それでもそうなんです。

「武、空と獄寺まだ寝てるから、いい加減に起きたら夏祭りの準備しとくように言っといてくれる?」


「おう、風は帰りいつ頃になんだ?」


今日は前々から言ってた夏祭りの日だ。風はこんな日にまでバイト入れてたらしくて、朝から慌ただしく動き回っていた。つかさ、何か微妙に二人がまだ寝てんのに苛立ってるよな。


「んー、多分…四時過ぎくらいかな?あ、空と私の浴衣は私の部屋に置いてあるから!」


「ん。んじゃ、気ーつけてな」


「うん、行ってきまーす」


風の見送りを終えた俺は、未だ寝てる二人を暫く放置しておくことにして、テレビをつけた。まだ十時だしな。時間はたっぷりあんだろ。


「お、2対1かー」


そんな軽い考えで、野球中継に見入っていた俺は時間を忘れてテレビに夢中になっていた。



***

ドスンッ───!


「ぐえっ」


「んー、…あれ?」


「あれじゃねーよ。どけ、何で毎朝毎朝、俺んとこに落ちてくんだよ!」


隼人に指摘されて初めて気づいた今の状況。あたしも隼人もまだ寝ぼけてるから、隼人の怒鳴り方には迫力がないし、あたしも隼人の上からゴロンッと直ぐ横に寝転がっただけ。


「あー、眠ー…な」


「隼人温かい……何かまた眠くなってきたー…」


「ひっつくなよ……オラ、起きんぞ」


「んー……」


隼人が起きあがって、つられるように起きあがったあたしだけど、まだ眠気が取れずに布団に潜り込みそうになった。うん、分かると思うけど、隼人に止められました。


「二度寝すんじゃねーぞ、今日、夏祭りじゃねえのかよ」


「!わっ忘れてた!い、今何時!?」


夏祭りに行くことが一番乗り気じゃなかった隼人の言葉で思い出すなんて、あたし有り得ない!


「一時過ぎ……」


「あたしたち寝すぎだよね……」


二人して時計を見て固まったあたしたちは、かなり熟睡していたもよう。もし、あたしがベッドから落ちなかったらまだ寝てたかもしんないんだ。危ない危ない。


「…起こさねーとこ見ると誰もいねえのか?」


「風はバイトだった気がするけど…、たけちゃんはいるでしょ」


隼人の尤もな問いかけに首を傾げたあたしは、とにかくそろそろ起きて準備しなきゃと隼人と一緒に部屋から出た。




***

「お、やっと起きたか」


「おはよー、たけちゃん」


「おう、獄寺まで寝坊なんて珍しいな」


部屋から出たあたしたちを笑顔で出迎えてくれたのは野球中継を見ていたらしいたけちゃん。何で分かるかって、たけちゃんが見る番組ってそれに限られるし。


「うるせーな、最近疲れてんだよ。同室の奴がうっせーから」


「遠回しないい方しても分かるんだからね!隼人!」


「けっ、」


そんなたけちゃんの言葉が気にいらなかったのか、全部あたしの所為にしちゃってくれる隼人に一喝すれば、当に聞く耳保たずといった風に食卓の方に足を向けた。


「空も飯食ってこいよ。四時までには用意しといた方がいいぜ」


「うん、あ…ねえ、たけちゃん。浴衣のある場所って聞いたー?」


「風の部屋にあるってよ」


「りょーかい、じゃあご飯食べてくる」


返事を返してくれたことを確認してから、あたしがくるのも待たずにご飯食べてる隼人の向かいに腰を下ろして、朝食、て今昼だから昼食か、を食べ始めた。


「ね、隼人」


「なんだよ」


「今日、行くよね?」


「…主語なきゃわかんねーな、」


分かってるくせにそうやって知らない振りしてさ、超がつくほどの意地悪だよね。あたしが夏祭り!と強調して言い直せば、無言で立ち上がって冷蔵庫までいって戻ってきた。行動が謎いって!


コトンッ─────


「暇だから付き合ってやるよ」


「あ、ありがと……て、え!マジ!?」


どうやらあたしの分の麦茶も一緒に持ってきてくれたみたいで、コップが置かれるのと同時に、多分さっきあたしが聞いた答えに賛同の意味で答えてくれた。何か、性格丸くなったかもね、隼人。


「あ、空、獄寺」


「なに?」

「あ?」


「後かたづけよろしくなー」


あたしと隼人にそう言って笑ったたけちゃんにあたしは、多分隼人もだと思うけど、意味を理解するのに時間がかかってしまった。





(あ、あたし浴衣着なきゃだし!)
(!逃げんじゃねー!)
(えーやだーめんどいー)
(お前それでも女かよ!)


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