肝は誰が据わっている?

文化祭も無事に終わり、生徒会の企画として、学校で泊まろう!ということになった。これは、毎年生徒会が企画していることで、2,3年生が参加対象となる。


もちろん自由参加。親が許せば泊まっていいし、許さない、または来たくないという人は帰っていいというもので、残ったのは男女合わせてざっと30人ほど。大半の親が泊まるなんて言語道断ということらしい。そして、このもくろみで一番の目玉ともいえる肝試し大会が今、開催されようとしていた。


「お集まりいただいた皆さま方。これより、今宵の目玉、肝試し大会をしたいと思います」


どこから持ってきたのか、目だけを覆い隠す仮面をかぶって、南先輩が舞台の上に立った。スポットライトが彼を照らす。体育館に集められた生徒たちはその光景に息をのんだ。


「ルートはその都度どこをっ通って何処へ行けという指示が壁に書いてあります。そして、向かう先にあるこの、真っ赤な血で彩られた紙をもってこれればゴールです。


立ち入り禁止と書かれた場所には立ち入らないでください。見張りは立たせてあるのであしからず。それではペアを決めたいと思います」


その言葉と同時に体育館の電気がつけられた。いきなりの電気に皆、目を細める。そして、いつのまにいたのか、先輩と同じような仮面をつけた生徒会のみなさんが、舞台の下に立っていた。


「それでは5人以上のグループを作ってください」


そう言われて、それぞれ適当にグループづくりを始める。5人組もいれば、8人とか9人とかになっている人たちもいる。そして、5グループだできた。


その5グループにそれぞれ一人生徒会の人がつく。手には何か紙を持っていて、それをそれぞれに引かせた。中には、赤い文字で記号が書かれていた。


「お手元にある紙の記号。その記号と同じ人がグループ内にいるはずです。その人とペアとなって今回の肝試しをしてもらいます」


その言葉と同時にざわめきが走った。






***

「ペア誰ー?」


あたしのグループは結構大人数で、風と、たけちゃん、隼人、匠君、波音さん、ゆりなの7人。波音さんとゆりなが二人で相手を探しているときに、あたしが波音さんをさそったの。


皆で記号を見せあいっこしてみたんだけど、あたしと同じ人がいないっ!他は、波音さんと隼人、ゆりなとたけちゃん、風と匠君。奇数だから当たり前なんだけど…、あたしって運ない…。


「空、一人なんじゃない?」


「ええ!?そんなの嫌だっ!風変わってよ!!」


「嫌よ。頑張って」


素敵な笑顔付きで、そう言われてしまった。一人で肝試しなんて…、無理無理無理っ!大体、風だってあたしが幽霊とかだめなの知ってるでしょ!?


「いーやーだー!あたし行かない!ひとりなら、行かないもん!」


「それは困るなあ…。俺と行くことになってるんだけど」


「え!?」


突如後ろから聞こえてきた声に振り返ったら、まだ仮面をつけたままの先輩がいた。


「せ、せんぱ…い?」


声は先輩だけど、目元が隠れてると、誰かわかりにくっ!先輩は、あたしの前にくると、ゆっくりと仮面を外した。


「俺と、行くよね?」


「……(告白みたいなセリフよね。キザ」


「へ……」


風が何を思っていたかなんて知らないけど、突然のことに吃驚して固まってしまった。


「誰か余るっていうのは予測済みだからね。生徒会も一緒に回るんだよ」


「あ、そ、そうなんですか!?よかった〜。あたし、本当に一人だったらどうしようかと思ったじゃないですかー!」


恐怖から、安堵に代わって、少し怒りながら先輩にそういえば、苦笑しながら頭をなでてくれた。でも、先輩と一緒にまわるのか。ちょっと怖いけど、これって、デートみたいな感じだよね!


先輩は、携帯を取り出すと誰かに電話を始めた。


「じゃあ、今から順番に始めて。うん。頼んだよ」


電話を切ると、その様子を見ていたあたしたちの方を向かって、にっこりと笑って見せた。


「肝試しがはじまるよ」




(隼人君と一緒、か)
(ああ?んだよ)
(いいえ。なんでもないわ)

(私が南様とっ!)
(ハハハ!匠いいよなあ)
(何よっ!私じゃだめなわけ!?)
(え、い、いや…;とにかく、よろしくな!)

(匠とか。よろしくね?)
(おう。怖かったら抱きついてもいいぜ?)
(……匠も怖かったら言っていいからね?)
(誰がっ!)

(先輩といっしょだけど、やっぱり怖いよっ!)
(空、俺がいるからね)
(はいっ!)
((仕組んで正解だったかな))


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あきゅろす。
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