食事中になったあたしの電話。その相手は、なんと!先輩から!!キャーッ!どうしよう!どうしよう! とりあえず、席を立って部屋へと移動。隼人が入ってこないようにしっかりと鍵を閉めてからベッドにダイブして携帯の通話ボタンを押す。 「も、もしもし…」 『あ、もしもし、空ちゃん?』 「先輩、どうしたんですか?」 『いや、別に特にようがあってかけたわけじゃなかったんだけど…、迷惑だったかな?』 「全然!全然大丈夫です!嬉しいですっ!」 『そう?なら、よかった』 先輩から、電話なんてっ!テンションあがる! 『今日、バイトでさ…』 「先輩って、あたしの家の近くの薬局でバイトでしたよね?」 『うん。そうだよ。そのバイト先にさ、不良みたいだけど美形の男の子が来てね』 不良みたいだけど、美形?まるで隼人じゃんか。あ、そういえば、隼人も今日薬買ってきてもらうために薬局行ったんだっけ?しかも、先輩が働いてるとこ。 『それで、その子何買って行ったと思う?』 「え、何買って行ったんだですか?」 『生理痛の薬だよ。すっごく顔真っ赤にしてさ、もう、笑いをこらえるのに必死だったよ』 電話越しに、クスクスという笑い声が聞こえてくる。あ、今の、笑ってる顔見たかったな…。って、そうじゃなくて、それって隼人じゃない!? 「へ、へえ…そ、そうなんですかあ…へ、変ですよね」 隼人、ごめん!相手が、まさか先輩だったとはっ! 近くにあったクッションを抱え込む。これ、やわらかくて、気持ちいんだよね。 『もしかしたら、彼女のためだったのかもしれないね』 「彼女じゃないです!」 『…?何の話?』 「あ…」 あたしが墓穴掘ってどうするのー! 「えっと、き、きっとい、妹とか…、そう!きっと妹のためですよ!」 『ああ、そういうことか。なんだ、てっきりその銀髪君と知り合いなのかと思ったよ』 「アハハハハ…」 もう、苦笑しか出てこないよ…。 『あ、じゃあ、俺明日もバイトだからもうそろそろ切るね』 「はい。頑張ってください!」 『ありがとう。お休み』 「おやすみなさい」 電話を切ったとたんに、力を抜くために大きく息を吐きだした。あ、危なかった…。自分で墓穴掘っちゃうところだった…。別に、隠すことじゃないけど、でも、誤解されるのは嫌だし。 「もう!全部、隼人のせいだ!隼人のバカー!」 「ああ!?んだとコラ!ここ、開けろ!果たしてやる!」 「キャーなんで、聞いてるのよ!」 なんで、壁ごしに聞こえてるの!?隼人って地獄耳だったの!? 「んなもん、お前が大声で叫ぶから聞きたくねえのに聞こえたんだろーが!」 「そこは、聞き流しといてよ!」 「アホか!じゃあ、言うんじゃねえよ!」 「口から出ちゃったの!」 「なおさら性質がわりいよ!」 だって、本当に口からポロっと出ちゃったんだからしょうがない。まあ、半分はやつあたりなんだけどね。 「いいから、あけろよ」 「やだ!だって、果たされたくない!」 「…ハア、果たさねえよ」 「嘘だ!」 「空?アイス食べるよ」 「食べる!」 風の呼びかけに、あたしは抱えていたクッションを放り投げて、すぐに鍵を開けてリビングへと出た。 隼人は普通に机に腰掛けていて、素直に出てきたあたしをみて呆れ顔をしている。 「食い物につられてんじゃねえよ」 「アイスに勝てるものはない!」 「なんだそりゃ…」 隼人が、呆れた顔をしていたけど気にしないでおこう。うん。だって、アイス好きだもん! ということで、そのあとは隼人に怒られながらも、アイスをおいしくいただきましたとさ。めでたしめでたし。 (『めでたしめでたし』…じゃねえ!!) (めでたしでいいの!) (風、止めねえの?あれ、いつまでも続きそうだぜ?) (いいのいいの。喧嘩するほど仲がいいってことで。それにめんどくさいし) (それ、絶対に後者が本音だよな…) (気のせいだよ。きっと!) |