「風ー!泳ご泳ご!」 「えー、暑い……」 「何言ってんの!早く早く!」 海について直ぐ、着替え終わった空は春日を強引に引っ張って海に入った。俺はと言えば、山本とパラソルたてろだ何だ言われて重労働。ったくこき使いやがって! 「おい山本、何してんだよ」 「ん?喉かわかね?一応たてたし休憩していーだろ。ほら」 「さんきゅ、」 出かける前に買ったドリンクを小さいクーラーボックスに入れて持ってきたそこから炭酸飲料を俺に投げてきた山本に、軽く礼を言ってから隣に腰を下ろした。 「よかったな」 「は?」 俺が座ったのを確認してから、何の前触れもなくそんな事を言ってきた山本に少し動揺しながらも聞き返す。多分、空の事だろーけどな。 「空、かなり落ち込んで風でも手に負えないほど重傷だったんだぜ?」 「……マジかよ」 「ああ、けどまあ、元に戻ったし結果オーライだな」 「ああ……、」 空に元気がないのは知ってたが、そこまで重傷だったってのは初耳だな。それに少し嬉しく思ってる自分が何か情けねぇし。結果オーライじゃねぇって思う自分もいる。 だってそうだろ。結局空は、相模と付き合うことにしたんだ。俺のことで悩んでもやっぱりアイツの方にいっちまうんだ。って、何考えてんだ俺。 「俺たちはさ、いつかは帰んなきゃなんねーんだよな」 「何だよいきなり」 「分かんねぇ、……何か、来た直ぐん時は直ぐ帰りたかったのに今は──」 そこで言葉を切った山本の視線の先には、空に散々水をかけられて、仕返ししてる春日の姿があった。……何となく、山本の言葉の続きは予測がたつ。 明らかに出会った頃より、春日とこいつの仲は深まってる。それは周りから見てる俺や空が一番に気がつくところだ。 「……分かってんだろ。俺たちは住む世界が違ぇんだ。それ以前に、マフィアなんだぞ」 「分かってる。そんなの分かってんだ」 「──ま、分からねぇでもねぇけどな」 「!───、やっぱお前変わったな」 「人のこと言えんのかよ」 少し辛そうに眉を寄せた山本の気持ちは俺だって分かる。何だかんだ言ってアイツ等と一緒にいんのは、何つーか言いたくねぇけど、楽しいんだよ畜生!← 十代目以外に、初めて俺を特別に、怖がったり疎んだり、軽蔑しないで真っ向からぶつかってきてくれた存在だから。中身を知ろうとしてくれた奴だから。 「あっちにはいねぇタイプだな」 「何言ってんだてめぇ!十代目がいるだろーが!」 「ツナじゃなくて、女だよ女」 苦笑しながら俺の言葉を受け流す山本は、それだけ言うと立ち上がって俺を引っ張りあげた。何しやがんだこいつ!しかも十代目と女を比べやがって← 「行こうぜ!どうせ今は匠の兄貴もいねぇんだし、空といたって誰も何も言わねぇよ」 「なっ!俺は別に──っ」 「隼人ー!たけちゃーん!早くこっちおいでよ!」 「ほら、呼んでんだから行かなきゃまずいだろ」 「てめっ!」 さっきまでしょぼくれてた奴が何なんだよ!立ち直んの早すぎだろ!内心滅茶苦茶、毒づきながらも、遠くから俺を呼ぶアイツの声と笑顔には負ける。 それを分かってて誘う山本に苛つきながらも、空と春日がいる海に向かったのは言うまでもねぇ。 ──仕方ねーから遊んでやるよ。 (隼人、見てみてー!クラゲ〜) (なっ!?バカ!そんなもん素手で持つな!) (え?いったーっ!) (あーあ、獄寺が早く来ないから) (俺のせいかよ!) (じゃ、面倒見んのも獄寺だな) (何でそーなんだよ!) (痛いー!これどうすればいーのー) (あーくそ、とにかく冷やすからあっち戻るぞ) (結局は面倒見るのね) (はは、分かりやすい奴) |