小説(VOC@LOID) イライラ。 イライラ。 じりじりと肌を焦がすように日差しが照りつける午後だった。 空は眩しいほど青く、もくもくと入道雲が空を縁取る。 「あっちーよ」 レンこと鏡音レンはぶーたれた。 「・・・なんでこんなクソ暑いのに、なんで買い出しなんか・・・。とんでもねえ鬼畜だぜ。マスターは」 ブツブツと1人で愚痴っていると、隣で頼まれた食材の入ったスーパーの袋を持つリンがレンの足を蹴飛ばした。 それは勢いよくレンのふくらはぎに当たり、レンはあまりの痛さによろめいた。 「リン、いってーだろ!!!!!ますますイライラするじゃねえか!!!」 「だって、レンうるさいんだもん!!!ただでさえ暑いのに、となりでグチグチとさあああ!!!こっちだって暑いんだよ?」 「るっせー」 レンが大きな瞳でぎろりとリンを睨む。 「早く家に帰ろう。帰ってクーラーのある部屋でぐうたらしたい。マリカしたい!!」 駄々をこねだすリンにレンはため息ついた。 お互い我儘だから、こんなにギャーギャー騒いでいたらこんなときカイトが止めに入って諫めてくれるのに。 レンはぽつりとそんなこと思う。 「というか何であたしが買出しの袋持ってるわけ?レン持ってよ」 「・・・というかじゃんけんで持つのを決めたのに、負けたのリンじゃん」 「そ、そうだけどさ!でも重いんだもんー。あたし女の子なのに!!!」 リンが口を尖らせてレンに買出しの袋を差し出す。 レンは肩をすくめ、やれやれと袋を受け取った。 そのときだ。 レンはピクリと自分のヘッドフォンに手をあてた。 微かに歌声が聞こえた。 「うた」 「え?」 リンも自分のヘッドフォンに手をあて、目を閉じた。 「ほんとだ」 レンも再び目を閉じる。 「・・・・・カイトだ」 レンは確信を持ったように呟く。 「そこまでわからないよ」 リンは困ったように肩をすくめた。 「俺、わかる。この声はカイトだよ。・・・・こっち!」 レンはリンの腕をグイと引っ張り、声のするであろう公園に走った。 「ちょ・・・レン!!!」 さっきまで暑い暑いと項垂れていたのに、この行動力にリンは大きな瞳をぱしぱしと瞬かせ、レンを見やった。 さあっと風が流れた。 波のような風に乗ってくる歌声に、ついレンは眩しくて目を細める。 そこにはカイトがいた。 木陰で座りながら、楽しそうに目を閉じて歌っている。 そしてフ、と歌うのをやめた。 そして誰かに笑いかける。 その相手はメイコのようだ。 メイコと楽しそうに喋りながら、たまにメイコに頭を小突かれるカイト。 「歌ってたのお兄ちゃんだったね。・・・なんでレンわかったの・・・?」 リンはそっとレンの顔を覗き込んだ。 「レン・・・。怒ってるの?」 リンに言われ、レンはハッとした。 「・・・なんで」 ぽつりとレンは呟く。 いつも冷静で大人の前では猫を被る、行動、言動に余裕のあるレンがこんなに焦っている。 リンは見透かしたように笑った。 「レンってさ・・・・・。何でお兄ちゃんのときだけ必死なの?」 「え」 レンはぎょっとする。 「リン、何言ってんだ」 「あたし、知ってるよ。レンはお兄ちゃんを見るときだけ怒ったような顔している。はじめは嫌いなのかなーって思ってたんだ。でも違うみたい。レンは猫被るのがうまいもの。リンと同じくらいにね」 まどろっこしいリンの言い方にレンは眉をしかめる。 「リン、何が言いたいんだよ」 「あたしが言いたいのは・・・レンはお兄ちゃんを独り占めしたいんでしょ」 リンはにやりと笑う。 同じ双子ながらにリンは鋭いし、何もかも見透かされているようだ。 「・・・・・何言ってんだ」 「レンは正直さんだなあ。レンは普段気付かないだろうけど。ほんっとあたしとお兄ちゃん以外で感情を出さないんだよ。同じ家族のメイコ姉さんやミク姉にも心開いてないよねえ」 「・・・・リン」 「でもあたしは嬉しいよ。だってレンはあたし以外にも感情出せる人現れたんだもん」 そう言ってリンは背を向けて、レンから離れた。 ジーワジーワと蝉の声が上から広がるように聞こえる。 レンはまだイライラしたままだった。 これが夏の暑さのせいなのか、カイトのことを見てしまったからなのか・・・・本当にわからない、儘。 終わり * *********************** あとがき。 とりあえず鏡音の台詞が書きたくて書きました。 鏡音一家大好きすぎる!!!!!! 鏡音とカイトの関係が大好きです。 この3人にひたすら萌えてます!!!! ラブ!!! つたないですが読んでもらえて嬉しいです!! [戻る] |