決める格好

次に見つけたのは、ランボだった。


「おや、紫杏さん。その手に持っているものは?」


[でじかめ]


「おお、懐かしいものですね。中を見ても?」


うなずきながら、差し出す。ランボさんはそれを見ながら懐かしそうにほほ笑んだ。


「おや、これは、これは…。幼いオレが写ってる。このころはオレもまだ泣き虫だった…」


今もじゃないの?とか思ってしまったけど、それはちゃんと伝えないでおいた。そこまで、言う訳にはいきませんから!


「若きボンゴレ、懐かしい限りですね。あと数年たてば、この時代にも行けるのでしょうけど」


あ、そっか。十年…なんとかで、過去に行けるんだよね。ランボって。いいなあ。いいなあ。過去、に…。


[かこのおとうさんたちって、このときよりまえ?]


「はい。まだ中学生ですよ。ボンゴレも、山本氏も獄寺氏も。リボーンだって一歳ですからね。まあオレも五歳でしたけど」


[どんなかんじ?]


「ボンゴレはお優しい方ですよ。みなさんあの頃とあまり変わってはいませんね。ただ、紫杏さんが来てから、みなさんよく笑うようにはなったと思いますが」


ふーん…、あまり、変わってないんだ…。私の10年後ってどうなるんだろう…というか、この格好のままだったら、また小学校からやり直しさせられるのかな?もう、全部覚えてるのに?


めんどくさいなあ…。学校は嫌いじゃなかったけど、好きでもない場所だった。瞬間記憶能力があるせいで、ねたまれるし、授業は同じところを何回もやっているようなものだからつまらないし。


って、こんなこと言ったら、他の人に怒られるけど。


写真を見終わったのか、カメラを返してもらった。それから、カメラモードにして、ランボさんを移す。カシャっという音とともに、ランボさんは素早くポーズをとった。
そのポーズが、どこからか取り出したのか、バラを持って、花の部分を口元に近づけてウィンクしてる。これも、一つの特技だね。


えっと、たけにいとランボを取ったから、あとは…、隼人と雲雀さん?どこにいるかな。雲雀さんは、あの場所に行けばいいだろうけど、隼人は…。


[はやとしらない?]


「獄寺氏なら、自室にいるかと思いますよ」


[ありがと]


「いえ、それでは」


そのあと、ランボと別れた私は、隼人の部屋に向かった。


隼人の部屋の前で、とりあえずノックをしてみる。でも、返事はない。中にいないのかとも思って壁に耳を当ててみると、中から人の声が聞こえてきたから、たぶんいる。
もう一回ドアをノックしてみる。でも、やっぱり返事はなくて、とりあえずドアを開けてみようかとドアノブに手を伸ばす。


普通に開いた部屋の中をのぞけば、そこには床に座り込んで何やらぶつぶつ言っている隼人。隼人には珍しく眼鏡をかけている。そのせいか、とても理知的に見えた。


とりあえず、その姿をカメラをつかって移す。カシャっという音とともに、隼人が素早く顔を上げ、立ち上がった。


「!!…なんだ、紫杏じゃねえか。どうしたんだ?」


[みんなのしゃしんをとってるの。のっくしてもきづかないから…。ごめんなさい]


「あー、別に、怒ってねえからよ。にしても、随分古いもの持ち出してきたな」


隼人の近くに歩み寄ると、何やら図面のようなものを広げていた。


[りぼーんにもらったの!こうこうじだいのがはいってるよ]


カメラを差し出せば獄寺さんは眼鏡をはずしてそれを見た。


「ああ、これはリボーンさんが撮ったやつか。オレ達が高校生か…。げ、野球バカまで写ってやがる…」


[やきゅうばか?]


「山本だ、山本」


山本さんが野球バカ?そういえば、前に素振りしてたっけ。でも、なんでバカ?


「げ、アホ牛め、ポーズなんて決めてやがる。昔っからきざだったが…」


あー、昔っからだったんだ。ランボのきざなのって。


[じゅんばんにとってて、つぎはひばりさんとこいくの]


「!!雲雀の野郎のとこにも行くのか?」


なんだか、複雑そうな顔をする隼人に首をかしげる。


「いや、なんでもねえ…」


そう言いながら、いまだにその表情を変えない隼人は私にカメラを返した。


[じゃあ、いってきます]


「ああ…」


出て言った小さな背中を見送る隼人。


「そんなこと、普通の奴は言えねえぞ…。ガキは怖いもの知らずだな…」


その言葉は紫杏の耳には当然ながら届かなかった。


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