狂気的強記

車内では皆和気あいあいとした感じでお話をしていた。それを聞きながら、私は外の景色へと視線を移した。


お母さんは黒のロングドレスを着ていた。身体のラインを強調するように胸下とくびれあたりから中央に向かってラインストーンがつけられていて、ドレスの裾は少しフリルがついている。全体的にエレガントで落ちついた雰囲気だった。


胸元には、綺麗なダイアのネックレスがつけられている。髪にはとくに結ぶなどはせずに、少しボリュームをつけるに終わっていた。


お父さんたちは、それぞれスーツを着ていて、雲雀さんに至っては、いつもとたいして変わらない気がする。
皆の服装をそれぞれ説明すると、さっきもいったようにスーツで、皆黒いんだけど。


隼人は、中に緋色のポロシャツを着ていて、ネクタイは黒だ。
たけにいは、青竹色のシャツを着ていて、隼人と同じような黒いネクタイをつけている。でも、隼人みたいにきっちりとはしていなくて、スーツの前は開けられていて、ネクタイもゆるめてある。つまり全体的に隼人と比べてラフな格好に見える。


雲雀さんは藤紫のシャツを着ていて、彼はいつものごとくきっちりと着こなしている。
笹川さんは山吹色のシャツ。
ランボはいつもと同じように牛柄のシャツを来ているし、骸は、白いシャツに黒いネクタイをたけにいみたいに結んでいる。
そして、お父さんは、黒いスーツに白いシャツ、そして、ネクタイの端の方には、ボンゴレのエンブレムがあった。


車の助手席には、私の護衛兼通訳というイリーシャさんが座っていた。彼女は肩ひものあるドレスに、胸元にはシルバーのコード刺繍がほどこされていた。ふわりとしたスカートはストンと落ちるように足元まで伸びている。そして、膝上ぐらいまで入ったスリットからは、白い足が少しのぞいている。金髪に、青い目だから、黒はその髪に生えてきれいだった。


車はどんどん進んでいく。日が沈もうとしていた。真っ赤な夕日は街並みを赤く染めていく。次第に、車は大きな屋敷の前で泊まった。


「ああ、ついたね」


「紫杏降りるぞ」


リボーンに抱っこされて、おろされる。後ろを振り返ると、他の皆もどんどん降りてきた。ボンゴレの車以外もたくさん止まっていて、そこからどんどん煌びやかな服を来た人たちが降りてきて、吸い込まれるように屋敷へと入って行った。


「じゃあ、皆、よろしくね。イリーシャ。紫杏を頼んだよ」


「Si」


「紫杏。絶対にこれは外すんじゃねえぞ?」


コクン、とうなずく。そうすれば、リボーンは、フッ、と笑って、頭をポンポン、となでてきた。


「紫杏ちゃん。何かあったら、来ていいからね?」


その言葉にもコクンと頷く。


お母さんに手を繋がれて、中へと入る。ロビーの奥には、大きなドアを開けているボーイ二人。そして、その扉の向こうには、テレビとかドラマの中でしか見たことのなかったような光景が広がっていた。


立食パーティーのようで、白いテーブルクロスのかけられた丸い腰ぐらいまでのテーブルの上にはたくさんの料理が並べられていた。どっちにしても、私にはとれそうにないけど。


中に入った途端、皆それぞれの方へ散らばり始めた。私はとりあえずイリーシャさんの後を追った。


ざわざわとしだす会場の中、急に辺りが暗くなって、そして、スポットライトが一か所を照らしだした。


そっちに目をやると、スーツを来た少し太った中年の男の人が照らされていた。


「えー、えー、皆さま。今宵は、我が娘のためにお集まりいただきありがとうございます。私の娘もようやく14になりました」

しばらく続く挨拶は、娘自慢や、事業の話しなどをしている。私はその人から目線を離してもとに戻した。しかし、そこにイリーシャさんの姿はない。やば、見失った?
私は、あわてて彼女の進行方向へと歩き出す。暗い中で目を凝らしながら辺りを見回して、必死に探す。それでも見つからないから、仕方なく私は壁際によった。


ちょうどそのとき、さっきの男の人の話しが終わったのか、電気がつけられて、再びざわめきが戻ってくる。そして、人々は、挨拶をかわしたりしながら、シャンパンを片手に談笑していた。私は、そんな中に必死に目を凝らして、みしった姿がないかと探す。


「おや?紫杏さんじゃないですか」


声をかけられて、見上げたらそこには赤ワインを片手に持ったランボがいた。そういえば、ランボってここら辺だったっけ?


「イリーシャさんとは一緒じゃ?」


[はぐれちゃった]


「では、みつかるまで俺といますか。こんなところに一人残しておいてはボンゴレに怒られてしまう」


そういうと、彼は、ニコッと笑ってくれて、私も少し安心した。しばらく談笑していると、目の前に人影ができて、視線をあげる。


そこには、口元は笑っているけれど、目が笑っていないイリーシャさんがいた。


「まあ、紫杏様。探しましたわ。ランボさんと御一緒だったのですね?いきなりはぐれてしまわれたのでどこへ言ったのかと。こういうことはこれっきりにしてほしいですわ」


「彼女が来たなら、もう安心ですね」


イリーシャさんに腕をとられて引かれる。後ろを振り返れば、ランボは違う女の人に話しかけられていた。前を向けば、イリーシャさんに隅っこのほうへと連れていかれていた。


「なぜ、ついてこなかったんです?あれでは、私が面倒を見きれていないと思われるじゃないですか。いいですか。紫杏様。私は貴女の、通訳兼護衛です。ついてきてもらわなければ困ります」


すごい剣幕で、早口に囁く彼女は、その言葉とは裏腹にひどく優しい手つきで私の髪のコサージュを治していた。まわりから見たら、面倒見のいい人と思われるだろう行動。


「わかりましたね?」


私は、彼女の瞳を見詰めた。もう一度聞かれて、私はゆっくりとうなずく。もう、帰りたいと思った。お母さんが何かあったら来てもいいといったけど、迷惑もかけられないし、今日は一日耐えようと思った。


「では、紫杏様。只今、飲み物を持ってくるので、お待ちください」


その言葉に、コクンともう一度うなずいて、壁に寄りかかり、イリーシャさんが人ごみにまぎれていくのを見る。


金髪は、きこではすぐに人にまぎれて見えなくなってしまった。日本だと、金髪は目立つはずなのに、他の人にまぎれてしまう外国では、黒髪のほうが目立つのか…。なんて考えつつ、少し俯いて、目を閉じた。


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