気づけば幕は上がっていた






「じゃあここで解散だが、家に着くまでが修学旅行だからな!」


そんなベタベタなセリフをいった先生に見送られそれぞれが帰路につく。途中まではいろんな生徒と一緒だったけれど最寄駅に着く頃にはさすがに四人だけになっていた。


「あー、疲れた!」

「今日はさすがに出前にしましょ。今から作る気力もないわ」

「そうだなー。それか買って帰るか?」

「バカが。この大荷物で買い物なんてできるわけねえだろ」


四人でのんびりと歩きながら、修学旅行のことを振り返っていた。


隼人たちとの初めての旅行。班行動だったりで二人っきりになる時間は少なかったけれど、ラフティングだったり銀細工だったり本当にいろいろな経験ができた。


どれも楽しい思い出だ。


「出前何にしたい?」

「ピザ!ピザにしよ!」

「ピザね。チラシ家にあったかしら」

「ネットで調べればいいじゃん」

「それもそうね」


ケータイを見ながらどのピザにするかとかサイドメニューは何にするかと話しながら帰った。


「ただいまーっ、やっと帰ってきたー!」

「三人とも洗濯物は今日中に出してね。明日には回すから」

「はーい」


それぞれが部屋へ荷物を起きにいった時、部屋の中に固定電話の着信音が鳴り響いた。ケータイがあるからいらないっていったんだけど、パパの強い要望でおけってうるさかったんだよね。


「はいはい、今出るってば」


しつこいぐらいになる電話にかけよる。


「はい、もしもし?」

「…………」


すぐに応答があるかと思えば相手は無言のまま。思わず受話器を見てしまう。首を傾げもう一度耳に当ててみるが何も聞こえない。


「もしもし?どちら様ですか?」


向こう側でなにやらごそごそと音が聞こえるけれど、なんの音かもわからない。


「もしもし?どなたかわかりませんが、聞こえませんので切ります。では」


一応礼儀をつくして受話器をおいた。カバンの中でケータイが勝手に電話をかけちゃっているパターンかもしれない。あれ、カバンからケータイを出した時とか、相手から折り返しの電話があった時とかに焦るんだよね。


「空、電話なんだった?」

「わかんない。無言電話だったよ」

「え、無言電話って……」

「たぶんカバンのなかで間違ってかかっちゃったパターンじゃない?なんかごそごそ言ってたし」

「あー、あるわよね。あれびっくりするのよね。しかも相手が先輩とかだったらもう最悪」

「そうなんだよね!まあ、気にしなくていいって。用事あったらまたかかってくるでしょ」

「そうね」

「それよりピザ!ピザ!」


いそいそとパソコンを取り出し、最寄のピザ屋さんのホームページを出し、帰り道で決めたものをカートに入れていく。


「あ、空!飲み物も注文しといて。何もないわ」

「りょーかい!」


すっかりピザに気が向いたあたしは、すでに頭の中から無言電話のことは消えていた。


この時のあたしは知らなかった。この電話を始まりに、あんな事件へと発展するだなんて。


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あきゅろす。
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