隠れ穴の落ち度

ぶらぶらしていると、5歳児となって私と同じくらいの身長になったランボと出くわしてしまった。


現代の彼は多少泣き虫で気弱なところはあるが、紳士で優しくいろいろと気遣ってくれるし、遊んでくれる。でも、この5歳児の彼は、当たり前なのだろうけどいたずらっ子だ。かかわるとろくなことにならない。特に今日のようにお客さんが来ているときは。


「あっれー。紫杏がいるー!ガハハ!よし!ランボさんと遊ぶんだもんね!」


だから、回れ右をして引き返そうと思ったのだ。しかし、見つけられ、声までかけられた挙句、進行方向に回り込まれてしまってはどうしようもなくなるというもの。腰に手を当て小さな胸を精一杯のけぞらせて大仰に笑うランボを見て、リボーンや隼人に怒られないといいな、と思った。


お父さんはランボとしでかしたことについてはあまり怒らないのだ。ああ、またかと頭を抱えるくらいであきらめているっぽい。


[いつからいるの?]


「知らなーい。気づいたらイーピンもツナもいなくなってたんだもんね」


きっとこの様子だとまた10年バズーカーとやらは故障しているのだろう。鼻をほじくりながら間抜けな顔をしているランボを見て、今日は暇だしあきらめようと決心した。


[なにしてあそぶ?]


「んーとね、んーとね。かくれんぼ!」


この広い屋敷でかくれんぼなんてして、果たしてランボが帰るまでに終わるのか。一瞬そんな考えが頭をよぎったけど、大人ランボが戻ってきたらそれはそれでいいのかもしれない。リボーンに見つかる前ならなおさらだ。リボーンは子供ランボを特に毛嫌いしているらしく、見つけた瞬間そっぽを向きながらも、向かってきたランボを返り討ちにするのだ。


一応手加減はしているんだけど、毎回のごとくリボーンへと無謀にも向かっていくランボを見ているとだんだん哀れになってくる。いい加減学習すればいいのに。


リボーンは、大人ランボに対しては子供ランボより態度が柔らかい。といっても、発言は辛辣なのだが、ランボが立ち向かってくることが少ないため暴力沙汰になるケースは少ないらしい。


「じゃあ、ランボさんが鬼するから、紫杏は隠れろ!」


指を目の前に突き出され、のけぞるようにしてその指から逃れつつうなずく。


目をつむって数えだしたランボをしり目に私は長い廊下を走り出した。


リボーンたちは談話室にいるはずだし、とりあえずそこには近づかなければ大丈夫だろう。扉が開いている部屋がありそこに入れば中央に円卓と8つのイスが置かれていた。簡易キッチンもつけられたその部屋には、窓から陽光が入り、円卓の上に飾られた花を照らしている。


白いテーブルクロスがかけられ、カフェのような雰囲気だった。


扉も開いていてわかりやすいからここで隠れることに決めた。


この部屋にはもう一つ扉があり、そこを開けば倉庫になっているようだった。中には段ボールや埃をかぶっているよくわからないものが多数あり、その奥に少しスペースを見つけたためそこに隠れることにした。


薄暗いが、扉を開けておいたため隣の部屋から明かりが入ってくるから不安にはならない。


あとはランボが来るか、時間がたつのをまとう。1時間くらいたって、ランボが見つけに来なければ出ていけばいいのだ。


段ボール箱と段ボール箱の間に小さく空いた空間は、私がぴったりおさまれる隙間だった。後ろにも高く積まれた荷物があり、寄りかかってもびくともしない。まるで小動物の巣のようだと思いながら、この狭い空間が妙に居心地がよかった。


それからしばらくは周りを観察していたのだけど、だんだんと暇になり眠くなってきた私は、抗うことなく眠りの世界へと堕ちて行った。


だから、気づかなかったのだ。


隣の部屋の8つのイスが埋まっていったことも、その人たちによって扉が閉められてしまったことも。


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あきゅろす。
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