部屋の中にこもる熱気を追い出したくて窓を開けるも、そこから入ってくるのは新たな熱気だけ。何もしなくても湧き出てくる汗に嫌気がさしつつ、クーラーをつけたのはついさっき。まだしばらくこの熱気からは解放されないだろうと思ったらなかなか動く気にもならない。 しかし、今日は獄寺君たちが家に来る日だ。 正午を過ぎ、太陽が傾き始めたこの時間が一番熱くなるのだと昨日獄寺君が言っていたのを思い出す。最高気温何度だっけと今日のニュースで言っていた数字を思い出そうとするが、このうだるような暑さの中ではそれすらできそうになかった。 「ガハハハッ!ツナー!あそべー!」 「ランボ、うるさいよ。こんな暑い中なんでお前そんな元気なんだよ」 「あそべー!ツナあそべー!」 「あー、もう!今日は俺、山本たちと課題するから無理なの!」 「そんなのおれっちには関係ないもんねー」 「ランボ!おとなしく、する!」 イーピンがランボに向かってとまれというように片手をあげるが、それでランボが収まるわけもなく、部屋の中を縦横無尽に駆け回ってはいろいろなものをなぎ倒していく。 「ああ、もう!ランボ!いい加減にしろって!」 「ふふーん!ツナが遊ばないのが悪いんだもんねー!」 「だから、俺は宿題が!」 「おれっちには宿題なんてないもーん!」 「お前になくても俺にはあるんだよ!」 「ふーん」 ようやく立ち止まったと思えば、鼻をほじりながら気のない返事をされる。絶対にこいつはおとなしくする気無いな、というのはいつものことだからわかっている。そうこうしているうちに獄寺君たちが来る時間になってしまったらしい。 家の中に響くチャイムの音に、誰か来たといって玄関へ向かおうとするランボを必死に食い止める。 「お前は出なくていいの!」 ランボが出てくる前に扉を閉めて玄関に向かえばやっぱりそこには満面の笑みを浮かべ今日もきれいにお辞儀をする獄寺君がいた。 そして、珍しいことに山本も一緒だ。 「よ!ツナ」 「おはようございます!十代目!」 「ごめん、先にリビングに行ってて!俺の部屋、チビたちが占領してるから…」 「ったく、あいつら!俺が果たしましょうか!」 「い、いいから!じゃあ、先に行っててね!」 今にもダイナマイトを取り出さん勢いで目を輝かせる獄寺君を押しとどめ、勉強道具をとってくるために一度上へ行く。 「ツナー。誰がきたー?」 「獄寺君と山本。でも、お前ら下に来ちゃだめだからな!」 「アホ寺!ランボさんアホ寺殺しに行く!」 「バカ!だから来ちゃだめだって今いったばかりだろ!?」 「知らないもんねー!ツナのいうことなんか聞かないもん」 「あーもう。わかった。おとなしくしてたらあとで飴玉やるから」 「ほんとか!?絶対だぞ!約束破ったら、ツナはりせんぼんだもんね!」 「わかったわかった。じゃあ、二人で遊んでろよ」 ようやくおとなしくなってくれたらしい二人を置いて下の階へ降りた。そのとき、ふと何かを感じた。何か違和感を。 階段の途中で足を止める。気配を探ってもよくわからない。そっと降りていく。 でも、気のせいだったのかもしれない。 「二人とも、どうしたの?」 だって、廊下にはさっき出迎えたばかりの二人が立っているだけだったんだから。 |