私は、今、かなり恥ずかしいです…。だって、だって、私、見た目は5歳だけど、中身はバリバリ17歳なわけで、他人からみたらそんなもんだろうけど、私から見たらただのコスプレのような雰囲気になってしまうんですけど! 私の格好は、お母さんのチョイスにより、お母さんの肩口にレースのついたタンクトップを着ている。 タンクトップといっても、やっぱり大人用なわけで、そうすると背の低い今の私にとってはスカートのようになってしまう。 こういうのがあるんだったら何も買ってもらう必要はないんじゃないかと思うんだけど…。 って、服装は別にいいの!小さい子の服ってかわいいし…。 ただ、髪型が!! 17歳でうさぎさん結びはないでしょ…。 見た目は5歳だけど中身は17歳だから恥ずかしい。しかも、皆スーツだし…。 お父さんは白いスーツ。リボーンは黒。ランボさんは相変わらず牛柄のシャツを着ていて、獄寺さんはちょっとシルバーアクセサリーのついた服を着ている。 いまさらだけど、みなさんとっても美形なんです。そして、お母さんも負けず劣らず美人なんです。そんな中に私って…場違いにもほどがあるんじゃないかと。 私がいまいるところは、なぜかリボーンに変わってお父さんの膝の上。そして、左隣にはもちろんお母さんで、右隣になぜかリボーン。そして、向かいにランボさんと獄寺さん。 そして、フカフカそうなソファーにカーテンがついている窓。プラス運転手さん付き。 はい、みなさん私の現状お分かりですか?わからない方もいると思いますが、私は今、金持が愛車するという噂の、一般人が到底乗ることのなさそうな車にのってます!車種なんてわからないけど、外観からして黒塗りの胴体の長い車は、高いものだと相場が決まっている。 しかも、中もかなり広いの! 赤いじゅうたんのようなものが敷かれている床。 本当に、私、場違いだな…。 「そんなに楽しい?」 上からお父さんが私の髪をなでながら聞いてきた。それに私はうなずく。 だって、だって、だって、リムジンなんて一生乗れなさそうなのりものだよ!? 窓の外はイタリアの街並みが走り抜けていく。それさえも面白い。 しばらく車はイタリアの街中を走った後、止まった。外からドアが開けられ、皆降りていく。私はお父さんに抱えられたまま車を降りた。 うわー!イタリアだ!よくわからないけど外国っぽい! すっごく綺麗な街並みに、あんぐりと開く口。たぶん、漫画風で言うなら目がきらきらと輝いているだろう。 「クスクス、今度イタリア観光でもしよっか」 ほんと!? 「行きたいところ、どこでも連れて行ってあげるから、考えておいてね」 思いっきり首を縦に振る。だって、観光!外国!イタリア! 絶対に来ることのないと思っていた外国、イタリアにこれたんだ!観光できるなんて夢みたいっ! 「その前に、服だぞ」 リボーンの声によって、皆一つのお店の中に入って言った。 というか、このメンバーで子供服!?似合わない…。それこそ、場違いな気がする。 でも、お父さんに抱っこされているから抵抗することもできず全員で店の中に入った。店員さん、ごめんなさい! 中に入れば、なぜか、ほかのお客さんはいない。そして、私たちを出迎えたのは、ずらっと並んだ店員さんだった。 「Cosa posso fare per Lei?Vongole(いらっしゃいませ。ボンゴレ様」 ずらっと並んだ店員さんはお父さんを先頭に入ってきた私たちに深くお辞儀をして声をそろえてそう言った。 かろうじて聞きとれたボンゴレという単語。 そして、一人前に出てきたのは、ほかの職員と違ってクリーム色のスーツを着て、眼鏡をかけた女性だった。 「Io Lei ha uso esso oggi, e La ringrazia.Esso alcun genere di affari è oggi?」 イタリア語だから、やっぱり何を言っているのかわからない。でも、たぶん営業のための会話だろう。今日はどういったご注文で?とか…。 これで、当たってたら私すごいなあ。 「Pensi ai vestiti di questo bambino oggi.」 「È bambino?」 あ、今バンビーノって言った。バンビーノって確か…、子供だった、はず。子供って…、私のこと?話の内容って私だったりするのかな? 「È così.」 今度、誰かにイタリア語教えてもらおうかな…。話せないけど会話がわかればうれしいし…。 「Poi noi…」 「No, è buono.Perché io La scelgo con noi.」 女の人の言葉を遮るようにしてお父さんは何かを言った後、彼女らは持ち場に戻って言った。 一連の行動がよくわからなくて、首をかしげていると、お父さんがやっと私をおろしてくれた。 「ここの中から好きなものを選んでいいよ」 [どれくらい?」 「好きなだけ」 好きなだけって…。答えになってない! 「よし!選ぶぞー!」 って、お母さんがなんで気合い入れるの!? 「私、自分の子供の服選ぶのちょっとした夢だったのよね〜」 そういいながら、服を見ていく。ほかの人も、それぞれに散らばって服を見ていっていた。 私も、いろいろと疑問はあるけど気にしないことにして私も服を見て歩く。 正直、17歳の私にとって、かわいいだけでしかない。だから、自分が着るとなると…、どうしよう。 かわいいけど、かわいいけど…、自分が着るのか!?こういうのを!? もう、12年前に卒業したのに…。 「ねえ、紫杏ちゃんはどんなのが着たい?」 いや、聞かれても… [わからない] 「だよねー。紫杏ちゃんも好きに見てきていいよ。気に入ったのあれば、持っておいで?」 うなずく。でも、たぶん、気に入ったのってほとんどなさそうなんだけどなあ。全部、かわいいんだけどね? 一通り見て回ってから、とくにすることもなくなって、壁際にあった椅子に座っておく。大人たちは、真剣に選んでくれている。 でも、言っちゃ悪いけど、スーツでここってミスマッチ! 「紫杏さん。どうかしましたか?」 声がしたほうを見れば、ランボさんがいた。首を横に振ると、少し首をかしげてランボさんは、私の隣に腰掛けた。 もじゃもじゃの髪に、緑のきれいな瞳をしているランボさんは、やっぱり、こういう場所にあまり似合わない。 大人の色気っぽいものを醸し出しているから。 [ランボさんはなんさい?] 「オレは15歳ですよ」 [じゃあ、おとうさんたちは?」 「ボンゴレは…確か、24じゃないかと」 24ってことは、17歳だと、7歳差!?兄弟とかのほうがあってるよね…。まあ今は19歳差だからそんなもんだけど。 「他の皆さんも似たようなものですよ」 [りぼーんも?] 「リボーンは…」 そのあとの言葉が続くことはなく、突然ボワンという音が店内に響いたかと思うと、ランボさんが煙に包まれていて、晴れたころにはそこにランボさんの姿はなく、牛柄の服に角を生やした男の子がいた。 「ここはー、どこだー」 男の子は、口に指を当てて、あたりを見回している。年齢的には今の私と同じぐらいだと言ったところだろう。 それにしても、ランボさんはどこに言ったんだろう…。というか、今、明らかに爆発っぽいものが起きたよね?大丈夫なのかな。何かのマジックショーとか? 「ん?誰だ!おれっちは、ランボさんだもんね!ガハハハハ」 ランボさんと同じ名前だ!男の子は、もじゃもじゃの頭の中に手を突っ込んで何かを探す。 「ん?これじゃなーい」 出てきたのは、なぜか金づち。男の子はそれを再び中に戻す。 「ん〜ん。これじゃない」 次にとりだしたのは、手榴弾っぽいもの。たぶんおもちゃだけど、それも知れっとした顔でそのまま頭の中に戻す。 男の子の頭の中は四次元ポケットみたい…。 「ん〜ここかなあ、ここかな〜。あ、あった!」 頭の中から取り出したのは、棒付きの飴。そして、それを満面の笑みで口に入れた。 「?欲しいか?欲しいのか?ガハハ、あげないもんね〜!これは、ランボさんの飴だもんね!」 誰も、ほしいって言ってないんだけどな…。というか、性格悪いな、この子。ランボって言ってたけど…。 「そういえば、お前誰だ?」 [紫杏っていうの] 「ランボさんかしこいから字も読めるもんね!紫杏って書いてある!」 [わたしのなまえだよ] 「ふーん。紫杏っていうのか。ランボさんは、ランボさんだ!」 [しってる。さっききいた] 「なんで、紫杏は書いて話すんだ?] [こえがでないの] 「ふーん」 あ、興味なさそう。ランボはもう棒付き飴を食べ終わっていて、その棒をまた頭の中に戻した。 あの、頭の中、本当にどうなってるのかな…。 「紫杏!!今の音って!!」 聞こえた声は、お父さんのもので、すこし焦りが含まれていた。そして、駆け寄ってきて、ランボを見てうなだれた。 他の皆もぞくぞくと集まってきて、ランボを見てみんなして溜息をついて行く。 「紫杏、怪我とかしてない?」 していない、と首を振る。そうすれば、安堵したように胸をなでおろした。 「ツナだー!ツナだー!ガハハハ」 「ランボ、静かにしろ」 「ベーだもんね!おれっちは今からここを征服するんだもんね〜」 征服って、ここ服屋だよね?征服なんてしてしてどうするんだろう。というか、この子に征服なんてできるの? 「もう5分たってるのに戻らないね…」 「故障でもしたんじゃねえか」 リボーンの言った故障という言葉に首をかしげる。お母さんが言った5分にたいしてもよくわからない。 「ハア…、めんどくさいことになった」 お父さんはまた溜息をつき、うなだれた。何がめんどくさいのか、とか、この子が誰なのかっていうのはよくわからないけど、とりあえずあまり好いていないことは確かみたいで、でも、みんな知り合いだということも確かだ。 [らんぼとしりあい?] お父さんのスーツを引っ張って聞いてみる。 「紫杏も知ってるよ。ランボの10年前の姿だからね」 10年前?って、ことはランボさんが15歳だから5歳のときがあの子?全然違う…。というか、なぜ私みたいに若返ってるの? そして、ランボは店の中を走り回り始めた。獄寺さんがそれを追いかける。 「こら!まちやがれ!」 「やだもんね〜ランボさんがお前なんかにつかまるか!」 「ああ!?んだとこら!」 「こらっ!ランボ!」 お父さんがランボに向かってどなった。それにびっくりしたランボは立ち止まり、おどおどとお父さんをみる。 お父さんは立ち止まったことにそっと溜息をついてから、ランボに近づいていく。 「店の中で走っちゃだめだろ!」 「お、おれっち悪くないもんね」 「おめえが悪いんだよ!」 獄寺さんが、おもいっきりランボの頭にげんこつをくらわせた。 「が・ま・ん…。う、わあぁぁぁぁっぁん!!」 ランボは一度涙ぐんでそのあと本格的に泣き出した。しかも、頭の中にある、あらゆるものを獄寺さんに向かって投げる。 でも、それは店の四方八方に散らばっていく。幸い、私はそこより離れたところにいたから届かなかった。 「わっ!ちょ、ランボ!やめろって!」 「うわあぁぁぁぁん!!」 お父さんの静止も聞かずにランボは投げ続ける。でも、頭の中にあるものにも限界があって、無くなったみたいで、しばらく探っていた後に、諦めて終わり、かとおもったら次は牛柄の服の中に手を伸ばした。 そして、中から出てきたのは、手榴弾。 嫌な予感がした。それはすぐに的中となって、ランボはそれを店の中でどんどん投げ始める。 手榴弾は地面におちるとほぼ同時に爆発し、店の中のものを破壊していく。さっきと同様、私のところまではなかなかこなかったけど、爆風がすごくて、舞い上がる土煙りにせき込む。 爆風が痛い。 腕で顔をかばうようにしつつ、耐えきれずに目をつむる。 まだまだ続く爆風に腕の隙間からのぞき見るようにして見てみると、上の方から私の方に飛んでくる何かが。 嫌な予感がした。 本能が逃げなきゃいけないと命じる。 でも、人間こういうときは体が強張ってしまうもので、向かってくる手榴弾を呆然とみたまま立ち尽くした。 「紫杏!」 「!!チッ!」 飛んでくる手榴弾を見ていたら、横から何か黒い影が遮って、発砲音とともに浮遊感を感じた。 怖くてそのまま縮こまるようにぎゅっと体を固くする。 爆音が止んだと思ったら、静かになる店内。 耳元で荒い息遣いが聞こえてきて、その息遣いは一度落ちつけるように大きく息を吸うとゆっくりとはきだした。 「大丈夫か」 上からお父さんの声が聞こえた。でも、その声はいつもとトーンが少し違う気がする。気になってゆっくりと目を開けてみれば、お母さんとお父さんがいた。でも、お父さんの額には炎がともっていて、瞳もオレンジ色になっている。 「私は大丈夫。ありがと、綱吉」 「紫杏は」 すっと向けられた瞳は、どこか悲しげだった。私は首を横に振って大丈夫だと伝える。 店内を見ると、爆弾によって店内はあられもない姿へと化していた。 ゆっくりと地面が近づいている。お父さんは私とお母さんをそっと地面に下ろすと、額の炎がすうっと吸い込まれるように消えて行った。それと同時に瞳の色ももとの鷲色の瞳に戻った。 「大丈夫か」 近づいてきたリボーンの手にはなぜか銃が握られていた。 「ああ。リボーンが手榴弾を打ったおかげで少し時間が稼げたからね」 「ハッ、俺を誰だと思ってやがる」 「リボーン君ありがとう」 「怪我がなくてよかったぞ。紫杏もな」 そっと頭を撫でられていまだに強張っていた体の力がすっと抜ける。 はあーと息を吐き出す。 皆に見えないように、右手で左手を押さえつける。震えている。 怖かった。 死ぬかと思った。 「ランボ…」 お父さんはゆっくりとランボに近づく。獄寺さんは逃げようとするランボを押さえつけている。 「う…、お、おれっち悪くないもんね…。おれっちのせいじゃないもん!」 「ランボ。悪いことしたらどうするんだ?」 目の前に行くと、すっとしゃがみこんで両頬を包み込み顔をそ向けられないようにした。 「お、おれ、おれっちのせ、せいじゃなっ」 「ランボ!」 「う…、ご、ごめんなさ、い」 「そうだな。ちゃんと謝るんだ。ほら、紫杏にも謝っておいで。怖い思いさせたんだから」 「うん…」 とことこと近づいてきたランボ。私はすっと手を後ろにやる。 「ご、ごめん…」 泣きべそをかいて鼻水を垂らしているランボ。 [へいき] 「グス、お前いいやつだな。友達のしるしに、これやる!」 そう言って、差し出されたのは、頭の中から出てきた飴玉だった。しかもブドウ味。本当に子供でちょっとかわいいなあなんて。 ありがたく受け取ってポケットに入れる。後で食べよう。 と、そのとき、再びボワンという音とともにランボの周りに煙が立ち込め、晴れるころにはランボさんがいた。 「ふう、やっとかえってこれましたか。みなさん昔の自分がご迷惑を…、これは?」 「ランボがやったことだよ。だから、ここの修理代全部ランボにつけとくね」 「えっ!そ、そんな!ボンゴレ!?」 「それに、紫杏と麻依も怪我しそうになったしね」 「そ、そんな…」 「ま、当然だな」 「うう…が・ま・ん」 ということで、ここの修理代などはすべてランボさんから引き落とされるらしい。うなだれて涙を流しているランボさんは少しかわいそうに思えた。それにしても、10年でこれだけ色気がつくんだから、世のなか恐ろしいと思う。 「今日は、もう帰るか。あとで選んだもの全部頼んどくよ。もちろん全部ランボのおごりで」 「ボンゴレ!?そ、そこまで…」 「あたりまえだろ?」 お父さんの背中から何か黒いものが出てきているように思うけど、気のせいだということにして目をそむけた。なんとなく突っ込んではいけない気がする。 「じゃ、帰ろうか」 *** 屋敷に帰り、どっと疲れた体をもらった部屋のベッドに投げだす。 本当に疲れた。なんか、5歳になってから絶対に普通はしないような体験ばかりしている。しかも、どの体験にしても死にそうになってばかりだ。ここに着てから1日もたってないけど、もう何日もたったかのような濃い時間を過ごしている。 スケッチブックを取り出して、そこにペンを走らせる。 思い出すのは、今日のお父さん。あの、額に炎をともした時のお父さんは別人みたいだった。温かいけど、少し怖い…。 でもかっこよかった。 あと、瞳がきれいだった。炎と同じ色。 「紫杏?ご飯だって。入るよ」 ドアのところを振り向けば、もうすでに入ってきているお父さん。というか、私って返事できないよね…。入ってきてほしくない時どうすればいいんだろう…。 「何描いてるの?」 [おとうさん] 「オレ!?」 前のページに描いたお父さんを見せる。 「ああ、超死ぬ気モードのときの俺か」 [はいぱーしぬき?] 「あまり、紫杏の前ではなりたくなかったんだけどね。ならないですんだほうが全然いい…」 自嘲するように笑ったお父さんは私の頭をひとなでして、私を抱き上げた。 「さ、隼人が昼食をつくってくれたんだ。食べに行こう?」 返事も何もすることなく、お父さんを見つめる。でも、それを無視するかのように顔を逸らし、スケッチブックとペンを手に取るとこの部屋をでてリビングに向かった。 廊下から見える景色は、この屋敷の庭で、どこかの庭園のように広くてきれいだ。今も、青空の下青々と生い茂っている。 「庭?あとで行きたいの?」 窓に近寄ってくれたお父さんは、窓に手をついて一緒に外を見た。噴水のところには小鳥が水浴びに来ている。 「行くときは帽子をかぶって行こうね。日焼けはあまり良くないから」 今度はうなずいて返す。それをお父さんは確認してから再び歩き出した。 そのあとは、獄寺さんが作ったご飯をおいしく頂きました。 |