油断大敵風邪予防

水族館から1日たった今日。朝起きて見れば、いつも私が起きれば起きる山本が起きない。


昨日の水族館で疲れているのかもしれないと思い、そのままに朝食を作るためにキッチンへ。


もう夏休みに入ってしまえば早起きをする必要がなくなるから気分的に楽だ。ということで、のんびりしながら作っていると、珍しく空が部屋から出てきた。


「あ、おはよう…って大丈夫?」


「ばなみずどまんない…」


今は夏休みだ。ということは季節は夏で、なのに空は毛布にくるまって部屋から出てきたのだ。


顔は熱っぽいし、鼻が止まらないと訴えてきたし、足元も少しふらついている。


私は駆け寄って、空の額に手を当てれば、いつもより、少し熱い…。


「風邪…、かな」


昨日の水族館で水の中に落ちたのが災いとなったんだろう。夏だから大丈夫だと油断してた。


「とりあえず、部屋戻って。吐き気とかする?何か食べれる?」


「いい、いらない…」


ゆっくりとした動作で部屋に戻ろうとする空について行きながら、まだ部屋で寝ている獄寺とりあえず起こす。この数日で警戒心なくなったなあ。


こう、反抗的な犬がやっと懐いた感じ?


「ああ?んだよ、朝っぱらから」


「空が風邪ひいたみたいなの…。たぶん、昨日の水に落ちたのが原因だと思うんだけど…」


そういえば、獄寺も水の中に飛び込まなかった?空を救出に…。


「フン、そんなんで風邪ひくなんて弱いな」


「…獄寺は風邪ひいてないの?」


「俺はそんなに弱くねえよ」


「そっか。ならよかった」


看病の相手が増えなくって。


空はのそのそとベッドに上がり、布団にくるまった。また眠ってしまいそうになる空に、体温計を渡す。


えっと、あと用意するものは…、


「こいつに何か食わせなきゃいけねえだろ。じゃねえと薬も飲めねえ」


「あ、そっか。じゃあ…」


「お前ら、空の部屋に集まってなにしてんだ?」


「あ、おはよう山本。実は、空が風邪ひいちゃって…」


「大丈夫か?」


「ただの風邪だと思うから…。じゃあ、獄寺は、ここで体温が測り終わるの待ってて。私お粥作ってくるから」


「俺も手伝うぜ?」


「うん。お願い」


空のことはしばらく獄寺に任せよう。私はとりあえずお粥作って。


「って、山本なんかふらついてない?」


「ん?気のせいじゃねえか?」


「しかも、心なしか顔赤い」


もしかして、山本も風邪?空のがうつった?って、それはないか。


何回かきいても大丈夫だと言い張る山本に、心配になりつつも空のお粥を作っていく。


ガッシャン!!


お粥作りに没頭していると、横で皿が割れる音が。


「わ、悪い…。ちょっと、手が滑った…」


すぐに拾おうとする山本の顔を、私もしゃがんで覗き込んで見る。さっきよりもかすかに赤みが増してる。それに、顔色が悪い。


「ちょっと、ごめん」


私は、破片を拾おうとしている山本の手を掴み、逃げられないようにして額に手をあてた。


「…熱い」


これは、ぜったいに熱がある。しかも、空よりも高そう…。


「山本も風邪確定。ってことで部屋で大人しく寝てて」


「俺は、大丈夫だから。それより、皿…」


「皿の方がどうでもいいから。ほら、部屋に行って」


明らかにつらそうな顔をしている山本は中々部屋に戻ろうとしなかったが、なんとか部屋に押し込む。


「おい、あいつ37.8分だ」


「ありがとう。じゃあ、引き続き空の看病お願いね」


「はあ!?なんで俺が!」


「…じゃあ、山本の看病したい?」


「あの、野球馬鹿が風邪ひいたのか?」


「うん。だから、空の看病お願いね?」


「……」


「お願いね」


2回目は有無を言わさぬ笑みをつけて言ってやれば、渋々部屋に戻って行った。お粥ができたら薬と一緒に持っていくとして、あとは山本か。


とりあえず、部屋で大人しく寝転がっていた山本に体温計を渡して再びお粥作り開始


山本は…、たぶん気の遣いすぎで疲れたんだろうな。ずっと遠慮してるみたいだったし。その点、獄寺はもっと遠慮しろよって思うけど。


「お、できたできた」


できたものを茶碗に入れて、お盆にのせ、薬とお茶のペットボトルも一緒に乗せて空の部屋へ入る。


「獄寺。これ、食べさせた後飲ませてね。あとは、なるべくついててあげて?私たちの朝食も作ったら持ってくから」


「ああ」


ちょっとのぞけば、結構安心して眠ってる空を見てこっちも少し安心。あとは獄寺に任せておこっと。


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あきゅろす。
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