始まりは、昔々

ある物置、そこに私はいた。
見つけたのだ。ちょっと探検がてらいろいろな部屋をのぞいていたら、面白そうなものがたくさんあって、只今物色してる。


「ケホッ、ケホッ…」


物を動かすたびに舞う埃にむせる。物を触った手は、埃によって少し白くなる。でも、面白いから、そのまま見て回る。


まず見つけたのは、お面。3つあって、白狐、黒猫、ひょっとこ。なぜ、ひょっとこ…。どうせなら、三つとも動物にそろえればいいのに。とか思いつつ、一番かわいげのある黒猫のお面を手に取る。


埃をかぶっているそれを、少し振って、埃をとり、顔につけた。視界が一気に狭まる。普段とは違う視界が、またおもしろい。普通に息をしているだけなのに、それが内側にこもり、生温かさを感じる。
私はそのままの状態で、ゆっくりと置かれているものを見て回った。


ミニチュア版トーテンポールとか、何かが入っていたと思われる水槽(苔が生えている)、何かの骨のようなもの…、とにかくいろいろあった。
と、そんな中で、私は一つのカメラを見つけた。


それを手に取ってみる。それはなんと、デジカメだった。シルバーの機体は少しくすんでいる。
なんでこんなものがこんなところに…。こんな、よくわからない奇妙な物が置いてあるところにあるんだろう…。


そうは思うも、とりあえず使えるかどうかためしてみるため、電源をON!


ピロリンと言うかわいらしい音とともに、画面が明るくなる。
おお、ついた。
データも入っているようで、好奇心には敵わなかった私は、データを見てみる。
でも、狭い視界では見にくく、黒猫のお面をとって、棚に置く。


「………」


写真には、男の子がいた。ハニーブラウンのつんつんの髪に、茶色の瞳をした、たぶんお父さん。そのお父さんが、入学式と書いてある看板の横で、制服を着て緊張した面持ちで立っている。


これは、高校の入学式かな?看板に、並盛高校って書いてある。


次を見てみたら、そこには、黒髪に短髪の人と、銀髪の人。これはたけにいと隼人だろう。二人がお父さんを挟んで看板の横で撮っている。


次を見たら、人が増えていた。


お父さん、たけにい、隼人、それに、茶髪の女の子と、10年前のランボに、小さい、頭のてっぺんで一つに結ばれた髪の女の子、あと、茶髪で大人の人。誰かのお母さん、かな?誰だろう…。


騒がしそうだけど、とても楽しそうだ。隼人とたけにいはあんまり変わってないみたい。あ、でも、お父さんもあまり変わってないかな。


他にもどんどん見ていったら、いろいろな人が移っていた。たまに、写真の端に雲雀さんらしき人が、なぜかガクランを肩に羽織っている姿で写っている。制服はガクランじゃないのに…。


あと、お父さんがこけそうになってるのとか、さっきの茶髪の女の子と楽しそうに話しているのとか、たけにいが野球しているのとか、隼人が屋上で煙草すってる姿とか。


それからしばらく見ていって、気づいたら二年になっているみたいだった。


それでも、しばらく見ていったら、黒髪で大人しそうな女の人が出てきた。でも、どこか見たことある。その人がよく出てくるようになって、途中で気づいたのは、たぶん、その人はお母さんだってこと。


昔のお母さんって、こんな人だったんだ…。
それからは、よくお父さんとお母さんが写るようになった。皆、昔から仲がよかった人たちなんだ…。
いいなあ…。


「…紫杏、こんなところにいやがったのか」


不意に聞こえてきた声に、後ろを振り返ったら、そこには、リボーンがいた。


「何してるんだ?」


問いかけてきたリボーンの方にデジカメを持ったまま近づいて、それを差し出す。


「?…ああ、カメラか。随分古い型だな」


え、これ、古いの?結構新しい方だと…、あ、でも、十年ぐらいたってたら、そりゃあ、古くなるか。文明の力はものすごい勢いで発展してるもんね。


「フッ、懐かしいな。これは、俺が撮ったやつだぞ」


[りぼーんが?]


「ああ。学校に侵入して、撮ったんだぞ」


いやいや、侵入って…。何してるの、リボーン。
普通に言ってのけるリボーンに、心の中で突っ込んでおく。
リボーンはしばらく写真を見てから、ぼそっと呟いた。


「こいつらの一番騒いでた時、かもしれねえな」


呟いた言葉は、結構小さくて上手く聞きとれなかった。首をかしげてリボーンを見上げれば、なんでもない、と言われる。


「それよりツナが探してる。行くぞ。これは、お前にやる」


[いいの?]


「ああ。どうせ、もう印刷する機械は世界にもほとんど残されてねえしな」


[ありがとう!]


「ほら、行くぞ」


リボーンの手を取って、私はその場を後にする。もちろん片手にはデジカメを持って。
歩いている途中で、どうやら、洋服に埃がついていたようで、リボーンにはらわれた。そして、また舞う埃にレオンがクシュンとかわいらしいくしゃみをした。


向かった先は、お父さんとお母さんの寝室だった。
なんで、寝室??


「ツナ。連れてきたぞ」


「ああ、リボーン助かったよ。紫杏。急にごめんね」


リボーンは扉をノックすることもなく、そのまま開けて入って行った。その入ったところには、ベッドに座って膝に肘をつき、組んだ手を額に当てていたお父さん。その姿は、祈っているようにも、悩んでいるようにも見えた。
何があったんだろう…。


少し不安になって、リボーンの手を握る手に力を入れる。しかし、リボーンは握り返してくることはなく、そのまま手をひかれて部屋にあるソファーに座ったから、私もその隣に座った。
お父さんも、ベッドから立ち上がって私たちの前に座る。


しかし、お父さんは、しばらく目を泳がせて、また、両手を組んで、それを額に当てた。
本当に、なんなんだろう…。


「ツナ。さっさと言いやがれ。お前が紫杏を不安にさせてどうするんだ」


「うん、そう…、そうだね。うん。紫杏?」


やっと、顔を上げたお父さんは、まっすぐに私を見つめてきた。茶色い瞳が私を射抜く。


「紫杏、お願いが、あるんだ…」


少し泳ぐ瞳は、次には覚悟を決めたように私の方を見る。私は、その瞳を見つめ返すしかできない。


「しばらく、この屋敷から一人ででないようにしてほしいんだ」


[やしき?]


「そう、ごめんね?ちょっと窮屈になるかもしれないけど……」


[おにわは?]


「……庭、は…、いいよ。でも、なるべくリボーンか守護者の誰かといてほしいんだ」


[しゅごしゃ?]


「あー、えっと、武とか。隼人とか」


[たけにいとはやと?]


「ああ。あと、雲雀と骸、了平にランボもだぞ、紫杏」


[りぼーんは?]


「俺は、ちょっと違うな。俺は家庭教師だぞ」


[かてきょ?]


「ああ。ツナの家庭教師だったんだ」


「元ね」


え、リボーンの方が年下じゃないの?あれ?だって、前にリボーン、11歳だって、言ってたのに…。え、実は、お父さんより年上でした、とか?


「リボーンは、11歳であってるよ」


[とししたでかてきょ?]


「まあ、リボーンはアルコバレーノだったしね」


「[アル]……??[ろくどうさんもそれいってたね]」


「…ツナ。話を戻せ」


「え、ああ。そうだった。で、しばらく誰かと一緒に、って感じになるけど、いい?」


コクリとうなずく。うん。どっちにしても、あまり屋敷の外には出ないし、問題ない。庭に一人で出れないのは、あれだけど、それもあまり問題なし。一応一人で出てもいいらしいけど。


「悪いね。用はそれだけだよ」


それからは、お父さんたちの寝室から出て、リボーンは書類整理があるっていったから、私はまた探検を始めた。


けど、だんだん、つまらなくなってきたので、どうしようかと考える。今日は絵を描く気にはなれない。
じゃあ、どうやって、暇をつぶそうか…。リボーンは書類整理だし、お父さんもお母さんもお仕事だし…。


と、そこで、手の中にあるカメラ。そうだ。皆の写真を撮ってみよう!ってことで、皆を探してみよう!


最初に見つけたのは、たけにいだった。私は、なんとなく探検もかねるから、鍛練場に行くことにした。そこにいけば、一足の靴。それがたけにいの物だったから、中に入ってみる。


でも、その中にはいなくて、首をかしげる。あれ?靴はあるのにな…。


とりあえず奥まで入ってみたら、シュッ、シュッ、という風を切るような音が聞こえてきた。それは、剣道場で、ここにいるのかもしれない。


少し隙間があいているドアから中をのぞいてみる。そこは、畳になっていて、そのなかで、黒い衣に黒い袴をはいているたけにいがいて、刀を振るっていた。


少しこっちを見た気がしたけど、気のせいかもしれない。そのまま、カメラを出して、シャッターを押す。すると、カシャと言う音とともに、デジカメの画面に刀を振るうたけにいの姿が映し出された。


「ん?写真か?」


[りぼーんにもらったの]


「へえ、小僧にか!ハハハ!楽しそうだな!」


[じゃましてごめんなさい]


「ぜんぜんいいぜ?にしても、随分古い型じゃねえの?それ」


[たけにいたちの、こうこうせいのしゃしんがはいってた]


「高校の?見てもいいか?」


私は持っていたカメラを差し出す。たけにいは、それを手に取るとすぐに写真を見だした。その姿は、今、何の写真を見ているかはわからないけど、たけにいの顔はとっても、懐かしそうで、穏やかな、けれど、どこかさびしげな表情だった。


「ハハ…、懐かしいな」


[こうこうせいにもどりたい?]


「!!…たまに、な。でも、オレは今も楽しいんだぜ?」


いつもの笑みでそう笑ったたけにいはさっきまでのさびしげな物はどこにもなかった。


[ほかにやしきにいるのって、だれ?]


「今日は…、確か笹川先輩と骸以外いるんじゃないか?」


[ありがと]


これいじょう、邪魔するわけにはいかないから、私がここを出て行こうとすると、たけにいから声がかかった。


「写真とったら、またみしてくれな!」


手を振ってそれにこたえて私はそこを離れた。


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あきゅろす。
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