灰かぶり姫もご招待

先週のザンザスさんの誕生日パーティーに引き続き、今日はお父さんとリボーンの誕生日パーティーだ。


ディーノさん率いるキャバッローネと、昔から何かとかかわりを持っているらしいジッリョネロというところ、ほか5つほどのファミリーが来るらしい。


だから、いつもより小さなパーティーだよとお父さんは笑っていた。といっても、パーティーというものは、以前お父さんたちの任務でついて行った御令嬢のパーティーしかないため規模がいまいちよくわからない。


あの時は、人質にされたりと大変だった。


そこまで昔のことじゃないのに、なぜかひどく懐かしい。


リボーンとお父さんの誕生日には、リボーンには要望通りブランデー入りチョコケーキを。お父さんには、お母さんと共同でイチゴのショートケーキをつくった。


リボーンの誕生日にお父さんにも渡したら、毎年毎年自分の誕生日よりリボーンの誕生日を優先されると嘆いていたから、来年はちゃんとお父さんにはお父さんの誕生日の時にあげようと思う。


「紫杏!」


呼ばれて振り返ればそこには正装をして胸ポケットには花をつけた隼人がいた。


「おめえ、こんなとこで何やってんだよ!」


[ひま]


「準備は!?」


[あとくつはくだけ]


「ったく。いい加減靴ぐらい履いて生活しやがれ」


悪態をつく隼人に思いっきり首を振って見せる。それを見て、盛大に溜息をつかれたがこればっかりは譲れない。


別に、毎日メイドさんが掃除してくれているおかげで塵ひとつ見当たらないからどこをどう歩いていても平気だと思うのだ。


「おら、戻るぞ。もうすぐ跳ね馬が来る」


あれ、もうそんな時間なんだ。


腕につけられた銀の時計を覗き込みながら、隼人は舌打ちを一つ。そしておもむろに私を抱き上げると踵を返した。


抱き上げられた隼人の腕の中は、いつもの煙草の匂いのほかに甘い匂いもした。それが不思議で隼人の洋服に鼻を近づけて匂いを嗅いでいるとその正体を教えてくれた。


「香水だ。そんなに匂うか?」


リボーンとはまた違った香り。リボーンのは珈琲の匂いも混じってちょっと大人っぽい香り。でも、隼人のは、甘いと感じさせる匂いだった。大人の色香にプラスされてなんともいえない色気をだしている。


ボンゴレの幹部、というより、私が出会ってきた人たちは世間一般でいう美形だ。普通の人はほっとかないだろう。さらに、こんな風にパーティー用に正装していると、どこからどう見ても王子様とかそういうのが当てはまる。


「あ?なんだよ」


ただし、隼人の場合はかなり目つきが悪いけど。お父さんの前だとまるで忠犬のように素直になるのに、なぜほかの人にはこんなにも柄が悪くなるんだろうか。


なんでもないと首を振れば隼人もさして気にならないことだったのか、それ以上何か言われることはなかった。


そのあと、隼人によって強制的に部屋へと連れ戻された私は、しぶしぶ低いヒールになっている靴を履いた。


ちなみに、隼人は私を部屋に放り込んだ後、まだ準備があるとか言ってそそくさと出て行ってしまった。


全身鏡に姿をうつすと、そこにはいつものラフなかっこうではなく、子供用ドレスを身にまとって、髪も巻かれている私がいた。


前じゃ考えられなかったその姿に、ちょっと気恥ずかしくなる。何度か鏡の前で変なところがないかを確かめて、部屋をでた。低いとは言ってもヒールなため、歩きにくい。気を抜くと足をひねってしまいそうで怖いため、自然と慎重に歩いてしまう。


とりあえず、どこにいけばいいのだろう。


すぐ近くのリボーンの部屋を訪ねてみるも、そこには誰もいなかった。


じゃあ、お母さんの部屋に行ってみよう。確か、お母さんはパーティーが始まるぎりぎりまで部屋で体力温存しているはずだ。


そうと決まれば即行動。


階段へと足を向けた私は、階段を前にして立ち止まった。


そう、階段だ。


このいつもとは違う足の状況に、登れるか不安になる。足を滑らせて落ちそうになった時の恐怖はまだ鮮明に残っているのだ。私の天敵だ。


片足を上げた体制はひどく不安定なのだ。


まるで、私をあざ笑うかのように見下ろしてくる階段。それに悔しくなりながらも、階段をにらみつける。


隼人に言われて靴を履いたけど、パーティー会場で履いてればいいんだから、別にいいよね?


なんとなく周りを見回して誰もいないことを確認してから、ヒールを脱いだ。それを手に持って、いざ、階段へ。


でも、思ったよりスムーズに昇れた。身長が伸びたのか身体能力があがったのか。たぶんどっちもだと思う。最近では、前は背伸びしないと届かなかったドアノブが届くようになってきたし、重い扉もそこまで苦じゃなくなった。


お母さんたちの部屋の前にたち、一応ノックするの、中からハルさんの声が。扉をあけてみると、ベッドわきに二人で座っている姿があった。


「紫杏ちゃん。どうしたの?」


[ひま]


「ふふ、おいで」


私の解答に笑みを漏らした後、お母さんはその両手を広げてくれた。だから、私はお母さんのそばへとかけよると、抱き上げて、ベッドに座らせてくれた。


「そういえば、紫杏ちゃんのこと、ハル何も知らないです。どうやって出会ったんですか?」


「紫杏ちゃんは綱吉が連れてきたのよ」


そういいながら、お母さんはゆっくり私の頭を撫でてくれる。その優しい手つきに、猫のように目を細めた。


「ツナさんが!?やっぱり、誘拐っ!」


「私も最初そう思ったんだけどね。いいのよ。紫杏ちゃんがどんな生活をしてきてても、もう私の娘に変わりないんだから」


「麻衣ちゃん、もうすっかり母親ですね」


そのあとは、ハルさんとお母さんが咲かせる昔話を聞いていた。なんでも、中学時代はハルさんはお父さんが好きで、お父さんは京子ちゃんという了兄の妹さんが好きだったとか。見事な三角関係だったけど、それは高校に入って一変する。


高校で、お母さんと出会ってお父さんはお母さんが好きになって、お母さんもお父さんが好きになって、ハルさんはお母さんならとあきらめたらしい。それからも、普通に友好関係が続いているんだから、ハルさんは強い人だと思う。


昔のことを話すハルさんとお母さんはお互いどこか恥ずかしそうだった。


[おとうさんもてもて]


「そうなんですよ!でも、ツナさんなかなかはっきりしてくれなくて大変だったんですよね」


「うん。しかも、高校に入ってから結構モテちゃってね。それで、優しくて断れないからこっちはやきもち妬きっぱなし」


「紫杏ちゃん。紫杏ちゃんは、ツナさんみたいな人を選んじゃだめですよ!」


ずいっと顔を近づいてくるハルさんの顔は迫力満点だった。というか、5歳児に言うセリフじゃないと思うのだけど。


「おい、ハル。紫杏に何吹き込んでるんだよ」


あきれたようなお父さんの声に振りあけると、扉に寄りかかって、ため息をついているお父さんがいた。お父さんは、白いスーツに身をつつんでいる。


「麻衣、みんな集まったからそろそろ行くけど大丈夫?」


「大丈夫よ。あっちにいったらなるべく座ってるから」


「そう。無理するなよ?」


「うん」


「大丈夫です!ハルがしっかりついてますから!」


胸を張るハルさんに、お父さんが小声でだから心配なんだとつぶやいていた。それに気づいていないらしいハルさんは使命感に燃えている。


「紫杏は靴を履こうか」


[はいたら、かいだんおりれない]


「あー、階段ね。大丈夫。もうすぐナイトが来てくれるから」


ナイト?と首をかしげると、グッドタイミングというかなんというか、扉が開いた。そしてそこに立っていたのは、やっぱりリボーンだった。


「お待ちかねだぞ」


「ああ、今いく」


「紫杏、お前はこっちだ」


手招きされて近寄ると、リボーンに抱き上げられる。リボーンの格好はいつもとほとんど変わらないスーツ姿だった。やっぱり、そのまま?と思ったけど、帽子の上にのっているレオンは首に蝶ネクタイをつけていてパーティー仕様だった。うん、かわいい。


「しばらくは、あいさつ回りだ。会わせたい奴がいるからな」


会わせたい奴という言葉に首をかしげると、会ってからのお楽しみだと言われた。とりあえず、そのあいさつ回りをしたあとは基本自由らしい。一応信用できるような身内しかいないから、どこにいようと危険はないだろうとのこと。


「一応ネックレスはつけとけ」


そういわれて、首元をみると、ご令嬢のパーティーのときにお守りとしてもらったネックレスがきらりと光った。GPSがつけられているらしい、これ。デザインがかわいいから気に入っている。


「さあ、いこうか」


お母さんの腰に手をまわしてさせているお父さんが私たち二人に笑いかけた。それを合図に、パーティー会場となっている応接間へと向かった。


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あきゅろす。
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