お留守番

ばたばたと騒がしい朝。昨日は夜話していた通り、この周辺を散歩した。久し振りにゆったりとした時間。


それが、今は嘘のように慌ただしい。はあ、煙草吸いてえ。


「獄寺、そこどいて!」


「風ー!あれどこやった?」


「えー、テレビの上になかった?」


「あ、あったあった」


「わっ!もうこんな時間!」


「キャー!でなきゃやばい!あ、たけちゃんおはよう!」


「山本おはよう」


「おー」


月曜となった今日は、こいつらは学校へ行かなければいけないらしく制服を着て部屋の中を慌ただしく駆け回っている。


それを俺と山本はただぼーっと見ていた。つーか、こいつは今起きてきた。


「よお。獄寺」


「お前、あいつが起きたのに起きなかったのかよ」


「起きたぜ?でも、時計見たらまだ6時30分だったからまた寝た」


「油断しすぎだろ。野球馬鹿が」


「そう言う獄寺はどうなんだよ。ちゃんと眠れたか?」


からかうように聞いてきたのは、寝てないということがこいつにはわかっているからだ。隣に立っている山本を睨む。


「絶対に俺の感覚の方が正しい。てめーはおかしいんだよ!」


「ハハ、眠れなかったんだな」


「うっせえ」


あいつらは、どうやらやっと登校する準備ができたのか鞄を持って自分の部屋から出てきた。


「じゃあ、いってきます!2人とも変な騒動おこしちゃだめだよ」


「ケッ、はよ行け。バカ女が」


「もー、素直じゃないなあ。隼人は」


「じゃあ、言ってくるね。昼食は冷蔵庫に作ってあるから。てきとうに温めてね。で、足りなかったら適当に作っていいよ」


「おう。ありがとな」


「どういたしまして。合鍵は玄関にあるから。でも、あまり出ないでね?じゃあ、行ってきます!」


そう言って、ばたばたと部屋を出て行った。ハア、やっと静かになりやがった。


「だいたい、無防備すぎだろ。普通は家に、会ったばっかの奴残していかねえだろ…」


もう、だいたいわかってきたが、あいつらはかなり俺たちに心を開いている。だからってどうするわけでもないが…。


「ま、一般人だしな」


「……」


山本も今となってはもう“マフィアごっこ”とは思っていない。ちゃんとマフィアということを理解したみたいだ。


十代目と出会ってからいろいろとあったからな。十代目…。


「ツナなら大丈夫だって!な!」


「ハッ。当たり前だ」


んなことわかりきってんだよ。野球馬鹿。


「あ!」


「ああ?なんだよ…って、それアイツらの弁当じゃねえか。なんだ、忘れて行きやがったのか」


山本が何かに気づき机に近づいて行ったと思ったら、2人分の弁当があった。それは、朝作っていた弁当で忘れていきやがったらしい。


この、野球バカ、届けに行くとか言わねえだろうな。


「なあ、届けた方がよくね?」


「ケッ、なんで俺が」


「俺ら、ここで世話になってんだぜ?」


「お前は気遣いすぎだろ。気持ち悪い」


山本はしょうがねえだろと言って苦笑した。4年だ。4年も一緒にいる。俺は十代目の右腕として。山本は十代目の友達として。


嫌でも目に入ってくる。無理しているかどうかぐらいわかる。


「とにかく、届けようぜ」


「届けるったって、学校の場所も知らねえだろうが」


「ん?知ってるぜ?」


「は?」


「だって、昨日散歩してた時に空が言ってたじゃねえか」


昨日のことを思い返してみる。昨日は強制的に4人でここ周辺を歩き回った。おかげでだいたいの地理は把握できている。


その中で、確かにあの女は自分たちの学校のことを言っていたかもしれない。


「だろ?だから、届けに行こうぜ。どうせ暇なんだし。な!」


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あきゅろす。
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