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FF13(NOVEL)
あなたのそばで -前編-

■エンディング後
■ホープ視点
■『君のとなり』の三ヶ月前の出来事



 腕からルシの印が消えた時、ホープは嬉しさと共に寂しさも感じていた。これでスノウや仲間達との旅が終わる。そしてそれぞれの道に戻らなければならないのだ。ホープは今後の事を思って俯く。

「当然、結婚…だよね」

 ぽつりと呟きながら、ホープは無意識に印の場所を摩って息を零していた。旅の間、ずっと考えるのはいつもスノウの事ばかりだった。復讐したかった時も、和解してからも。でも今日でそれも終わりだ。
 今日はスノウの仲間達がホープ達の帰還を祝してパーティーを開いてくれるのだと言う。パルムポルムで待っている父親の事も気になるし、ホープはこのパーティーを最後にボーダムを去ろうと考えていた。その方がスノウと恋人の幸せそうな姿を見せつけられる心配もない。

 ノラカフェ前の砂浜はパーティーの噂を聞き付けた人々でごった返していた。まるで花火大会の日みたいに。

「あ…っ」

 周りを見ていなかったホープの肩が人と接触する。小さい身体が衝撃でよろめいて、思い切り砂に足を取られた。

「おっと!」

 ぽすり、と地面ではない温かさにホープは包まれる。後ろから抱き留めるように伸ばされた腕がホープの目に映る。黒い革手袋だ。見上げると、人懐っこい笑顔のスノウがホープを見下ろしていた。

「よ!ホープ。
危うくぶっ転ぶとこだったな」

「ご、ごめん…」

 砂にしっかり着地してもスノウの腕が離れないせいで、ホープの頬が朱に染まる。

「スノウ。もう大丈夫だよ。腕離して」

「ホントかぁ?…うり、うりうり」

 心音が早くなりそうで、スノウの太い腕を押し返そうと指を添える。すると、疑うような振りをしてスノウがからかい混じりに前へ回した腕でホープの腹の辺りを擽ってきた。

「は、ははっ、くすぐったい!
止めてよ、転ぶからっ」

「大丈夫だって。
転ぶ前にまた助けてやるよ!」

 強制的に笑わされて肩で息を繰り返しながら、腕が離れる頃合いを見計らう。漸く腕から抜け出ると、ホープの為に最後までフォローしてくれる腕に気がついて、ホープは目元を和らげた。こういう小さな配慮が敵わない。

敵わないのだが―――。




「…空気読めないのは相変わらずだよね」

 息を切らしながら、ホープは眉を寄せていた。スノウの左腕を担いで一歩ずつ前に進む。夜はすっかり更けていた。

「同感だ。何故、こいつは後先考えずに飲むんだ。…理解に苦しむ」

 スノウの右肩を担いでいたライトニングが冷めた声をあげる。ホープの独り言を聞いていたらしい。二人でほぼ同時にため息をつきながら、力のない巨体をずるずる引っ張って行く。

 パーティーは楽しかった。ホープはノラの仲間と一度会っていたが紹介されたのは今回が初めてだった。いつものスノウを知る人達なんだと羨ましく思いながら、ホープは過去のスノウの英雄談に耳を傾ける。歳の近いマーキーとスノウの事で笑えるポイントが一緒だったことで友達にもなれた。

「セラさん、一緒に来なくてよかったのかな」

 セラは―――、とても可愛い人だった。ホープが持っていない心の余裕があり、スノウが気軽に休めるのはここなんだと改めて思えて悔しかった。ホープはいつも守られてばかりで何にも返せない自分に苛立つ。唯一、返せたと勘違い出来たのは魔法だ。ルシを助ける力がホープは人一倍強かった。それ故に仲間のピンチの多くをフォローして自信をつけたのだが、その力も普通の人間に戻れば失われてしまった。もうスノウの役にたてない。物思いに更けっているとライトニングが不満そうにホープを見て口を開いた。

「ホープ、それを私に言うのか?」

「あ、すみません」

 セラがライトニングの妹だった事をすっかり失念していた。だから今日セラに家へ帰るように言ったのか、とホープは納得する。パーティーをお開きにしようと宣言したのは他でもないライトニングだ。浮かれて酔い潰れたスノウに代わっての発言だった。
 ノラの仲間達は明日からの仕事の準備で忙しくしていたので、必然的に酔い潰れたスノウの介抱役は、暇な旅の仲間達に決まってしまった。家まで送る事になった時、セラも行きたそうにしていたが、ライトニングが良い顔をしなかった。サッズ親子を泊まり先に案内して家路に着くようにとセラが約束させられているのを知って、ホープはなんだかほっとしていたのを思い出す。

「…明日、ここを発つんだそうだな」

「はい。朝になったら。
父さんの事も心配だし、それに学校も」

「帰って…いいのか?」

「え…?」

 不意に言われた言葉にライトニングを盗み見る。ホープに重心をかけないようにスノウを抱え直すライトニングはこちらを見てはいなかった。まるで独り言だと言わんばかりに。

「まともな時に、こいつと一度話しておいた方がいいぞ」

「……知ってたんですか」

 心臓がどくんと鳴った気がした。想いが人にばれていた。旅の途中も結構抑えめに行動していたのに。声が少し震えてるなと思いながらホープはライトニングから視線を外して呟く。すると目を伏せてライトニングは頭を振った。少しだけ笑みを覗かせて。

「顔に書いてあるからな。
勘違いするなよ…別に私はお前達を応援している訳じゃない。セラが後で泣くような事になったら困るから、はっきりさせておいて欲しいだけだ。…これは私のエゴ、だな」

「……」

「それに、言いたい事は言った方がいい。私はこの間までずっと言えなくて後悔していた事がある。たった一言だったが、胸にいつまでも残って…苦しかった」

「…苦しい」

「ああ」

 ライトニングに何があったのかは解らない。ただホープにはその意味が痛いほど分かって眉を寄せた。この気持ちから逃げたくて朝街を出るつもりだったのに、ライトニングは向き合えと言いたいらしい。もしかするとセラを家に返したのもホープの為だったのだろうか。

 家までたどり着くと、スノウをライトニングに任せて、ホープは借りていた鍵で扉を開く。中に運び入れようと再びホープが近づいた時、徐にライトニングが玄関口にスノウを放り出した。

「ライトさん?!」

 どさっと重た過ぎる音がして、呻くような声が聞こえるとホープは少しパニックになる。どこか変な所を打ったのではと心配そうに暗がりに転がったスノウを見つめてから抗議するようにライトニングに振り返った。

「こいつはこれくらいで丁度いい。
それに起きてるんだろう?スノウ」

「え」

 悪びれもせず涼しい顔をしたライトニングが暗がりに声をかけると、「あーあ。バレてたか」と間延びした声が聞こえてホープは目を瞬かせた。

「ス、スノウ?」

「ベッドまで送って貰えると
思ってたんだけどなぁ」

「ここまで来れただけ感謝するんだな」

「…へいへい」

 スノウの冗談もあっさりかわしてライトニングは背を向ける。驚いたままのホープの肩を軽く一度叩いて微笑んだ。

「今日はここに泊まっていけ。
あの男一人じゃ心配だからな」

「はい」

 ほんの少し遠くから「なんで義姉さんが決めてんだよ?」という声が聞こえたが、ホープはライトニングの意図に気づいて深く頷いた。



〈続〉



―――――――――
ライトさんは私のPS3が壊れてしまっているせいなのか男なのに女に変換されています。残念です。


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あきゅろす。
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