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お狐さま!!
予想外な裏切り

人間、獣人、精霊、魔物など、様々な生物が存在する世界《ティルスカイア》―――

そこはかつて、《魔物》が存在しない平和な世界だった。

今から約1000年前、ティルスカイアを覆う時空間に歪みが生じ、亀裂のように裂けた空間から数多の魔物を引き連れた《魔王》が現れる。

皮肉なことにティルスカイアが放つ魔力は魔物たちにとって非常に相性が良く、それを吸収することで魔王一団はさらに強大な力を得ることとなった。

そんな彼らに人間や、獣人、精霊は為すすべもなく、荒れ狂った魔物たちに次々と殺され棲み家を奪われていく。

そんな中、まさに世界崩壊の危機に立たされたティルスカイアに一筋の希望の光が差し込んだ。

どこからともなく現れたそれは次々と魔物を狩り、その偉大なる力に希望を見いだした様々な種族たちが力を合わせ、永久に魔王を葬り去ったのだ。

残念なことに魔物たち全てを葬り去ることが出来なかったが、生き残った魔物たちは魔王が死んでからは人気のないような森の深淵でひっそりと暮らすようになったためその他種族は再び平和な日々を取り戻すことが出来たのである。

『…なんだ。結局は1000年前にも同じような救世主様が現れてて悪の根源の魔王を倒したんじゃない』

世界神の長い説明に銀華は欠伸を噛み殺しながらも、すかさず突っ込む。
親切に説明してやってるのに全くもって不遜な態度だが、世界神はとくに気にしてないらしい。

『問題はここからだよ。魔王は1000年前の《魔王大戦争》で完全に葬り去ったはずだった。だけど、ここ100年前から再び魔物たちの動きが活発になって来たんだ。前までは森の奥でひっそりと暮らしてそんなに他種族に害を及ぼさなかったのに、今では人間が住む小さな村や獣人たちの村を襲い初めている。まるで、魔物たちがティルスカイアに現れた頃のようにね……』

『…それじゃあ、死んだはずの魔王がまた復活するかもしれないってこと?』

『そこまではさすがに断定できないけど、その兆しがあるのは確かだ。しかも、おかしいのは魔物だけじゃない。それまで平和を保ってきた人間も500年前から同族同士で争いをはじめ、その矛先が何の関係もない獣人や精霊にまで向けられている……』


世界神の話に銀華はゆっくり瞳を伏せる。


『――なるほどね。状況はよくわかった。だけど、あたしには生涯をその方のもとで仕えると決めた主がいるの。主の許可無しに異世界に行くことはできないよ』



銀華が子狐の頃、両親が人間に殺され独りさ迷っていたところを助けてくれた稲荷神―白來様……。
命の恩人(神)であるそのお方のもとで銀華は善狐となり、徳を積み神格化することで、天狐になれた。
よって、自分は主の側を離れることなど到底考えられなかった。











――目の前に座る彼が衝撃的な言葉を発するまでは……。








『ああ、その件に関しては大丈夫。君の主だっけ?稲荷大明神―白來之御魂命(はくらいのみたまのみこと)にはちゃんと許可とってあるから』
















『―――はぁ?』











――な、な、な、何事ですと……?









突然…というより予想外な出来事に銀華の頭の中は完全に真っ白になる。







『彼からの言伝てだと《これも世のため人のため。誠心誠意もってかの世界を救って来なさい》……だって』





『………………』
















――白來さまあァァぁぁぁぁ!!!!!!













この日、信頼していた主に見事なまでに裏切られた銀華だった。




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あきゅろす。
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