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お狐さま!!
プロローグ

何だろう……

視界が白い…

さっきまで、祠の中で寝ていたのにここはどこだ?

すーっと覚めていく視界とともに、銀華はうっすらと開けていた瞼をぱちっと開ける。

『なっ、何にこれ!?』

がばぁっ!!
…と素晴らしい反射神経を用いて上半身をお越した少女は心底驚いた表情で辺りをキョロキョロと見渡した。

白い…

何もかも真っ白だ……


まるで雪山の中にいるようなその世界に、そこが自分が作った異次元空間ではない別の空間だということがはっきりとわかった。

『…え、何?どういうこと?何であたしこんなところにいるの??!』

見渡せば見渡すほど、何もない真っ白な世界に、銀華は半ば混乱する。

もしや、人間の術式にはまったのか!?

とも思ったが、そんなことができる人間は現代の日本には片手で数えるほどしかいないだろう。
しかも、わざわざ自分のねぐらがある辺鄙な田舎に来たりしないはずだ。

予想外な事態に半ば混乱しながらも、頭をフルに回転させる。

落ち着け!!落ち着くんだ自分!!!

ここはきっと別の異次元空間。
そこに、自分に気づかれずに連れてこられる人物なんて大体限られてる。

それは、高等な陰陽師か、または自分より力の強い妖か……もしくは……



『――お?やっと気がついたか―。』

のんびりとした声が背後から響く。
突然のことに、銀華はばっと後ろを振り向くと琥珀色の瞳を丸くした。

『どーも初めまして、《神》でーす』

やけに間の抜けた声に弱冠口をぽかんとあける。

何だコイツは……
と思いながらも先ほど聞いた言葉に耳を疑った。



『いやいやいや、ちょっと待て。何だ《神》って。てかさっきから何食べてんだコノヤロー』

銀華は目の前に座る黒髪金眼の美青年を睨み付けた。
青年はさも当たり前のように口をモグモグとさせながら質問に答える。

『何って?お稲荷さんだけど……?』

『それはあたしの(主への)御供えもんだぁぁ!!』


昼になると必ず自分の主である稲荷神の祠に手作りお稲荷さんを持ってきてくれる地元のおばあちゃん……。
ホントは主への御供え物だけど、心優しい白來様(稲荷神)は私がお稲荷さんが大好物だということを知っており毎日分け与えてくださるのだ。
そして今、目の前の青年の手には食いかけのそれがしっかり握られていた。

『ひ、ひとがせっかくおやつに食べようと思っていたものを〜!!神だからって絶対許さないんだからっ!――喰らえ!食べ物の怨み!!』




ドゴオォ―ーン




派手な音とともに青い火の玉が超高速で青年に飛んでいく。
しかし、火の玉は何かにぶつかるように弾け飛んだ後、跡形もなく消えてしまった。



『さっすが《神に近しい存在》だね。上級の妖孤でも出来ない技だよ』

『そういうあんたは簡単に弾き飛ばしたけどね』


悔しそうな少女の様子に青年はくすくすと含み笑いをすると、にっと口角を上げた。



うぬぬぅ〜!
人のおやつ横取りしといて何だそのどや顔っ!
無性に腹が立つんですけど!!
《天孤》の上級妖術を無延唱の防御膜で弾き飛ばすなんて、間違いなくコイツは神様だ。

銀華は深いため息をつくと、改めて神と名乗る青年を見た。

『…そんで、神様が何のよう?何であたしをここに呼んだわけ?』

銀華の質問に青年は爽やかに微笑む。
そしてあり得ないことを宣った……。

『――銀華、君には異世界トリップをしてもらう』









――――――は?

イマ…ナンテイイマシタ?



あまりにも衝撃的な言葉に呆然としている少女に青年はさらに二の句を告げる。


『だから―、君にはこことは別の異世界に行ってもらうってこと。

――《救世主》としてね』










今は亡き父様と母様……

生まれてこのかた1000年…

どうやら私はとんでもないことに巻き込まれたようです。




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あきゅろす。
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