七色の光をそろえてみる

今日は朝から屋敷があわただしかった。普段あまり見ないメイドさんや執事さんたちが走り回っている。そして、お父さんたちも忙しそうだった。任務に行くでもなく、どこかと連絡を取り合っては何やら言葉を交わしている。


聞き取れないわけではないが、すぐに走り去っていくため会話の内容を理解することはできなかった。


そして私は、メイドさんに談話室から追い出され一人屋敷内をぶらぶらしている。


今日、何かあるのは確かだが、それがなんなのか知らされていない。まあ、こうやってぶらぶらすることを許されているんだから危険なわけじゃないんだろう。たぶん。


リボーンはリボーンで何か難しい顔をしてやはりどこかに電話をかけていた。


玄関へ辿りつくというところで、お父さんたちがあわただしく走ってきた。驚いて足を止めると、どうやら私には気づいていないらしい。緊張した面持ちで扉を開いていた。私はその数メートル後ろでその光景を眺めている。


瞬きした間だった。


今まで誰もいなかったはずの玄関には、深紅のチャイナ服を着て、おさるさんを連れた雲雀さんがいた。しかし、それはすぐに似ているだけだと気づく。長いらしい髪は後ろで三つ編みにされている。少し大きいチャイナ服によって、彼の手は隠されていた。


「お久しぶりです。沢田さん」


「フォン、久しぶり」


「お邪魔させていただきますね」


両袖口を合わせて、フォンと呼ばれた彼はとても丁寧に頭を下げた。


「リボーン、私が一番ですか」


「ああ」


「そうですか。ではどちらに行けばいいですか?」


「それは俺が案内するぜ?」


今ここに就いたらしいたけ兄がフォンさんに声をかける。そして、再び頭を下げ、謝謝と言った。中国語でありがとうだと思う。


彼が来るからこんなにあわただしかったんだろうか、と首をかしげたところで、次の到着者が来た。車が止められた音に再び玄関口へと視線をやると、そこには顔にあざのある人が立っていた。ゴーグルをつけ、布を肩に巻きつけている。


「ラル。こんにちわ」


「ああ。相変わらずのようだな」


ラルと呼ばれたその人は、ゴーグルを頭の上まで上げた。頬まである顔の痣。しかしそんなの気にならないほど、その人は凛々しく美しい人だった。


「うん。さっきフォンが来たから、今は談話室にいる」


「あいつか。ならオレもそこで待たせてもらう」


「ラル、さん…、こっち」


ラルさんを案内するのはクロームさんらしい。道を指さし、先導するように歩き出すクロームさんに慣れたようにラルさんは歩き出した。


それを見送っていると、いきなりくるっと振り返った彼女とばっちり目があった。驚いて固まると、彼女は数秒私をみたあと、またクロームさんへとついて行った。


吃驚した。


次にやってきたのは、ヘリコプターの音だった。プロペラが奏でる音と、玄関口から舞い込んでくる風に驚く。


「…相変わらずだね」


「チッ、三下が」


お父さんとリボーンの会話に首をかしげると、拡声器による甲高い声が聞こえてきた。


「ボンゴレ!そしてリボーン!このスカル様が来てやったぞ!」


どうやら次に来たのはスカルっていう人らしい。そして、リボーンに対して、あんな態度をとれるなんてすごい人だな、と思っていると、突然爆音が響いた。


ここからの位置じゃ何も見えなくて、何事かと思っていると、玄関に見知った姿が立った。


「パシリのくせに目立ち過ぎだぜ、コラ!」


そこには迷彩服に身をまとい、肩に大きなマシンガンを担ぎ、片方の手でヘルメットをかぶりライダースーツを着込んだ人の襟首をつかみ引きずっているコロネロさんがいた。


何があってそうなったのかわからないが、コロネロさんのマシンガンから煙が立ち上っているところを見ると、さっきの爆音は彼らしい。


「コロネロ、そいつもそのまま連れてけ」


「ああ、わかってるぞ!コラ!」


「おお!師匠ではないか!」


「ん、了平か。よく鍛錬しているようだな」


「師匠は俺がお連れするぞ。いいな、沢田」


「はい。積もる話もあるでしょうから、お願いします」


「ああ」


了兄のお師匠さんらしいコロネロさんは、そのままスカルさんを引きずりつつ談話室へと向かっていった。誰も、スカルさんが引きずられることに突っ込まないところを見ると、彼はそういう扱いを受ける人なんだろう。簡単にいうとランボみたいな。


次は、私も知っている人だった。


お父さんたちがみんな相好を崩し、張りつめた雰囲気が緩んだ。


「沢田さん。お久しぶりです」


玄関口に立ったのはユニさんだった。そしてその隣にはガンマさんもいる。


「ユニ。この間は、来てくれてありがとう」


「いえ。今日も、場所を貸してくださってありがとうございます」


「俺たちのことは気にしないで」


「沢田。姫を預けるぞ」


「はい」


「では、ガンマ、送ってくれてありがとうございました」


「姫、こちらのことは任せてください]


ガンマさんはユニさんの手に恭しく口づけをすると、一礼して去って行った。残されたユニは少し頬を赤く染めながら嬉しそうに笑う。そして、彼女を案内するのはリボーンだった。


「行くぞ」


「はい、リボーンおじさま」


リボーンにつれられ、ユニさんも談話室の方へと向かっていく。


「やれやれ。なんだって僕がこんなところに来なくちゃいけないんだい」


瞬きをする間にいつのまにかマーモンが玄関に立っていた。玄関に残っているお父さんと隼人は大して驚いた様子もない。


「マーモンか」


「僕は勝手に行かせてもらうよ」


「ああ」


「それとボスからの伝言だ。請求書は受け取らねえってさ」


「………やっぱりか…」


「ま、妥当だろうね」


「テメエっ、ありゃ、そっちの王子とカエルがわりいんだろうが!」


「そんなの僕は知らないよ。名誉棄損で慰謝料を請求するよ?」


「ああ!?」
 

「やれやれ。私は来る場所を間違えたかな」


マーモンの後ろから現れたのは、ぼさぼさの髪に、丸眼鏡をかけ白衣を着たどこかの科学者かお医者さんみたいな人だった。


「ヴェルデ」


「私はくだらない言い争いをするために来たのではないんだが」


「んだと!テメエ!こっちはわざわざ場所を貸してるんだぞ!」


「場所などどうでもいい話だ。要は邪魔が入らず話ができればいいのだからね。私は君と違って暇ではないのだ」


「知るか!」


「隼人、落ち着いて」


「十代目…」


「ヴェルデ、マーモン。他は皆集まってる。案内するよ」


「さっさとしてくれたまえ」


「チッ、君と一緒なんて本当についてないよ」


「おや、それは私のセリフだ。もっとも私は君に限った話ではないが」


眼鏡を中指で押し上げたヴェルデさんは静かにマーモンと言い合いながらお父さんたちと談話室の方へと向かっていった。


どうやらこれで全部らしい。


赤いチャイナ服を着たフォンさん。顔にあざがあるラルさん。ヘルメットをかぶったスカルさん。リボーンと悪友のコロネロさん、リボーンをおじさまと呼ぶユニさん、お金大好きなマーモン、白衣を着たヴェルデさん。


この7人がどういう理由で集まったのかわからないけど、お父さんたちは場所を貸しただけということはきっとお父さんたちは関係ないんだろう。だったらリボーンだろうか。


とりあえず、しばらくはリボーンにかまってもらえないかもしれないなと思い、今日はどうやって暇をつぶそうかと考えながら私は踵を返し談話室とは反対方向へと向かった。


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