胸が締め付けられるような感覚に、私の目からは涙があふれて止まらなかった。 その涙は下に落ちると小さな波紋を作って徐々に広がっていく。 私は気づいたら白い空間にいた。 ここに見覚えがあった。 私が死んだあとに見た場所であり、目覚める前に見た場所だ。 「ここは、ハザマの世界」 そこには私がいた。5歳の私だ。 「ハザマ」 「そう。世界と世界をつなぐハザマの世界」 「どうして、ここにいるの?」 「これが、愛だったから」 「愛?」 「私は、あの世界にいたの」 「あの世界」 「貴方がこの前までいた世界。私はそこで生まれた。親は死んじゃって、実験台にされて、苦しくて逃げ出した先で死んだの」 「……貴方は私じゃないの?」 「私は貴方よ。貴方は私でもある。私たちは決して交わるはずのなかった違う世界の同じ魂」 「同じ魂」 「でも、あの人が私たちを合わせた」 「あの人?」 「愛を与えてくれた人」 「愛……」 「ねえ、私」 「なあに、私」 「あなたはあの世界にいきなよ。私は愛についていく」 「あの世界って」 「貴方を待っている人がいる」 「貴方は行かないの?」 「私は、愛についていく」 「それって……」 「次は、私に愛が与えられることを願って」 「………貴方は私なのね」 「そう。私は貴方」 「私はあの世界に行けばいいのね」 「そう。あの世界であの世界の人と関係を結んだのは貴方だから」 「貴方が私の代わりに逝くのね」 「そう」 「……さようなら、私」 「さようなら、私」 「……パパとママに、愛してるって伝えて」 「………ここは愛が結んだ世界。愛が生み出した世界。ここは彼女の中の世界。ここは彼が作りだした世界。ここは彼女と彼が貴方へ送る最後の贈り物」 「私は、ちゃんと愛されてたんだね」 「羨ましいわ」 「貴方も愛されてるよ。この世界で」 「そうね。愛はあったかいのよ」 「「さようなら、私」」 |