懐かしき鉄砲の巻

談話室にて。


今日一緒にいるのはベルとフランとマーモン。


4人で談話室でのんびりしていたが、暇だねという話になり何をしようかとみんなで話し合っていた。


そんなとき、話すことのできない私は、みんなの意見を聞きながら何気なく机の上に置かれている新聞を手に取った。


そういえば、新聞で兜とか、鉄砲っていうんだっけ?をつくったりできたよね。


と思いながら、一人もくもくとそれを作ってみる。


っていってもそんな複雑なものではないからすぐにできて、それを持って満足げにうなずいてみる。


私が作ったのは兜ではなく鉄砲の方。


鉄砲って呼び方であっているのかはわからないけどね。


思いっきり上から下に振ったら、パンッという破裂音のような音がするちょっと楽しいやつだ。


みんなが話している中、私はそれが本当になるか試したくなって、椅子に立ち上がってから、思いっきり振ってみた。


パンッ!という音が想像通りなって、ちゃんと作れていたことにうれしくなる。


と、そこでみんなの話し声がやんでいることに気付いて周りを見回すと、みんな私の方を見ていた。


何?と思って首をかしげると、3人は一緒に溜息を吐き出していた。


「…紫杏、今の音はその新聞かい?」


マーモンのちょっと脱力したらしい言葉にうなずくと、再び溜息が返ってくる。


「紫杏がボスに感化されたのかと思ったし」


「本当に驚きましたー。紫杏、あのおこりんぼみたいに銃を振り回しちゃだめですよー?」


「つーか、なんだよそれ。なんで、そんな音でんの?」


私は、新聞を一度広げて、もう一度折って見せる。そして、もう一度振って見せるとやっぱりそれは大きな音が鳴った。


「なるほど。日本の折り紙、だね」


「ししし、俺もつくってみよーっと」


どうやらみんな暇つぶしにはちょうどいいと思ったみたいだ。


まあ、みんな暗殺者だけあっていいといっていいのか、なんなのか、私がつくったのを一回見ただけで覚えてしまったらしく簡単に作ってしまった。


そして、私がしたみたいに腕を振ると3人のところから一気に音がなった。


「これ、本当に銃声みたいですよねー。形は奇妙ですけど」


「しししっ、いいことおもいつーいたっ」


至極楽しそうな声音のベルは、いたずらな笑みを浮かべた。絶対に何か悪いことを考えているとわかるその顔に、標的にされるであろうスクかレヴィに同情した。といっても、止めることはしないけど。








マーモンが私を抱いて扉の影にいる。


私たちの目線の先には、気配を消してにやりと口元に笑みを浮かべるベル。


そして、その手には、私が作り方を教えた新聞の鉄砲。


抜き足差し足で進んでいくベルの向かい先にはベッドともりあがった布団。


そして、ベッドわきに立てかけてある何本ものパラボラアンテナ。


そう。ここはレヴィの部屋だったりする。


そして、レヴィが眠りについたのは2時間ほど前のこと。任務で朝帰りしたレヴィにターゲットをしぼめたらしいベルは、ニタニタとした笑みを浮かべて、レヴィの枕元に立った。


そのさまは、今まさに殺人現場が起きそうな緊迫感があった。


ベルは、ゆっくりと右手を持ち上げた。


その手の先には三角形の新聞紙。


ベルは、一度こちらを振り返りニッと笑って見せた。


それから、勢いよく腕を振り下ろした。


パンッ!


軽快な音が部屋に鳴り響いた。


「ぬをおおっ!?敵襲か!ボスは、ボスのお命はっ!」


慌てて飛び起きたレヴィの頭は見事なまでに爆発状態だった。いや、普段の髪型も爆発状態に近いかもしれないけど、今は、四方八方に髪が飛び散っている。


「紫杏。戻ろうか。気持ち悪い」


マーモンはそれだけいうと、私を抱えたまま回れ右をして歩いていく。後ろでベルの爆笑が聞こえ、続いてレヴィの怒鳴り声が聞こえた。


「あーれー、もしかしてもうやっちゃったんですかー?」


向こうから歩いてきたフランが、耳があると思われる部分のカエルの被り物に手を当てて、耳を澄ませている。


「チッ、せっかく二重罠であの堕王子を驚かせようとクラッカー持ってきたのに」


そういったフランの手には、通常サイズより2回りほど大きなクラッカーだった。


「フラン、君もバカなことに金を使うなんてもったいない」


「いいんですよー。どうせレヴィさんからくすねた金ですしー。そんなわざわざミーの懐から出すわけないじゃないですかー」


いやいや、レヴィのところから抜き取るのもダメでしょう!?


そう思いつつも、マーモンは納得したようで、それならいいよと言って再び歩き出した。


「あー、でも、このクラッカーどうしましょうかねー」


「スクアーロにでも仕掛ければいいんじゃない」


「えー、じゃあ、うまくいったら先輩がなんかくれたりするんですかー?」


ふん、と鼻を鳴らしてすれ違うマーモンとフラン。まあ、マーモンが何かをあげたりなんてしないよね。


後ろで、電流の迸る音とともにレヴィの叫び声が聞こえてきたけど、聞かなかったことにしよう。






(パンッ!)
(!!敵襲か!?)
(ざーんねーん。先輩、朝のドッキリでしたー)
(……う゛お゛おぉい!くそガキ!3枚におろされてえのかあ!)
(きゃー、こーわーいーって、ししし、やれるもんならやってみろって)

(んまあ、さっき帰ってきたばかりなのに、元気ねえ…)


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