ブラックユーモアすぎません?

「すまなかったっ!!」


ガバッ!と効果音が付きそうなほど勢いよく下げられた頭。90度に曲がった腰。そのさいに後ろに担いでいるパラボラた目の前を通り過ぎて思わず少しだけ後ろにのけぞった。


目の前で頭を下げているのは昨日の夜遅くに任務から帰って来たらしいレヴィ。談話室にザンザスさん以外の全員が集まる中、レヴィさんが入ってきたかと思えば、その形相にぎょっとしたものだ。


怖いからというより不気味だった。


顔には青あざをいくつもつくり、頬はパンパンに張れている。そしてどこかげっそりしているようだった。


それを心配してルッスが訳を聞こうと話しかけた時、突然彼の視線は私をがっちり捕え、つかつかと目の前まで来たかと思えば、冒頭のように頭を下げたのだ。


何に対しての謝罪なのか分からず、首を傾げていれば、それにきづいたらしいレヴィが話し始める。その内容は、昨日の彼の部下たちの所業についてだった。


「俺の監督不行き届きだ。いくらでも罰はうけよう」


「ししっ、じゃあ串刺しにしてやろうぜ」


「やめてくださいよー。レヴィさんの血で汚れた床なんて汚すぎるじゃないですかー。どうせなら血が流れない方法をとりましょー」


いやいや、二人とも何怖いこと言ってるんですか。


レヴィは、二人の発言を聞いて、もともと顔色のわるかった顔からさらに血の気を引かせた。そしてちらっ、と私を見る。


こんな状況の中で、マーモンとスクだけは普段通り昼食を食べ始めていた。私も早く手をつけたい。キョウはグラタンなのだ。冷めたらおいしくなくなっちゃう。いや、個々の人たちの料理はボンゴレ本部に負けず劣らずどの料理も絶品で冷めてもおいしいものばかりなのだけど。


「だ、だがっ!き、決めるのは紫杏だ!お前たちじゃ無い!」


「まあそうですけどー。ほら紫杏だってきっと死んで詫びろって言うと思いますし―。ね?紫杏」


いや、何言ってるんですかフラン。と思わずフランの顔を凝視すれば、何を思ったのか数度私の顔をみて頷くと、再びレヴィに向き直った。


「ほら、やっぱり紫杏だって死んで詫びろって」


「な、なぬっ!い、今紫杏は一言もッ!」


「そんなのミーたちの間柄なんで―。言葉なんてなくてもわかりますよー」


フランが自信満々にいいきったところ悪いけど、私は一ミリもそんなこと思っていない。断じて。そりゃあ、確かに、いきなり頭を下げられて、ちょっと引いちゃったけど。


そんなことを考えていれば、いつのまにか後ろにいたらしいベルに私は両腕をとられた。そして、どこから声を出すのか、裏声で話し始める。


「そうよ!死んで詫びろ!このくそ変態め!」


いや、人が話せないからってなにしてくれちゃってるんですか。そして、なぜレヴィはそんな絶望的な目で私を見るの?そして、どことなく頬に赤みが差したのは私の気のせい?


「ッツツツツツ、ツンデレっ!」


赤みが差した頬を隠すようにレヴィは突然手で顔を押さえて私から目をそらした。今の部分のどこにツンデレ要素があったのかは不明だし、しかも、デレてない以前に、言った言葉は私のものではない。そんなこと、後ろにベルがいる時点でわかるはずなのに。


「……センパーイ。なんで変態喜ばしちゃってるんですかー…」


「俺だって予想外だ…。つーか、マジで変態だったんだな。分かってたけど」


「ここまで変態だとは…。軽蔑しますねー」


そんなことを私の腕を話したベルと冷たい視線をレヴィに向けるフランが話しているのを聞いていると、突然何かが迫ってきて思わず身構えた。


何かに手を掴まれて前を見ると、顔をどこか輝かせているようなレヴィがいて、その鼻息の荒いのなんのって。最初、あんなに無口なキャラで気難しそうだったのに、なぜこんなにも壊れているんだろうか。と、ちょっと現実逃避をしたくなった。


「も、もう一度っ!もう一度いっ―――ボヘァ!」


なんとかのがれたくて、体を思いっきり後ろに引いていると、突然レヴィの体が何かによって飛ばされて逝ってしまった。


「キメえこといってんじゃねえぞお!」


レヴィの体を吹き飛ばしたのはどうやらスクの足らしい。振り上げられたそれは見事に鳩尾に入ったらしく、抵抗する暇もなくレヴィは壁まで飛ばされていった。それをみて大爆笑のベル。そして合掌しているフラン。


「ハア、まったくご飯の時ぐらい静かにできないのかな」


「まあ、あの子たちには無理なんじゃないかしら?」


いつのまに後ろにいたのか、マーモンに抱えられて、彼の隣に座らされる。その向かいに座ったルッスは、私の昼ごはんを私の前に移動させてくれた。


どうやら、あの惨劇から遠いところに移動させてくれたらしい。


「紫杏。食べなよ」


「まあ、珍しいわねえ。マーモンが世話を焼くなんて」


「まあ、利益があるからね」


「利益?」


目の前にあるグラタンを口に運ぶ。うん。やっぱりおいしい。でももうちょっとアツアツの時に食べたかった。


入口付近でやっている戦闘の音は聞こえるけど、気にならなくなった。これも慣れだ。どんなにその音がグロテスクな物でも、見ようなどとは思わないし、ましてや今は食事中だ。そちらに目をやることもしない。


「紫杏。またボスの絵を描いてくれるかい?」


ルッスと話していたはずのマーモンに話しかけられ、首を横に傾げたが、ザンザスさんの絵ならもう大丈夫と思ってコクンと頷く。


「この前描いてくれたあのボスの絵。あれ、レヴィが買ってくれたんだ」


そういって笑うマーモンはとても上機嫌そうだった。


それを見てあら、売れたの。というルッスはやはりその雰囲気から母親を思わせる。


「いくらでレヴィは買ったの?」


「ざっとSランク任務の4倍の報酬さ」


Sランク任務がどれほどの報酬をもらえるのかはわからないけど、Sランクといえば危険度が一番高い任務のはずだ。ということは、報酬も馬鹿にならないだろう。


それの4倍って。結構あのときは鉛筆一本だったし、適当に描いたのに。そんなのにそれだけの値段をつけていいのだろうか。


「大丈夫さ。ボスの絵なら例え子供の落書きだろうとボスに見えればレヴィは買う。まあいい金づるだね」


おお、言いきっちゃった。しかも結構悪い顔して。というか、黒い。考えていることが黒い。


というか、どれだけザンザスさんが好きなんだって感じだよね。もしかして、それってLOVEなんだろうか…。


「変なこと考えない方が、いいと思うよ」


驚いて顔を上げれば、マーモンは素知らぬ顔でレモネードを飲んでいた。考えてること読まれた?でも、確かに、想像する前で良かったかもしれない。かなり怖いことになりそうだ。というか、そんなこと考えているなんて知れたら、ザンザスさんに殺されちゃう。


そのあとは、大人しく目の前にあるグラタンを食べました。え、後ろでしている物音?そんな、明らかに非人道的な音がしていようと気にしたら負けなのだと、悟りを開いたのですよ。


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あきゅろす。
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