信号に一礼

連れられてきた場所は、書庫だった。なんで書庫??


「確か…」


リボーンは私をソファーの上に座らせると、本棚の方へと近づいて行った。そして、何かを探している。何の本を探してるのかな??


私は、しばらく、そのままリボーンのことを見ていれば、リボーンは一冊の本を抜き出して、こちらに持ってきた。


もってきた、本の題名には、英語で、『Standing army Signal』と書かれていた。シグナルって、確か、信号とか、合図とかっていう意味だったはず。スタンディングあーみー…??


「常備軍信号って書いてあるんだぞ」


常備軍って…、あれだよね、陸軍とか、空軍とか、国が常備している軍って、そのままの漢字だけど。


[なにするの?]


「これに確か、モールス信号が載ってたはずだ」


それが、どう関係してくるのかがよくわからなくて、首を傾げる。でも、リボーンはその、モールス信号ということに対して、首をかしげたのだと思ったらしく、モールス信号についての説明を始めた。


「モールス信号ってのは、短点と長点の組み合わせだけで構成されている単純な符号だ。まあ、とりあえず、紫杏は覚えられるからな。覚えたら練習だぞ」


え、練習…。というか、あれって、昔の電話とかに使われていたんじゃなかったっけ?音、とか、船での光とか…。私、そんなの持ってないよ?


リボーンは、そんな私の疑問も知らずに、本の中からあるページを開いて私に見せた。そこには、アルファベットの横に、横棒や、点などがかかれている表があった。


たとえば、Aなら、・−。Bなら、−・・・というかんじだ。


「これは、“・”をトン、“−”をツーと読むんだぞ」


トン、ツー?


ということは、Aがトンツーで、Bがツートントントンってことだね。


理解したと示すために、コクリ、とひとつうなずく。


「で、だ。たとえば笛を吹いてもいいんだが…、面倒だから、指でやれ」


ゆび?


「どうせ、電話であるていどわかれば問題はねえんだ」


つまり、相手が理解してくれればなんでもいい、ということですか。


「あとは、こっちが適当に単語を当てれば、それで会話が成り立つはずだぞ」


それって、相手の人大変だね…。私は…、まあ、いいんだけど。…というか、電話をする機会ってそうそう、ないんじゃないの?だって、誰かと一緒にいるだろうし…。私がどこからか、電話をかけるような事態には…、ならない、よね??


「それに、事例もあるんだぞ」


事例?
首をかしげてリボーンを見れば、リボーンより先に、帽子の上に乗っているレオンと目があった。くりくりの瞳が私を見ていて、あ、かわいいなあ、とか思う。


でも、そのあと、すぐにリボーンが頭を動かしたから、強制的に視線は逸らされることになった。


「倉庫に閉じこめられていたドイツ兵が、金物で壁をたたき『破壊せよ』というモールス信号を送って、見事脱出したことがある」


へえ、そんなことが…。


「これは、たたいた時の音の間隔を利用したんだぞ。だから、電話も無理じゃねえはずだ」


なるほど…。たたく間隔で、相手が理解してくれればいいわけだ。理解…、されなかったら、悲しいね。って、そういう問題でもないわけか。


「覚えたか?」


その問いにコクリ、とひとつうなずく。文字は、残念ながら外国語なので読めないけど、それも含めて覚えている。


「なら、練習するぞ」


リボーンは、私からその本を取り上げると、しばらくそのページを凝視して、パタン、と閉じた。あれ?リボーンは、みてなくていいのかな?それとも、もう、覚えてる?


「俺は、もう覚えてるぞ」


「!!」


「一応資格は昔にとってるしな」


そんな、資格が必要だったの!?普通に生活してたら、モールス信号なんて必要ないよね。
あ、普通じゃないか。マフィアの時点で。そういえば、マフィアなんだよね。


「じゃあ、まずはAから順に膝を叩いてみろ」


言われたとおりに、あの髪を思い出しながら膝を叩く。


トンツー、ツートントントン、ツートンツートン、ツートントン……。


そんな感じでなんとなくでたたいていくんだけど、わかるのかな?
トン、ツーではたたく間隔を変えてみた。トンより、ツーの方を長くする。トン、トーンと言った感じで。でも、これを電話越しにするとなると、相手は相当大変なんじゃないだろうか。


Mまでいったときに、リボーンが口を開いた。


「間は2泊ほど開けろ」


言われたとおりに、間を2泊分あける。


ツートン、1、2、ツーツーツー、1、2、トンツーツートン……。


全部終われって、窺うように、リボーンを見れば、レオンが一つうなずいた。


「じゃあ、次だ。次は、SOSって打ってみろ」


トントントン、1、2、ツーツーツー、1、2、トントントン。


「大丈夫だな。じゃあ、あとは、英語の単語を覚えろ。英語は万国共通語だからな。たいていの奴になら通じる」


それって、相手が英語を分かってる人じゃないと意味ないんじゃ?


「マフィアは英語なんて軽いもんだぞ」


…そうですか。
私の考えていたことを読んだように、答えたリボーン。というか、マフィアってすごいね…。


「外国ともいろいろとコミュニケーションをとならきゃいけないこともあるからな」


マフィアって、国際的にも活動するんだ…。でも、ニュースとかでは見たことないよね。って、当り前か。でたりしたら大変だしね。


[りぼーんって、どんなつづり?]


「REBORN」


・−・、・、−・・・、−−−、・−・、−・、


「なんだ?」





「T」


・・・・


「H」


・−


「A」


−・


「N」


−・−


「K」


「THANK。ありがとう、か」


リボーンの今の私より、ずっと大きな手が、私の頭をなでた。


声が出ない代わりに


音で届けよう


君へ


この思いを




(そろそろツナのところに戻るか)
([おきゃくさん、きてる?])
(ああ、来てるだろうな)
([おこってない?])
(大丈夫だぞ)

モールス信号…みんなの知識「ちょっと便利帳」参照


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あきゅろす。
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