「いたいた。風ー!」 「あ、やっと来た」 あたしが南先輩とわかれて、風達と合流するために、落ち合い場所まで走ってやって来れば、既にそこで待ちくたびれてる様子の三人を発見した。 ヤバイ、隼人とか睨んでるしっ! 「ごめんね、遅くなっちゃって」 「別にい──」 「遅ーんだよ!どこほっつき歩いてやがったんだテメェ!」 睨んでる隼人は避けて、風に謝ったあたしだったけど、風の言葉を遮った隼人から飛んできた怒声に、一瞬怯んでしまった。 「そ、そんな怒んなくてもいーじゃんか!」 「何時間待ったと思ってんだよ!」 「そんなに待ったか?」 「待ってないわね」 何とか言い返せたあたしは、隼人から返ってきた言葉に言葉を詰まらせてしまう。だけど、後ろから聞こえてきた風とたけちゃんの会話から、隼人の言葉が矛盾していることを発見。 「隼人、嘘ついたなー!」 「気分的に何時間なんだから嘘じゃねーんだよ!」 あーもう、意味わかんないんだけど!気分的に何時間とか、人それぞれじゃん!明らかあたし、八つ当たりされてない? そりゃあ、ちょっと遅れたあたしも悪いけど、正確な時間は約束してたわけじゃないし、先輩んとこでのゴタゴタもあったし。あたしだけが責められるなんておかしいよ! 「武、いこっか」 「とめなくていーのか?」 「知らない」 そんなあたしたちを放置して、さっさと先を行く風を視界の端で捉えたあたしは、隼人の手をグイッと引いた。 「な、何すんだテメェ!」 「ごめんなさい!喧嘩してたら時間勿体ないから!今回はあたしが悪いことにしとく」 「なっ!」 「だから、ほら、行こ?」 「…、って、引っ張んじゃねえ!」 上目づかいになるようにして言ってみれば、隼人は押し黙ってしまった。だから、その隙に先に行こうとしている風達を追いかけるために、隼人の腕を引いて走り出した。だって、いっぱいまわりたいじゃん?それに、この後、絶対に風と出たいものがあるんだよねー! 「風ー!アレ、行くよね!」 「アレってなんだ?」 「アレはアレよ」 風の隣で不思議そうに聞いてきたたけちゃんに、風が答えになってない答えを返す。 「絶対に、優勝するんだから!」 「だから、アレってなんだっつってんだよ!」 隼人の腕を引っ張りながら、風の腕に抱きついて、4人でアレの場所に向かった。 *** 「さあさあ!やってまいりました!本日も強豪がそろっているようです。それでは、始めましょう!題して―――」 『アイス全部たいらげて、温泉旅行へGO!』 「はい、毎年文化祭恒例の、アイス好きによるアイス好きのための『アイス全部たいらげて、温泉へGO!』が始まりました。今回の司会を務めさせていただきますのは、302H三宅です!よろしくー。そして、解説者は、同じく302Hの金井と、301Hの三山です!」 教室の机が会議室のように四角く置かれている教室。その机に私と空は並んで座っていた。そして、黒板側では、教卓を前に、司会者と解説者2名がそれなりな格好をして座っている。 後ろを振り返ると、出場者の友達とか、連れが立っていて、私たちの後ろにはこの風景を見て、未だに理解しきれていないような顔をした武と獄寺がいた。 「…なんだよ、これ…」 「…いや、題のままなんじゃね?」 「これ、毎年恒例でやっててね、二人一組で出されるアイスを全部食べて、1位になった人には温泉のタダ券がもらえるんだよ!」 未だに、黒板の上に飾りつけられている題を見て固まっている二人に、空は満面の笑みを浮かべて振り返って説明した。 「…お前らどう見ても、場違いだろ」 そう言って、周りを見回した二人に合わせて周りに視線を向ければ、私たちより体が2倍ほど横に大きい人たちが二人一組で並んでいた。 「…そう?」 「だって、アイスだもん!もう、これは出なきゃって去年、言ってたんだけど、いろいろあって参加できなかったんだよねー」 「ハハハ…(どんだけ、アイス好きなんだよ」 「……お前ら、アホじゃねえか?」 「失礼な!この大会ででるアイス、すっごく高級なんだよ!しかも、すっごく量が多いの!」 「知るか!」 そんな会話をしてるなか、一人の先輩が近づいてきた。 「あの…、ハンデ、いる?」 「「へ?」」 「いや、他の方は、大丈夫そうなんだけど…、さすがに渡り合うのはきついんじゃないかと思って…」 そういって、ちらっと周りに視線を走らせた。まあ、確かに、大きな方たちが多いわよね。 「もらっとけばいいじゃねえか。明らかに、他の奴よりハンデがありすぎんだろ」 「…ちなみに、ハンデもらうとどうなるんですか?」 「それは、他の人より少し量が…―――」 「「いりません」」 「おい!」 「ハハハ!即答だな」 「だって、量が減るなんてやだもん!」 「大丈夫よ。なんとかなるわ」 「……そ、そう…、じゃ、じゃあいいんだけど…」 先輩は、まだ納得のいかないような顔をしていたけど、私はたちは頑として譲らなかった。アイスが食べたくて出てるのに、ハンデをもらっちゃ、意味ないもの。 「さあ、準備が整ったようです!それでは、本日皆さんに食べてもらうアイスの登場です!」 司会の合図で、アイスが持ってこられた。ワイングラスを横に広げたような皿に盛られているアイスは、前から見れば私たちが隠れてしまうほどの大きさで、その大きさに出場者は感嘆の声を漏らした。そして、観客はうわあという、出場者とは正反対の反応をもらした。 「それでは始めていただきましょう!温泉目指して―、 GO!!」 |