「お疲れっしたー」 「お先ー」 何とか間に合った朝練は、8時5分前に終わった。そして気になるのは、家に残してきた二人の事だ。まだ寝てなきゃいいんだけどね…。 朝練を終えた私と武は、少し足早に玄関まできた。そこで確認することは一つ。 「…きてねーな」 「はあ、──もう」 空と獄寺のロッカーを確認した私と武の反応は、バラバラ。まあ、呆れてるという面では共通してるんだけど。 それにしても困った二人組よね。徹夜でゲームして、次の日起きれないだなんて、空と獄寺がふたりして遅刻なんてなったら、クラスメイトどころか生徒会長の南先輩や、理事長の空のお父さんにまで変な勘繰りいれられちゃうじゃない。─それをカバーしろなんて無茶な話だわ。 「電話した方がいいんじゃね?」 「そうね」 きっと携帯にかけたって気づかず寝てるんだろうから、ここは確率の高さを狙って、自宅にかけたほうがいいわね。 私は武に言われて同意を示してすぐ、携帯を取り出すと、電話帳から自宅の番号を引っ張り出し通話ボタンを押した。─お願いだから、起きて。 *** トゥルルル─── 山本と春日が先に学校に向かって、漸くおとずれた静寂を破る騒音が、リビングの隅から鳴り響いた。 「うるせぇな…」 まだ覚醒しきってない頭を無理矢理起こした俺は、その騒音の根元を止めるために、鳴りやまない電話を手にとった。 (あ、繋がった。──もしもし?アンタ達まだ家にいるの?もう8時よ?) 「……」 あ?8時だから何だよ…。つーか春日からの電話なら取らなきゃよかったぜ。……いや待てよ、8時っつったら…!? ようやく覚醒した頭に勢いよく起き上がった。 (ちょっと、誰がとったか知らないけど聞いてるの?─今すぐ家出ないと遅刻するわよ?) 「今出る!」 ガチャッ──── 眠っていた頭が覚醒し、殊の重大さに漸く気が付いた俺は、電話を一方的に切ってすぐ、まだ暢気に寝てやがる空を起こしに向かう。 「オイ、起きろ」 「ん〜…アイスー」 「アイスなんかねーよ!寝ぼけてねーでさっさと起きろ!」 アイスだ何だと寝言をほざく空に痺れを切らした俺は、空の頭を叩いた。いや、手加減はしたぜ、一応な。 「いたー…、何すんだー隼人っ」 「これ見えるか?今、何時だ」 「はー?…8時5分……ん?8時─?……ギャァア!?」 「おわっ」 まだ寝ぼけた調子の空に携帯を開いて時間を確認させれば、一瞬の間をおいて飛び上がった。俺よりデカイリアクションだな。 「や、やばいよ!何でもっと早く起こしてくれないのー!」 「…俺も今起きたんだよ」 「もー!昨日隼人がゲームギブアップしないからー」 「んなこと知る──!」 ギャーギャー騒ぎながらも、準備を始めた空は、俺が近くにいるにも関わらず、服を着替えだした。信じらんねーこの女!つか、前にもあったぞ、こんなパターン。 俺は目のやり場に困り、逃げるように洗面所へと向かった。何で俺が気ィ使わなきゃなんねぇんだ畜生。 (隼人ー?ご飯食べよーよー) (…はあ?遅刻する気かよ) (食べたら秘密兵器使って行くから大丈夫!─てか、朝ご飯抜くなんて絶対無理!) (……、(色気より食い気って、こういう奴に使う言葉だよな) |