娘の後ろに立っていたフードの人物に今気づいたのか驚いたように軽く目を見開いた。

『――おや?そちらのお客さんはどなただい?』

『この方は私が危険な目に会ったときに助けてくれたギンカさんよ!泊まる宿がまだ決まってないようだったからお礼にお呼びしたの』

ナターシャの紹介に銀華は一歩前に出ると深く被っていたフードを取る。

『初めまして、銀華です。今晩は泊まる宿が無いところをナターシャさんにお誘い頂きとても感謝しております。よろしくお願いします』

にこりと微笑みながら少し首を傾けると、それに合わせて白銀色の艶やかな髪がさらさらと肩から流れた。

初めて見る銀華の容貌を母親とナターシャはぽかんとした表情で見つめることしばしば……。
数秒後、現実に戻ったのか母親は慌てたように頬を染めながら取り繕った。


『…あらやだ!私ったら見とれちゃって!…ナターシャの母親のダーナです。此度は娘を救って頂き有り難うございます。こんな狭いところで申し訳ないけど、今晩はゆっくりうちの宿で休んでいってくださいな』

恥ずかしそうに矢継ぎ早に言う母親のとなりでナターシャも照れたように微笑む。

『…私、ギンカが女の子だとは思わなかったわ〜』









………おい!
それはどういう意味だ!!

銀華は彼女の天然発言に内心盛大に突っ込みを入れる。
ダーナも娘の相変わらずぶりに豪快に笑いながら、パンパンと手を叩いた。


『それより、二人ともお腹が空いてるんじゃないかい?立ち話もこれくらいにして夕食にしましょうか。ギンカさんには是非ともうちの看板メニューを食べてってもらいたいしね〜』

腕捲りをして気合いを入れる女主人に銀華も『待ってました!!』とばかりに瞳をキラキラと輝かせる。

その後ナターシャたちと遅い夕食をとった銀華は久々に舌鼓を打ちながら心行くまでダーナさんの手料理を味わうのだった。

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