夏のゆかたびら

「でー、あたしはどっち?」


「どう考えても春日がピンクなんかきねーだろ」


「いや、案外似合うと思うけどな!」


お風呂も入って後は着替えるだけになったあたしは、風の部屋に入ってから直ぐに目に付くところに綺麗に紙袋に入れて置いてあった紙袋から、浴衣を二着取り出して広げて首を傾げれば、二人からは見事に正反対の答えが返ってきた。


でも、多分……風は淡色好きだし、ってどっちも淡色だけど…。あたしは悩んだ末、たまには風にも明るいピンクを着せてみようという結論に達した。


「じゃああたしは紫でいく!」


「は?」


「お、いーんじゃねぇか?」


あからさまにありえねーだろ、という顔をする隼人はほっといて、笑顔で頷いてくれたたけちゃんに、風の浴衣を託すと、あたしは直ぐに自分の部屋に向かった。


「何だ獄寺、納得いかねーのか?」


「別にんなこと言ってねーだろ!つーかお前もさっさと風呂いってこいよ」


春日と時間かぶるだろ、と続けた獄寺に山本はそのままお風呂直行。獄寺はというと、いつまでも風の部屋にいるわけにはいかないので、リビングにでて適当にテレビのチャンネルを回していた。




***

「いっ痛た!隼人しめすぎ!」


「てめーが動くからだろーが!」


俺が風呂から上がってくれば、リビングで暴れてる二人の姿が目に飛び込んできた。何やってんだアイツ等;


「何してんだ;?」


「見りゃわかんだろ。着付けしてやってんだよ」


「たけちゃーん、ぐるぢっ!」


着付けな。獄寺はそう言ってっけど、空は苦しそうだぜ。それでもどこか一生懸命な獄寺が何だか可笑しくて、笑えてくる。


「だあー!動くなっつってんだろ!」


「隼人、ちっ近い//」


「あ?──な、文句言うな//!」


そんな二人を見守っていれば、二人とも急に赤面して見てるこっちは、笑うしかできない。何だかんだ言ってこいつ等結構、仲いーし気が合うんだよな。獄寺が女に照れるとこなんて見たことねーし。


そんな口喧嘩も続くこと30分、漸く終わったらしい着付けに、獄寺はソファーにぐったりとなっているのに対し、空は喜んでハイテンションだった。


「たけちゃん、似合う?」


「おう、よかったな」


「へへーっ。ありがと隼人!」


「ああー、……疲れた」


空の浴衣姿もまた普段と違って、大人っぽかったけど、俺は早く風の浴衣姿が見てみてーなあと内心思ってたりした。


「ただいまー、!」


「!──、お帰り!」


あたしが隼人に浴衣を着せてもらって暫く、突然開いたリビングの扉から顔を出したのは、風の双子の妹ちゃんである楓ちゃんだった。


バチッと絡まった視線に、一瞬目を見開かれてから黙っててほしいって目がいってたような気がしたから、あたしは合わせるようにいつも通りお帰りと口にする。


にしてもそっくりなんだよねー。


「隼人、ぐったりしてるとこ悪いんだけどね!髪の毛あげて!」


「は?ふざけんなよ、てめー。春日にやってもらえばいーだろーが」


髪の毛をあげてほしかったのは本当だけど、楓ちゃんが風じゃないって気づいてるかどうかを試そうとしてそう言えば、全く気づいてないらしかった。隼人って案外鈍感?


「だって風は今から浴衣着なきゃだし!ね?」


「うん、ごめんね空」


「全然!」


「俺には謝罪なしかよ!」


いつも通りのつっこみ、バレてない!そう思いながら内心、笑いそうになるのを必死に耐えているのはきっとあたしも楓ちゃんもだ。


「お前、誰だ?」


「え、何言ってんの?」


だけど今までずっと黙っていたたけたゃんが少し真剣な顔をして楓ちゃんを見るもんだから、あたしは少しやばいかもなんて思ったりしてるのに対して、全然動揺してない楓ちゃんは流石だと思う。


やっぱり、流石にたけちゃんは騙されなかったかな?


「風じゃねーだろ」


その一言にリビングは静まりかえる。


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あきゅろす。
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