ものの見事な

合図とともに、私たちはスプーンをとってアイスを食べ始める。


「ん〜っ!やっぱりおいしい!さっすがお父さん!あたしの要望にちゃんと堪えてくれてるし〜」


そういいながら、おいしそうに食べ進めていく空を見て、笑みがこぼれる。後ろでは、武たちがその様子を見て唖然としているのがわかった。


それがわかっていながらも、私と空は食べ続ける。二人で、そのおいしさに舌鼓を打ちながら食べていると、周りが騒がしくなってきた。


「空、周りがうるさいわね」


「本当だよね。せっかくおいしく食べてるのに」


スプーンでアイスをすくいながら会話をする。そんなとき、解説者の声が聞こえてきた。


「これはこれは…、予想外もいいとこですねえ三山君」


「そうっすねえ、金井君。これは、司会者の三宅君も呆然とするくらいビックリっす」


「ハッ!!司会者三宅です!時間は、残り20分を切ったところで、なんと脱落者が出てきました!!そして、そして、大穴と予想される双子の大山兄弟と、まったくの予想外な2年生女子二人が残っております!これは、解説者のお二人、どう思いますか?」


「大山ツインズの彼らは、さすがというべきか、まだまだいけそうですね。去年優勝しただけあります」


「それに比べて、2年の女子っすよね。まさか、彼女たちが残るだなんて予想した人がいたのだろうか!後ろで賭けをしていた生徒はハラハラドキドキっす」


そんな解説を聞いて、改めてあたりを見回してみたら、本当に私と空と、3年生のかなり大きな男子二人組だけになっていた。他の人たちは、唇を青くさせ頭を押さえている。


「おいおい、お前ら大丈夫なのかよ…」


「無理すんなよ?」


獄寺と武が心配そうな、というか、どこか顔をひきつらせながらそういった。それを二人して軽く聞き流してそのまま食べ続ける。
私と空にとったら、至福いがいの何者でもないんだから。


「おおっとー!?ここで、大山ツインズがリタイアかー!?」


「あー、あれは、最近のダイエットがたたってたんじゃないですかねえ?」


「ああ、そういえば、今年はダイエットに挑戦だあって宣言してたっすねえ。でも、そのダイエット、これに参加してる時点で失敗じゃないっすか?」


「失敗だろうねえ…」


「いやいや、まだスプーンは動いてる!これは、ダイエットなんて気にしていられないツインズが意地を見せるのか!?」


うっわ…、さすが同じ学年ってだけあって言いたい放題…。なんだか、哀れになってくるような解説ね。


「空。まだ、食べれそう?」


「ん?うん。もちろん。風はギブアップ?」


「ん〜、まだ食べれるけど、そろそろ味に飽きてきたかなあって」


「うん。確かに、あきてくるよね」


「おいしいけど」


「おいしいけどね」


「「違う味のアイスが食べたい…」」


この、二人の言葉を聞いた、後ろの二人は、ほとほと呆れかえってしまった。


「お前ら、どんだけ食えば気が済むんだよ」


「ハハ、すげーのな…」


「おおっとー!?2年女子、ここにきて余裕発言かあ!?」


「やっぱり、こういうのは女性が強いですねえ」


「女の別腹は宇宙っすからね」


その言葉に、後ろの二人が深くうなずいていたのは言うまでもない。


「さあ、5分が過ぎたところで、大山ツインズのスプーンが止まったあっ!!リタイアするのかあ!?」


その言葉に、私と空は食べる手を止めて、ツインズの方を見る。あっちも、唇を青くさせながらこちらを睨んできた。それに負けじと睨み返す。


「大山ツインズ、まだいけるのか!?」


「「……も、もう…ム、リ…」」


「2年生の方は?」


「「まだ、平気です」」


「ということはあ!?」


司会者が声を上げたところで、終了の合図である笛の音が教室内に鳴り響いた。それと同時に、まわりで拍手が巻き起こる。




「結果発表をします」


「今回の『アイス全部たいらげて、温泉旅行へGO!』で優勝したのは……、

2年4組、春日風さんと、伊集院空さんペアです!優勝者には温泉ご招待券が贈られまーす」


温泉は、一人一人にペア券をもらったから、私と空で4人分の招待券をもらったということになる。


「やったあ!今度4人で行こ?」


「俺達もかよ…」


「当り前じゃん!ね、たけちゃん」


「ハハ!楽しみだな!獄寺、卓球しようぜ!」


「おお、受けてやらあ!」


「……いつ、行く気なのよ…」


そんなこんなで、『アイス全部たいらげて、温泉旅行へGO!』は終了した。結局賭けをしていた生徒たちは、予想外ペアの優勝で泣く泣く企画側にお金を差し出していたという…。


そして、私は今、空たちとは少し離れて、トイレにきていた。ついていこうか?と言われたけど、後で追い付くからと言って一人で来た。人が多い場所はあまり好きじゃない。


「ねーねー!聞いた?ホストクラブ、相模君がいるんだって!」


トイレの個室に入っていたら、聞こえてきた女子の声。たぶん先輩だし、出にくいわよね…。思わず、溜息をもらした。


「聞いた!会いたいけど、やっぱり学校じゃ怒られるかなあ?」


「でも、いいじゃん!どうせ、放課後会えるんでしょー?」


「会うって言っても、どうせ…」


「…でも、それを望んだのはマキでしょ?」


「そうだけど…。やっぱり、欲張りになっちゃうものなんだもん。あー、なんで、高校生で不倫の気持ちを知らなきゃいけないんだろ!」


「ハハハ、思い切って、行ってみようよ!アタシにムリヤリ連れてこられたっていってさ!」


「えー…、でもお…」


「ほら決定!行くよ!」


あ、ちょっとっ!という焦った声が少しずつ小さくなっていく。完全に、外に人の声がしなくなってから、トイレの個室から出てみる。うん。誰もいない。


「それにしても、今の会話って…」






(あ、おそーいっ!)
(ごめんごめん。混んでたってことにしておいて)
(どんだけ、待たせんだよ!!)
(だから、ごめんって。話しこんでたのよ)
(え、理由変わってねえか?)
(うん。ごめん。ただ、ぼーっとしてただけだから)
(((??)))


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あきゅろす。
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