ツナに報告書を出しに行って帰ってくると、そこに紫杏の姿は無く、机の上にいちまいの紙が置いてあった。そこには、 [ちょっといってきます。おやつにはもどるよ] 昨日にも書かれていた言葉。どうやら、俺の目を盗むことに味をしめたらしい。というより、そうとう暇を持て余しているのか何なのか。 「ハア、またやられたな」 *** 今日は、外に行ってみよう。と思って現在玄関まで歩いている。今日も快晴!私は、お母さんが選んだ服を着て今日はちゃんと靴もはいてる。 リボーンにはまた置手紙を置いてきた。今回はお父さんのところに行ってから、ね。 ちょっと、この状況を楽しんでいたり…。 ちょっとしたいたずらってやつですよ。うん。だって暇なんだもん。 「極げーん!!今かえったぞー!!」 え、何、今の声!?その声は、この屋敷全部に響き渡ったんじゃないかと思うほど大きくて、私は聞いたことのない声だった。というか、極限っていったよね?極限って…。 とりあえず、一抹の不安を覚えつつも、声がした玄関のほうへと向かった。 玄関が見えてくると、そこには銀の短髪でスーツを着ていて、鼻の頭にテープをはっている男の人だった。 「ん?お前は誰だ?見ない顔だな」 お客さんかな?お父さんに知らせるべき?リボーンも一緒に来てくれればよかったのに…。自分から出てきたんだけど。 [紫杏です] 「俺は笹川了平だ!座右の銘は極限!!」 ……ささがわさんって熱い。極限というとき、背景に炎が見えたような気がした。 「ああ、そうだ!沢田に報告書をとどけにゃならんのだった」 沢田ってお父さんだよね。 [おとうさんならしつむしつにいます] 「お父さん?俺がようがあるのはお前のお父さんじゃないぞ」 あれ?通じてない?とりあえず、お客さんでいいんだよね?報告書とか言ってたけど…。いいや。とりあえずつれてっちゃえ。 [こっち] 「お、おい!どこに連れていくんだ?」 私はとりあえず彼の手を引いて、執務室まで行く。もしかしたらリボーンもいるかもしれない。というか、この人お客さんでいいんだよね?間違ってないよね?とりあえずお父さんの所に連れて行ったらどうにかなるよね?うん。 私はとりあえず自己完結させてお父さんの執務室まで向かった。 「おお!執務室じゃないか!」 少し感嘆の声をあげている笹川さんを見て、それから手を離して私だけ先にドアに駆け寄る。一応ドアをノックする。 「どうぞ」 中からお父さんの声が聞こえてきたから、背伸びをしてドアの取っ手を頑張ってとって中に入ると、お父さんが執務室の机に向かっていた。 「お兄さん、ずいぶんと早かった…って、紫杏?」 やっと顔を上げたお父さんは入ってきたのが私だということを見ると驚いて椅子から立ち上がった。 「どうしたの?遊びに来たの?」 抱き上げられ、目線が高くなった。その状態で、 [おきゃくさん?] って書くと、首をかしげるお父さん。視線をそのまま扉に向けると、そこから笹川さんが入ってきた。 「笹川了平。推参」 「え、お客さんってお兄さん!?」 え、お父さんのお兄さん? 「おお、お前、紫杏と言ったな?連れてきてくれてありがとな!」 [どういたしまして] 「え、なんで紫杏とお兄さんが一緒に?」 戸惑うお父さん。というか、お兄さんって。似てない兄弟ですね。 「おお、沢田。その子は誰の子だ?さっき玄関であってな。連れてきてくれたんだ」 そうだったんですかとお父さんは言うと、私を抱えたまま椅子に座った。 あれ?私ここにいてもいいのかな?時間を見れば、2時30分をさしていて、もうそろそろリボーンのところに戻らないといけないな。 「綱吉、さっき了平さんが…。あれ?もういたのね」 「おお!麻依!極限に久しぶりだな!」 「おかえりなさい。了平さん。怪我とかしてませんか?」 「ああ、大丈夫だ。麻依も元気そうで何よりだな!」 お母さんも笹川さんと知り合いなのか。というか、かなり親しげ。ということは、お客さんじゃないってことなのかな。 確かめようと、お父さんのことをちょっとたたく。 「ん?」 [ささがわさんはしりあい?] 「ああ、そっか。お兄さんはファミリーの仲間だよ」 ファミリー…。あ、そっかお父さんたちってマフィアだっけ。マフィアって結構物騒なイメージがあったけど、平和だからすっかり忘れてた。 「あれ?紫杏ちゃんいたの?」 うなずく。あ、決して遊びに来たわけじゃないよ? 「おいで!」 呼ばれたのでとりあえずお父さんの膝から降りてお母さんのもとへ。お母さんは私を足に寄りかからせるような感じで引き寄せると笹川さんに言った。 「了平さん。私の子供の紫杏です」 [よろしくおねがいします] 「おお!そうか。麻依の子供だったか!」 あれ?他の人みたいにいつ産んだんだーとかって話にならないの? 「しかし、俺のいない間に産まれていたとはな!極限吃驚したぞ!」 「ハハハ…、いや、私が産んだわけじゃないですけどね?しかも、そんな短時間で子供ができて生まれるわけないじゃないですか」 しかし、笹川さんは聞いていなかったようでお父さんに報告をすると、走ってどこかへ行ってしまった。 「にしても、どうしてここに紫杏ちゃんが?」 「ああ、お兄さんをここに連れてきてくれたんだ。ね?紫杏」 うなずく。 [ささがわさんは、おとうさんのおにいさん?] 「?ああ、違うよ。俺の同級生だった子のお兄さん。昔の癖で今もそのままの呼び方なんだ」 癖なんだ…。 「それより、紫杏ちゃん。リボーンが探してたよ?」 え、まじで?時計を見れば、確かにもうすぐ3時だ。おやつを食べ損ねちゃう!だって、やっぱり、甘いものはおいしいし…。好きだし。 お母さんのもとから離れてドアの方へ。でも、出る前に振り返って、紙に書く。 [おしごとちゅう、おじゃましました!] 「クス、またいつでもおいで?」 ニコっとお父さんは笑ったので、私もうれしくてたぶん笑顔になってると思う。 そして、リボーンを探すためにとりあえずリボーンの部屋へと向かった。 「紫杏。こんなところにいやがったのか」 [おとうさんのところに、ささがわさんがきたからあんないしてた] 「ああ、そういえば了平の声がしてたな」 [ささがわさんね、いつのまにうんだんだーってならなかったよ] 「は?」 [みんな、おかあさんのこどもっていったら、いつのまにうんだんだーとかっていうのにね、いわれなかったの。なっとくしてた] 「フッ、アイツらしいな。よかったじゃねえか。言われなくて」 その言葉にキョトンとしてしまう。私が座ったソファーの前に、珈琲を片手に座ったリボーンは帽子を指でくるくると弄びながら私の表情を見て喉の奥で笑った。 「言われるの嫌だったんだろ?」 あ、そっか。リボーンにはお見通しだったんだ…。私はお母さんたちの本当の子供じゃないから。それは、あまり言われたくない言葉だった。でも、そんなこと言ったら迷惑になるから言わないけど。 「ほら、食わねえのか?」 首を横に振って、おやつの乗った皿を引き寄せる。今日はタルトだった。 (ねえ、麻依。紫杏が笑ったね) (うん。あの子なかなか笑わないもんね?) (やっぱ、笑ったらかわいいよなあ) (そりゃあ、我が子ですから) (ねえ、君たち。親バカ発言してないで仕事してくれる?書類持ってきたんだけど) (あ、雲雀さん。雲雀さんも思いませんか?) (…何が) (紫杏ちゃんの笑顔。かわいいと思いません?) (…ハア。知らないよ(親バカもここまで来るとうざいな)) |